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お手伝いのご褒美は

俊×蘭世 中学時代

久しぶりに新作デス。





「真壁くん、待って~」

下校中、少し離れた後ろから聞こえてくる声に俊は振り返った。

思い当った声の主は視覚で確認したその姿と相違なかった。

江藤蘭世だ。


どうやら学校からずっと走ってきたようでぜいぜい肩で息をしている。

勢いよく駆けてくる蘭世に俊はあきれ顔で答えた。

「そんな息切らして何の用だよ」

「だって一緒に帰りたかったんだもん」

「は?」

こいつは臆面もなくそういうことを言ってのける。こちらが面食らうくらいに…。

だが、転校早々からこの調子だったコイツには最近ではもう慣れっこだ。

というか、こいつだけは最初からどうも違った。

それまでは女なんて面倒なだけだと思っていたのに、

この女は驚くほどすんなりと俊の心に入ってきた。

こんな風に追いかけられても自然と受け入れてしまう。

まるでほんわり暖かい風がすっと胸を通って行くようだ。


それでも元々の自分の性格がそう簡単に崩れるわけでもなく、

というより崩さないようにすると、つい口から出るのは皮肉ばかり。

しかし、彼女の方もそれにはずいぶん慣れてしまったようで軽くかわしていってしまう。

そのやりとりになんとなく心地よさすら感じていることに

俊は気づかないフリをしていた。

気づいてしまうことが怖くて。。。



今日もそんな心の葛藤をポーカーフェイスで隠していつもの調子で返事をした。

「なんでお前と一緒に帰らなきゃならねえんだ」

「いいじゃなーい。一人で帰るより二人で帰る方が楽しいでしょ?」

「だったら他のヤツでもいいじゃねえか」

「もう!真壁くんったらツレナイんだから!」

「・・・・・」

そう言いながら足は進んでいるわけだから、結局こんな風に一緒に

帰っていることになってしまう。

蘭世が隣で並んで歩くことに今では何の違和感も感じない。

むしろだんだん当たり前になっていることに安堵感と焦燥感が交錯していた。




+++++




二人でたわいもない会話をしながら公園の前を通りかかった時、

一人の婦人が青ざめた顔で公園から出てきた。

俊が何か言おうとする前に蘭世が一足早く彼女に問いかけていた。

「あの…どうかされました?」

「あ…すみません…茶色のトイプードルが走ってきませんでしたか?」

「トイプードル?…いいえ…」

「あ…そう…ごめんなさい。ありがとう」

「迷子ですか?」

「ええ…ちょっとリードが外れてしまったら、駆けだしていってしまって…」

「まぁ…」

「まだ子犬なものでしつけもできてないし、外にも慣れてなくて…」

「それは心配ですね…」

蘭世は親身になってその話を聞いている。

俊は(またおせっかいが…)と思いながらもその場を離れることができずにいた。

でもこの調子だとたぶん…


「私、探すの手伝います!」

やっぱり…

そうくると思ったぜ…。

こいつのこういうところはもう把握済みだ。

そして次に言う言葉も…。

「あ…真壁くん、誘っといてごめんね。先に帰って。私ワンちゃん探してくる。」

俊は半分あきれながら、はぁと息を吐いた。

「あのなぁ…そんな話聞いてそれですんなりハイじゃあなんて鬼みたいなこと言えるか」

「え…一緒に探してくれるの?」

「しょうがねえだろ」

「ありがとー!!」

「あ、ありがとうございます」

ったく…

お前の犬なのか!って突っ込みたくなるほど喜んじゃって…。

しかし、蘭世のこういうところに俊は弱さを感じずにはいられなかった。

そんなこんなで蘭世と俊は行方不明の犬っころを探す羽目になったのである。




+++++




「いたか?」

「ううん…」

手分けして探し始めて小一時間ほどたっていた。

この近辺はしらみつぶしに探してみたが見つけることもできずに、

収穫なしのまま最初の公園に戻るとちょうど蘭世も戻ってきたところだった。

「いないね…どこいっちゃったんだろ…」

八方ふさがりの状態で立ちつくしているとそこに当の婦人も戻ってきた。

「すみません…お手を煩わせてしまって…」

「いえ。。。そんなことはいいんですが…見つかりませんね…」

蘭世はシュンとして俯く。

「このままでは申し訳ないからもうお二人ともお帰りになって。

後は私が探しますから」

「でも…まだ私大丈夫です。それに心配だし。。。」

隣で蘭世がそういうのを聞いて俊もおなじように思う。

このままだとなんとなく気分も晴れない。

俊はどうしたもんだろうかとぐるりと辺りを見渡した。

すると公園の固定遊具の中にちょこっと動く茶色の物体を見つけた。



「あ…あれ…」

「え?」

俊の言葉でいっせいに二人が俊の視線の先をたどる。

「あ…ラル!!」

婦人が悲鳴に近い声でそう叫ぶとラルと呼ばれたその茶色い物体は姿を現し、

一目散に駆けてきた。

そのまま婦人にとびつくのと同時に彼女は子犬を両手で抱きあげた。


「この子ですか?」

「はい!…本当にどうもありがとうございました」

「よかったぁ」

「こんなとこにいやがったのか…」

「灯台下暗しだね」

「ああ…まったくだ…ったく人騒がせなヤツだな」

「ホント、もう勝手にどっか行っちゃだめだよ?」

でもかわい~☆と蘭世はその子犬と戯れていた。

心から嬉しそうに笑う蘭世はキラキラしていた。

子犬が見つかったことはこの女性にとってはもちろんよかったことだが、

蘭世もこんなに楽しそうに子犬と遊ぶ姿を見て俊は安堵し、ふっと笑顔をこぼした。

そしてその姿になんとなく見惚れている自分に気づいてゴホンと一つ咳払いした。




+++++




「ホントにどうもありがとうございました」

子犬との再会を果たした後、婦人は深々とこちらに頭を下げた。

「いいえ~。私たち結局何もしてないですし…」

「そんなことないです。お二人がいなければ私もあきらめて帰っていたかもしれません。

ホントに助けられました。ありがとう」

俊と蘭世は顔を見合わせるとニコリとほほ笑みあった。

人にお礼を言われるなんて久しぶりだな。。。

俊はふとそう思った。

少し照れくささもあるけど、これはこれでなかなかいいものだ。

そして横で笑う蘭世に対しても…。




「あ、そうだ、今日のお礼にこれ…はいどうぞ」

「えっ…」

そういって婦人は鞄から紙切れを二枚取り出して俊の胸に押し付けた。

思いかけずのことで俊はチケットが胸からはらりと落ちそうになるのを

慌てて手のひらで押さえる。

「ちょ、ちょっと…これ…」

「今度の日曜までの映画のチケットなんですよ。

もらい物なんだけど私も用があって行けなくて…ちょうどよかったわ」

そういって彼女はにっこりほほ笑んだ。

「え…でも…」

「助けて下さったお礼よ。そちらの彼女さんとお二人でどうぞ」

「か、彼女!?」

蘭世は髪をピンと逆立たせた猫のように顔を真っ赤にさせる。

「いや…俺たちは別に…」

俊も突然の言葉に動揺しながらしどろもどろに否定するが、彼女はホホホと笑うだけだった。

「じゃあね。ありがとう」

そういって婦人は二人にひらひらと手を振ると頭を下げながら去って行った。




+++++



公園に俊と蘭世が取り残される。

俊は手のひらで押さえていた胸のチケットをつかみしばし思案してから

チラリと蘭世の様子を伺った。

そこにはキラキラと瞬かせた瞳がこちらを見ている。

彼女…か…。

いや!そんなんじゃねえし!

そう心で否定するも俊の胸の動悸はなかなか治まらなかった。


そんな眼で見られたら…

行かないなんて言えねえじゃねえか…


でもこういう風に言い聞かせている自分は

…なんてズルイ…。




俊はふぅと一息つくと一枚を左手にとって蘭世に差し出す。

「えっ…」

「まぁ…お前も一緒に探したわけだし…これをもらう権利は…ある」

チケットをじっと見つめていた蘭世は何かを訴えかけるような眼で俊を見上げた。

「そ、そちらのチケットは…」

「は?…んだよ。ことちは俺んだろうが!それとも何か?

2枚とも持ってって別のヤツとでもいくつもりかよ」

「そ、そんなこと…///」

「だったら…ほら…」

そう言って俊は蘭世の手を取りチケットを握らせた。

「一緒に…行ってくれるの?」

「二人にってくれたもんだし…まあそれに日曜はたまたま空いてたりするけど…」

自分でも思う…なんてあまのじゃくな言い方…。

ホントは…ちょっと…心が騒いでいる自分がいるくせに…

「お前が予定あるならそれは俺が頂く」

そういって蘭世の手からチケットを奪おうとすると

蘭世は普段からは想像がつかないほどの速さで

チケットを握った手を胸にしっかりと組んだまま身を翻した。

「予定なんてぜんっぜんない!すっごく暇」

ドキ…

どの瞬間、俊の胸の鼓動が大きく響いた。

蘭世の心底嬉しそうなその表情に思わず惹きつけられ、目が離せない。

そんな動揺を悟られないように俊は慌てて蘭世から目を逸らした。



「…じゃ、じゃあ日曜日、13時駅前だ。いいな」

「うん☆」

こちらの気持ちを察することもなく蘭世は満面の笑みでうなづいた。

察しられても困るけど…


でもその満面の笑みを見ているとほっと胸が温かくなってくる。

俊はなんとなく引き寄せたくなる衝動をため息で紛らわせた。

しかし、そのあと、どんな顔をすればいいかわからなかった。

どうしても顔の筋肉がゆるんでしまう。

表情のコントロールができずにさらに焦る。

ここはもう退散するしかない。

まだ明るいし、送っておくほどでもないだろう。



「んじゃ」

どういって背中越しにヒラヒラと手を振る。


言葉にするにはまだよくわからない感情を俊はもてあましながら

とにかく今はその場を離れてしまいたかった。

しかし日曜にもっとおおきな動揺にさらされることに

そのとき、俊はまだ気づいていないのだった。



<END>



+あとがき+

突然ですが移行途中に新作ぶっこみました(笑)
以前に書きとめていたものなので書いたのはだいぶ前なんですが…。
まだまだ中学時代なので糖度は低めですね。

それと、ラスト、次回に続きそうな終わり方をしてますが
特に何も考えてません…オイ。

そのうち機会があれば^^;










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