ときめきLOVERS
ときめきトゥナイトの二次小説を置いています。
現在本サイトより移行作業中。
君との距離、あと何mm? おまけ ver.R
俊×蘭世 本編のおまけ
蘭世サイドの気持ちをちょっとだけ・・・。
「びっくりした・・・」
あんな展開になるなんて思ってなかったから・・・
未だに心臓がバクバクと動いてそのまま飛び出してきそうなくらい。
蘭世は呼吸を整えるように大きく息を吸い込むと
そのままゆっくり息を吐いた。
私のことをどう思っているのか・・・
聞いたのは私のほう。
そんなこと聞くつもりはなかったけど、
想いがあふれ出して聞かずにはいられなかった。
言葉にしなくても真壁くんには届く。
私の気持ちをどのようにとらえてくれたのかはわからない。
そしてこの胸元に光るペンダントには彼のどんな気持ちが込められていたのかも。
スローモーションのように動く彼の姿を思い出すと
止まらない想いが涙になってあふれてしまう。
彼は、私に・・・
キスしようとしたのだろうか・・・?
あまりにも激しく鼓動が打つものだから
軽いめまいさえ覚えて
今の出来事が夢だったのかもしれないと思うくらい
蘭世は動揺していた。
どうせなら、ご飯呼ぶ声になんか立ち止まらないで
勢いのまま奪ってほしかった。
そしたらもっと、
私の心はしっかりとその思いを受け止められていたかもしれない。
よくよく考えたら、彼の気持ちをこうもはっきりと垣間見たのは
おそらく初めてではないか。
追いかけて、すり抜けられて・・・
そんなことを繰り返してきた時代。
二人の関係がやっと少し変わってきたのかな・・・。
嬉しい・・・
言葉にすると簡単だ。
だけどそんな言葉だけで今の気持ちをどれほど語れるだろうか。
熱い・・・
息をもう一つ吐いて、ペンダントを握りしめる。
想いがあふれてくるのを必死で抑える。
「真壁くん・・・」
名前をつぶやくだけで静まりかけた鼓動がまたもや大きく打ち始める。
そんなとき、階下から椎羅の声が響く。
「蘭世~?何やってるの~?早く降りてきなさーい!」
「は、はーい」
降りて行けば俊がいる。
恥ずかしいけど、このまま顔を合わせないわけにもいかず・・・
「よりによって、ごはん?」
はぁ・・・体中の空気を全て入れ替えるかのように
蘭世は大きく深呼吸する。
そしてパチパチと両手でほほを叩き、
ひとつねり。ふたつねり。
「よし、行くぞ!」
ゴクリと息を呑みこんで蘭世は未だ治まることのない逸る鼓動を
左手で抑えながらドアを開けた。
<END>
+あとがき+
どっちかというと
「め、飯だとよっ!」の後の王子を見てみたいもんだぜぃww
蘭世サイドの気持ちをちょっとだけ・・・。
「びっくりした・・・」
あんな展開になるなんて思ってなかったから・・・
未だに心臓がバクバクと動いてそのまま飛び出してきそうなくらい。
蘭世は呼吸を整えるように大きく息を吸い込むと
そのままゆっくり息を吐いた。
私のことをどう思っているのか・・・
聞いたのは私のほう。
そんなこと聞くつもりはなかったけど、
想いがあふれ出して聞かずにはいられなかった。
言葉にしなくても真壁くんには届く。
私の気持ちをどのようにとらえてくれたのかはわからない。
そしてこの胸元に光るペンダントには彼のどんな気持ちが込められていたのかも。
スローモーションのように動く彼の姿を思い出すと
止まらない想いが涙になってあふれてしまう。
彼は、私に・・・
キスしようとしたのだろうか・・・?
あまりにも激しく鼓動が打つものだから
軽いめまいさえ覚えて
今の出来事が夢だったのかもしれないと思うくらい
蘭世は動揺していた。
どうせなら、ご飯呼ぶ声になんか立ち止まらないで
勢いのまま奪ってほしかった。
そしたらもっと、
私の心はしっかりとその思いを受け止められていたかもしれない。
よくよく考えたら、彼の気持ちをこうもはっきりと垣間見たのは
おそらく初めてではないか。
追いかけて、すり抜けられて・・・
そんなことを繰り返してきた時代。
二人の関係がやっと少し変わってきたのかな・・・。
嬉しい・・・
言葉にすると簡単だ。
だけどそんな言葉だけで今の気持ちをどれほど語れるだろうか。
熱い・・・
息をもう一つ吐いて、ペンダントを握りしめる。
想いがあふれてくるのを必死で抑える。
「真壁くん・・・」
名前をつぶやくだけで静まりかけた鼓動がまたもや大きく打ち始める。
そんなとき、階下から椎羅の声が響く。
「蘭世~?何やってるの~?早く降りてきなさーい!」
「は、はーい」
降りて行けば俊がいる。
恥ずかしいけど、このまま顔を合わせないわけにもいかず・・・
「よりによって、ごはん?」
はぁ・・・体中の空気を全て入れ替えるかのように
蘭世は大きく深呼吸する。
そしてパチパチと両手でほほを叩き、
ひとつねり。ふたつねり。
「よし、行くぞ!」
ゴクリと息を呑みこんで蘭世は未だ治まることのない逸る鼓動を
左手で抑えながらドアを開けた。
<END>
+あとがき+
どっちかというと
「め、飯だとよっ!」の後の王子を見てみたいもんだぜぃww
PR
君との距離、あと何mm? 後編
俊×蘭世 転生後 ときめき夜話イベ出品作品
アンケートときめき名シーンより
第5位「8巻のペンダントを直した後のキス未遂シーン」
からヒントをいただいた作品です
先ほどの夕食の時間、俊はよりによって蘭世と真正面に座らされ、
味覚も失うほどの緊張感でいっぱいだった。
目も合わせられないほどの気まずさが二人の間に流れていたのに、
ふとした拍子にパチっと目が合ってしまったりするのはなぜなんだろう。
その緊張感は蘭世もおなじだったようで、
スープはひっくり返すわ、お箸は床に落っことすわ…
動揺ぶりは俊以上だった。
せめて自分だけはと冷静を装うものの、目の焦点も定まらない状態で、
望里と椎羅はともかく、感覚の鋭い鈴世なんかは、
ちらちらと俊と蘭世を見比べ、
それに気づいた俊に、わかっているのかどうなのか意味深な目で、
サインを送ってくるような始末で
俊は口の中に料理をかきこむだけかきこんで、
ダイニングから飛び出してきてしまった。
いつまでもあの状態でいられるわけでもないし、
動揺しながらもこの部屋に入ってこようとする蘭世には
ある意味、尊敬の念も抱いてしまう。
たぶん、自分からはどう動いていいかすらわからないのだから・・・。
俊はふぅと呼吸を整えてからドアを開けた。
「な、なんだ?」
声がうわずる。
しかし、俊のそんな様子には気づいていないのか、
蘭世はうつむいたままだった。
「あ、あの・・・さっきの話なんだけど・・・」
・・・コイツ・・・また俺を煽る気か・・・??
心臓がドクンと跳ねる。
「家を出ていくって話・・・」
あぁ・・・そっちか・・・。
「いつごろとかって決めてるの?」
少し拍子が抜けて俊はベッドにドサリと腰をかけた。
「・・・いや・・・まだ具体的には・・・」
「・・・そっか・・・よかった・・・」
「え?」
「・・・その・・・もう・・・すぐとかだと困っちゃうなぁ・・・なんて・・・」
エヘヘと蘭世は笑う。
「ほら・・・私にも心の準備とか・・・いるし・・・」
その笑顔に俊の胸がキュンと締まる。
いつ頃からこの軋みを覚えたのだろう。
まだ人間だったころ・・・
そんな前でもないのに、もうずっと昔のことだった気がする。
そこに突如として自分の前に現れた不思議な女。
泣いて、笑って、気がつけばいつもそばにいて・・・
何故か守らなければいけないような気になって・・・
コイツとどうなりたいなんて、考えたこともなかったのに、
正直、あのカルロとかいうルーマニア人が現れてからは、
いやな胸騒ぎさえ覚える。
この胸の軋みも、胸騒ぎの意味も・・・。
「真壁くん?」
ふっと無防備に覗き込んでくる蘭世に俊は慌てて目を逸らす。
「ま、まぁ…働き口とかも見つけなきゃいけないし、
そうすぐってわけじゃねえけど・・・」
「・・・うん・・・」
「・・・・・」
沈黙が流れる。胸がそわそわして落ち着かない。
このままだとまた・・・
もう一度急いで積み上げかけた堤防が崩れていきそうになる。
「私・・・」
「・・・・」
「真壁くんのことが大好きよ・・・」
「・・・・っ!」
「知ってると思うけど・・・」
そういって蘭世が笑う。
「さっきの・・・私・・・ちょっとだけ・・・自信もっていいのかな?」
俊は蘭世にちらりとだけ視線を戻す。
顔を赤くしているが、なんとなく嬉しそうで、それがまた微笑ましくて
こういうところにどうしても心が惹かれていってしまうのだ。
運命なんか信じないけど、
コイツのことになるとまるで自分で自分を止めることができなくて・・・。
こんな状態をどうやって説明すればいいのだろう。
「というより、持つなって言われてももう遅いんだから・・・じゃあね」
そういって背を向けた蘭世の腕を俊は思わずつかんだ。
「え・・・」
と、目を見開いた蘭世が振り返るのと同時に、
俊は後ろから蘭世を抱きしめた。
一度出した手は引っ込めることもできずにもうほぼ無意識にそうしていた。
どうしてコイツはこんなにはっきり言ってのけるんだろう・・・
俺が・・・どんなにがんばっても・・・
どんなにすごい能力を手に入れても・・・
どうしてもできない・・・
できないのなら、できる方法で、できるだけのせいいっぱいで
想いを伝えなければ・・・
いや、伝えずにはいられなくて・・・
心臓は先ほどと同様鳴り響いて蘭世にまで伝わってしまいそうだったが、
もうそんなことなんてどうでもよかった。
このまま・・・
誰もいないところのいっそ連れ去ってしまって
この煮えたぎる血流を鎮めることなく自分のものにしてしまえたらなんて・・・
反射的に腕の中に収めた蘭世の鼓動も同じように激しく動いているのがわかった。
自分の鼓動を、そして蘭世の鼓動をどうにか抑えてやりたくて
俊はつよく蘭世を抱きしめた。
そして・・・
清らかな黒髪にそっと唇を当てた。。。
それが
自分を保てるせいいっぱい・・・。
この女が自分にとってどれほど必要か、どれだけ大事か・・・
今やっとそれを受け入れられたのかもしれない。
感情に身を任せることだって、たまにはしてみてもいいのかもしれない。
まだ、はっきりと蘭世に向かって言葉に・・・なんて照れくささが
大いに邪魔してできそうにないが、
自分の中にそういう気持ちがあるってことくらいは
もう認識せずにはいられないのだ。
それくらい、大きな存在・・・
「持つななんて言わねえよ・・・」
「え?」
「わかったか?」
「は、はい・・・」
「わかったら、さっさと出てけ」
そういって俊は蘭世を離すとドアの方に押しやった。
腕の中からぬくもりが消えて、なんとなく物足りない気になる。
「え?ちょ、ちょっと・・・」
「これ以上ここにいるとどうなるか知らねえぞ」
「えっ”・・・///」
「ほら、じゃあおやすみ」
部屋から辛うじて蘭世を追い出した俊はドアに背を預けたまま
ずるずるとへたれこんだ。
「本気で・・・やばかった・・・俺・・・」
天井を仰ぐ。
「やばかったけど・・・少しは・・・伝わった・・・か?」
気づいたからには、認識したからには、
突発的なことで彼女を傷つけたくないし、傷つけないようにするのも
自分の責任なんだから・・・。
マジ出てって精神から鍛えなおさねえと・・・
俊はまだ乙女のようにバクバクしている心臓を押さえながら
そしてどうしてもこんな時だけ優等生な自分のせいで
一歩先には進めないのをどこか少しだけ悔みながら
そう自分に言い聞かせたのだった。
<END>
+あとがき+
再び読み返してみて
王子草食すぎだぜ!って思いました^^;
ただ王子に気づかせたかっただけなんだけど(笑)
どうでもいいけど長い文章でしたね…。
スミマセン…
アンケートときめき名シーンより
第5位「8巻のペンダントを直した後のキス未遂シーン」
からヒントをいただいた作品です
先ほどの夕食の時間、俊はよりによって蘭世と真正面に座らされ、
味覚も失うほどの緊張感でいっぱいだった。
目も合わせられないほどの気まずさが二人の間に流れていたのに、
ふとした拍子にパチっと目が合ってしまったりするのはなぜなんだろう。
その緊張感は蘭世もおなじだったようで、
スープはひっくり返すわ、お箸は床に落っことすわ…
動揺ぶりは俊以上だった。
せめて自分だけはと冷静を装うものの、目の焦点も定まらない状態で、
望里と椎羅はともかく、感覚の鋭い鈴世なんかは、
ちらちらと俊と蘭世を見比べ、
それに気づいた俊に、わかっているのかどうなのか意味深な目で、
サインを送ってくるような始末で
俊は口の中に料理をかきこむだけかきこんで、
ダイニングから飛び出してきてしまった。
いつまでもあの状態でいられるわけでもないし、
動揺しながらもこの部屋に入ってこようとする蘭世には
ある意味、尊敬の念も抱いてしまう。
たぶん、自分からはどう動いていいかすらわからないのだから・・・。
俊はふぅと呼吸を整えてからドアを開けた。
「な、なんだ?」
声がうわずる。
しかし、俊のそんな様子には気づいていないのか、
蘭世はうつむいたままだった。
「あ、あの・・・さっきの話なんだけど・・・」
・・・コイツ・・・また俺を煽る気か・・・??
心臓がドクンと跳ねる。
「家を出ていくって話・・・」
あぁ・・・そっちか・・・。
「いつごろとかって決めてるの?」
少し拍子が抜けて俊はベッドにドサリと腰をかけた。
「・・・いや・・・まだ具体的には・・・」
「・・・そっか・・・よかった・・・」
「え?」
「・・・その・・・もう・・・すぐとかだと困っちゃうなぁ・・・なんて・・・」
エヘヘと蘭世は笑う。
「ほら・・・私にも心の準備とか・・・いるし・・・」
その笑顔に俊の胸がキュンと締まる。
いつ頃からこの軋みを覚えたのだろう。
まだ人間だったころ・・・
そんな前でもないのに、もうずっと昔のことだった気がする。
そこに突如として自分の前に現れた不思議な女。
泣いて、笑って、気がつけばいつもそばにいて・・・
何故か守らなければいけないような気になって・・・
コイツとどうなりたいなんて、考えたこともなかったのに、
正直、あのカルロとかいうルーマニア人が現れてからは、
いやな胸騒ぎさえ覚える。
この胸の軋みも、胸騒ぎの意味も・・・。
「真壁くん?」
ふっと無防備に覗き込んでくる蘭世に俊は慌てて目を逸らす。
「ま、まぁ…働き口とかも見つけなきゃいけないし、
そうすぐってわけじゃねえけど・・・」
「・・・うん・・・」
「・・・・・」
沈黙が流れる。胸がそわそわして落ち着かない。
このままだとまた・・・
もう一度急いで積み上げかけた堤防が崩れていきそうになる。
「私・・・」
「・・・・」
「真壁くんのことが大好きよ・・・」
「・・・・っ!」
「知ってると思うけど・・・」
そういって蘭世が笑う。
「さっきの・・・私・・・ちょっとだけ・・・自信もっていいのかな?」
俊は蘭世にちらりとだけ視線を戻す。
顔を赤くしているが、なんとなく嬉しそうで、それがまた微笑ましくて
こういうところにどうしても心が惹かれていってしまうのだ。
運命なんか信じないけど、
コイツのことになるとまるで自分で自分を止めることができなくて・・・。
こんな状態をどうやって説明すればいいのだろう。
「というより、持つなって言われてももう遅いんだから・・・じゃあね」
そういって背を向けた蘭世の腕を俊は思わずつかんだ。
「え・・・」
と、目を見開いた蘭世が振り返るのと同時に、
俊は後ろから蘭世を抱きしめた。
一度出した手は引っ込めることもできずにもうほぼ無意識にそうしていた。
どうしてコイツはこんなにはっきり言ってのけるんだろう・・・
俺が・・・どんなにがんばっても・・・
どんなにすごい能力を手に入れても・・・
どうしてもできない・・・
できないのなら、できる方法で、できるだけのせいいっぱいで
想いを伝えなければ・・・
いや、伝えずにはいられなくて・・・
心臓は先ほどと同様鳴り響いて蘭世にまで伝わってしまいそうだったが、
もうそんなことなんてどうでもよかった。
このまま・・・
誰もいないところのいっそ連れ去ってしまって
この煮えたぎる血流を鎮めることなく自分のものにしてしまえたらなんて・・・
反射的に腕の中に収めた蘭世の鼓動も同じように激しく動いているのがわかった。
自分の鼓動を、そして蘭世の鼓動をどうにか抑えてやりたくて
俊はつよく蘭世を抱きしめた。
そして・・・
清らかな黒髪にそっと唇を当てた。。。
それが
自分を保てるせいいっぱい・・・。
この女が自分にとってどれほど必要か、どれだけ大事か・・・
今やっとそれを受け入れられたのかもしれない。
感情に身を任せることだって、たまにはしてみてもいいのかもしれない。
まだ、はっきりと蘭世に向かって言葉に・・・なんて照れくささが
大いに邪魔してできそうにないが、
自分の中にそういう気持ちがあるってことくらいは
もう認識せずにはいられないのだ。
それくらい、大きな存在・・・
「持つななんて言わねえよ・・・」
「え?」
「わかったか?」
「は、はい・・・」
「わかったら、さっさと出てけ」
そういって俊は蘭世を離すとドアの方に押しやった。
腕の中からぬくもりが消えて、なんとなく物足りない気になる。
「え?ちょ、ちょっと・・・」
「これ以上ここにいるとどうなるか知らねえぞ」
「えっ”・・・///」
「ほら、じゃあおやすみ」
部屋から辛うじて蘭世を追い出した俊はドアに背を預けたまま
ずるずるとへたれこんだ。
「本気で・・・やばかった・・・俺・・・」
天井を仰ぐ。
「やばかったけど・・・少しは・・・伝わった・・・か?」
気づいたからには、認識したからには、
突発的なことで彼女を傷つけたくないし、傷つけないようにするのも
自分の責任なんだから・・・。
マジ出てって精神から鍛えなおさねえと・・・
俊はまだ乙女のようにバクバクしている心臓を押さえながら
そしてどうしてもこんな時だけ優等生な自分のせいで
一歩先には進めないのをどこか少しだけ悔みながら
そう自分に言い聞かせたのだった。
<END>
+あとがき+
再び読み返してみて
王子草食すぎだぜ!って思いました^^;
ただ王子に気づかせたかっただけなんだけど(笑)
どうでもいいけど長い文章でしたね…。
スミマセン…
君との距離、あと何mm? 前編
俊×蘭世 転生後 ときめき夜話イベ出品作品
アンケートときめき名シーンより
第5位「8巻のペンダントを直した後のキス未遂シーン」
からヒントをいただいた作品です
「もうちょっとだったんだけどな・・・」
夕食を終えて自分の部屋に戻った俊は大きくため息をつきながら
ベッドに横になった。
まだ心臓がドキドキ大きく動いている。
あんなことになるとは、ホンの何時間か前までは考えてもいなかった。
彼女の肩の形が、感覚として今でも手のひらに残っている。
小さい肩を思い出して、俊は枕をギュッと抱え込んで瞳を閉じた。
*****
・・・私のことどう思ってるの・・・
そう聞かれたとき、ぐっと体中の血がたぎった。
江藤がじっとこちらを見ているその視線から、何故か今日は逃げられない気がした。
大きな瞳をゆらゆらと揺らしながらこちらを見つめる目には、
そう、幾度となく引き込まれそうになった。
ただ、そんなことをコイツは知らない。
見つめられれば逸らし、逸らせばまた見つめられ…
魔界人として生まれ変わる前から、
自分もそして江藤もただの人間だと信じて疑わなかった頃から、
ずっとそんな意味のない繰り返しを続けている。
なぜなら感情を表に出さないことが自分というものを保つことができる
唯一の箍だったからだ。
彼女の気持ちを知らないわけではなかったし
(実際、はきると言われたことだってあるわけで)
最初は多少面倒だと思っていたが、いつの間にか思われているのが
当たり前のような感覚になってきて、
自分の気持ちにははっきりと向き合う機会を持てないまま、魔界人として生まれ変わり
それこそ恋だの愛だの、叫ぶ状況にない状態が続いて、結局今に至ってしまった。
どう思ってるなんてこの俺に聞くか!?
と、つっこみたくなる衝動に駆られつつも、今回はそう軽口をたたける
雰囲気でもなかったし、
実際のところ、感情を出さないはずの自分自身が思いのほか
素直な気持ちが胸の奥からこみあげてきた気がした。
ずっと、目を逸らしていた気持ち。
本当はずっと前から他の女性に対する想いとは違う、
特別な感情ってヤツが心を揺さぶり続けていたことに
気づいていたにも関わらず、俊はどうすることもできなかった。
言葉になんか、到底できるわけがなかったし、ましてやその時の
感情に走って行動を起こしていたのならば、
たぶん、ムダに彼女を傷つけていたかもしれない。
彼女を求める心は本当のところ、それだけ膨大で制御不能で
危険であるということを
直感でわかっていたのだ。
だから、それならば気づかないフリをしていようと・・・。
気づいて抑えられなくなるよりもずっと・・・。
だけど、彼女の気持ちを知っておきながら、彼女がはっきり
こちらの意思を聞いてこないことにかこつけ、
甘えてきたことも事実であって、結局それで逆に傷つけてしまったことだって
多々あったわけで、
今回のことだってその典型的な例だ。
・・・まとわりつくのがイヤになったの?・・・
そんなことあるはずないのに・・・
でもそう彼女が誤解したって不思議なことは何もない。
そう思わせてしまったのは、気持ちを伝えてこなかった自分のせいでもあるのだ。
泣きじゃくる彼女を、自分にとって言葉という至極面倒で困難な方法を使って
慰めることもましてや思いを全部ぶちまけることもできない俺は・・・
どうしたらいい?
いや・・・
俺は・・・どうしたい・・・?
そう思ったとき、自然と体が動いた。
濡れた瞳に覗きこまれた俊は、それまでの蘭世とのやりとりに加えて、
ストレートに自分をどう思っているかと
質問を投げかけられたのと相合わさり、
今まで感情を抑えつけてきた堤防なんかはもろくも崩れ去って
びっくりするくらい素な自分が表面に現れてしまった。
俺は・・・
お前のことを・・・
こんなにも・・・・
心臓は意思をもって飛び出しそうなくらい激しく動いていたが、
そんなことを絶対悟られたくない俊は
まだかろうじて残された抑止力でできるかぎりのポーカーフェイスを作って
首に回していた手をそっと肩に置き、ゆっくりと彼女の唇に
自分のそれを近づけていった。
あのとき、邪魔がはいっていなければ・・・
どうなっていただろう・・・。
感情は・・・自分でも予想がつかないほど、
走り出してしまっていただろうか・・・。
時間がたって、落ち着いて先ほどのことを思いだすと
どっと冷や汗が出てくる。
彼女の家族がいる同じ屋根の下で、
俺は何をやらかしてしまうところだっただろうか・・・。
たぶん、キス・・・だけでは済ませられなかったと思う。
今までの、心に秘めていた彼女への感謝と好奇心と独占欲と…。
全てを含めた欲望を一気に彼女に向けて放ってしまっていたに違いない。
俊は仰向けになって額に腕を当てた。
もう一度ため息を吐く。
この家にいられない理由・・・。
それを現実として目の前に突き出されて俊は愕然とした。
だから・・・
そうなることが、
自分を止められなくなるのが
わかるから・・・。
感情に流されたくないんだよ・・・。
俺はいとも簡単に、ただの男になっちまうんだから・・・。
俊がベッドの上で何度目かの寝返りを打ったとき、
トントン・・・
と俊の部屋のドアがためらいがちにノックされた。
「真壁くん・・・入っていい?」
突然の蘭世の訪問に俊は慌てて身を起こす。
そして気持ちを無理やり押し込めていつものポーカーフェイスを作った。
<つづく>
アンケートときめき名シーンより
第5位「8巻のペンダントを直した後のキス未遂シーン」
からヒントをいただいた作品です
「もうちょっとだったんだけどな・・・」
夕食を終えて自分の部屋に戻った俊は大きくため息をつきながら
ベッドに横になった。
まだ心臓がドキドキ大きく動いている。
あんなことになるとは、ホンの何時間か前までは考えてもいなかった。
彼女の肩の形が、感覚として今でも手のひらに残っている。
小さい肩を思い出して、俊は枕をギュッと抱え込んで瞳を閉じた。
*****
・・・私のことどう思ってるの・・・
そう聞かれたとき、ぐっと体中の血がたぎった。
江藤がじっとこちらを見ているその視線から、何故か今日は逃げられない気がした。
大きな瞳をゆらゆらと揺らしながらこちらを見つめる目には、
そう、幾度となく引き込まれそうになった。
ただ、そんなことをコイツは知らない。
見つめられれば逸らし、逸らせばまた見つめられ…
魔界人として生まれ変わる前から、
自分もそして江藤もただの人間だと信じて疑わなかった頃から、
ずっとそんな意味のない繰り返しを続けている。
なぜなら感情を表に出さないことが自分というものを保つことができる
唯一の箍だったからだ。
彼女の気持ちを知らないわけではなかったし
(実際、はきると言われたことだってあるわけで)
最初は多少面倒だと思っていたが、いつの間にか思われているのが
当たり前のような感覚になってきて、
自分の気持ちにははっきりと向き合う機会を持てないまま、魔界人として生まれ変わり
それこそ恋だの愛だの、叫ぶ状況にない状態が続いて、結局今に至ってしまった。
どう思ってるなんてこの俺に聞くか!?
と、つっこみたくなる衝動に駆られつつも、今回はそう軽口をたたける
雰囲気でもなかったし、
実際のところ、感情を出さないはずの自分自身が思いのほか
素直な気持ちが胸の奥からこみあげてきた気がした。
ずっと、目を逸らしていた気持ち。
本当はずっと前から他の女性に対する想いとは違う、
特別な感情ってヤツが心を揺さぶり続けていたことに
気づいていたにも関わらず、俊はどうすることもできなかった。
言葉になんか、到底できるわけがなかったし、ましてやその時の
感情に走って行動を起こしていたのならば、
たぶん、ムダに彼女を傷つけていたかもしれない。
彼女を求める心は本当のところ、それだけ膨大で制御不能で
危険であるということを
直感でわかっていたのだ。
だから、それならば気づかないフリをしていようと・・・。
気づいて抑えられなくなるよりもずっと・・・。
だけど、彼女の気持ちを知っておきながら、彼女がはっきり
こちらの意思を聞いてこないことにかこつけ、
甘えてきたことも事実であって、結局それで逆に傷つけてしまったことだって
多々あったわけで、
今回のことだってその典型的な例だ。
・・・まとわりつくのがイヤになったの?・・・
そんなことあるはずないのに・・・
でもそう彼女が誤解したって不思議なことは何もない。
そう思わせてしまったのは、気持ちを伝えてこなかった自分のせいでもあるのだ。
泣きじゃくる彼女を、自分にとって言葉という至極面倒で困難な方法を使って
慰めることもましてや思いを全部ぶちまけることもできない俺は・・・
どうしたらいい?
いや・・・
俺は・・・どうしたい・・・?
そう思ったとき、自然と体が動いた。
濡れた瞳に覗きこまれた俊は、それまでの蘭世とのやりとりに加えて、
ストレートに自分をどう思っているかと
質問を投げかけられたのと相合わさり、
今まで感情を抑えつけてきた堤防なんかはもろくも崩れ去って
びっくりするくらい素な自分が表面に現れてしまった。
俺は・・・
お前のことを・・・
こんなにも・・・・
心臓は意思をもって飛び出しそうなくらい激しく動いていたが、
そんなことを絶対悟られたくない俊は
まだかろうじて残された抑止力でできるかぎりのポーカーフェイスを作って
首に回していた手をそっと肩に置き、ゆっくりと彼女の唇に
自分のそれを近づけていった。
あのとき、邪魔がはいっていなければ・・・
どうなっていただろう・・・。
感情は・・・自分でも予想がつかないほど、
走り出してしまっていただろうか・・・。
時間がたって、落ち着いて先ほどのことを思いだすと
どっと冷や汗が出てくる。
彼女の家族がいる同じ屋根の下で、
俺は何をやらかしてしまうところだっただろうか・・・。
たぶん、キス・・・だけでは済ませられなかったと思う。
今までの、心に秘めていた彼女への感謝と好奇心と独占欲と…。
全てを含めた欲望を一気に彼女に向けて放ってしまっていたに違いない。
俊は仰向けになって額に腕を当てた。
もう一度ため息を吐く。
この家にいられない理由・・・。
それを現実として目の前に突き出されて俊は愕然とした。
だから・・・
そうなることが、
自分を止められなくなるのが
わかるから・・・。
感情に流されたくないんだよ・・・。
俺はいとも簡単に、ただの男になっちまうんだから・・・。
俊がベッドの上で何度目かの寝返りを打ったとき、
トントン・・・
と俊の部屋のドアがためらいがちにノックされた。
「真壁くん・・・入っていい?」
突然の蘭世の訪問に俊は慌てて身を起こす。
そして気持ちを無理やり押し込めていつものポーカーフェイスを作った。
<つづく>
新しい呼吸
俊×蘭世 転生後
大王との魔界での対決から3日後の設定です。
どこか遠くから聞こえてくる小鳥のさえずりで俊は目を覚ました。
まだ意識を朦朧とさせながら、仰向けになり何気なく天井を眺める。
ん?どこだっけ?
見慣れない天井の模様、そして部屋の景色。
意識の満ち引きを繰り返しながら、ゆっくり思考が戻ってくるのを待つ。
そして何度目かの覚醒で、俊はパチリと目を開け飛び起きた。
そうだ!江藤んち!
ベッドから起き上がってカーテンを開ける。
7時過ぎ。いい天気だ。
窓の外を眺めながら俊は大きく一つ伸びをした。
魔界での戦いが終わって江藤家で居候をさせてもらうことになり、早3日が経っている。
自分の身の上に起こったことをそれなりに考えていた。
常識ではありえない話。
本当に長い夢を見ていたような気になるが、
今までになかったこの星形のアザと妙な能力が身についていることを思い知った今は
それが現実であるということを認めざるを得ない。
無言のまま俊は能力を使ってハンガーからパーカーを引き寄せた。
まあ便利っていやあ便利なんだけど…。
俊は手にしたパーカーをポイとベッドに投げだし、自分ももう一度ドサリと倒れ込んだ。
今は自分の運命ってヤツを受け止めることでせいいぱいで、
今後どうしていくかも何一つ見えてこない。
流れでこの江藤家に身を寄せることになったが、それもいつまで甘えていいものか。
かといって、母親のいる(今は父と弟とやらもいるが)魔界で暮らすというのも
自分の中ではいまいちピンと来なくて…
俊は大きくため息をついた。
魔界人でも王子でも…俺は俺なんだ。
だが、母をいつか幸せにしてやるということを志してきたというのに
その意思は今や大きく揺らぎつつある。
魔界にいれば、オヤジだってあろんだっているんだし、何の不自由もねよなぁ
何かおれらしく生きる道を探さねば…。
俊は目を閉じた。
この数か月のことをゆっくりと思い出す。
そしてその一つ一つの風景の中には決まって蘭世の姿があった。
泣き顔もあれば、必死な表情もあったが、
すぐに浮かんでくるのはやはり笑顔だった。
俺なんかのためにあんな大王を敵に回しやがって…(オヤジだったわけだが)
今この姿に戻って改めて蘭世をバカだと思う。
でも何故か、ずっとそばにいた女性が彼女であったということに
どこかほっとしている自分がいた。
出会った頃から不思議なヤツだとは思っていたが、まさか同じ人種だったとは…。
そういえば、以前星形のアザとかも聞いてやがったな。
人間時代に体験した不思議な出来事が今やっと一つ一つ繋がっていく。
きっといつもアイツがいろんなとこでからんでいたのだろう。
そう思うと俊は可笑しくなった。
その瞬間、階下で何やらけたたましい音が微量の振動とともに響いた。
それと同時に蘭世の悲鳴と椎羅の叱声がここまで突き抜けてくる。
どうやら何かをひっくり返したようだ。
アイツめ・・・。
バカなヤツ・・・と俊は笑った。
そして一瞬静かになると階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
俊はよっと起き上がった時、トントンとドアをノックされた。
「真壁くん?起きてますかー?」
そっとドアが開いて蘭世が顔を出す。
「あぁ…なんだ?台所ではお役ゴメンか」
そういった俊に蘭世がさっと顔色を変える。
「き、聞こえてた?」
無言で俊は頷く。
「アハハハ…ちょっとスープの鍋をひっくり返しちゃって…」
「台所を追い出されて起こしに来たと…」
「グッ…ま、まあそんなトコデス」
「ったく、いつもながらおっちょこちょいだな。お前ってヤツは」
「だ、だってぇ…」
しおらしく俯く蘭世を見て俊はクスリと笑う。
記憶の中にある頼りになるおっかない姉ちゃんと、
目の前でしょんぼりしているこの女が同一人物だということに
未だ馴染めないが、それでもこの数か月で彼女の存在がこんなにも
大きくなっているということがなんとなくわかる。
彼女が抱いてきた不安だとか苦悩だとか、元の姿に戻った今、それがわかる。
何歳の時代だったか、「そのとき俺も好きだった?」と問いかけたことがあった。
好きとか嫌いとか…そういう意味もよくわかってはいなかったが、
「嫌いじゃなかったと思う」という答えはやはり正しかったんだと思う。
あの頃・・・まだ生まれ変わる前のあの時、
俺は・・・確かに・・・
そう・・・今ほどではなかったとしても・・・
コイツのことを・・・
「真壁くん?」
黙ったままの俊に蘭世はきょとんとした顔で覗き込んだ。
俊はハッと我に返り、思わず蘭世から視線を外した。
どうかしてるぜ。俺は・・・
こんなこと今まで考えたこともなかったのに
いろんなことがあったからだろうか。妙に感傷的になってしまう。
「どこか具合でも悪いの?」
「・・・」
誰のせいだ!誰の!
「いや。・・・ていうか、俺着替えたいんだけど、お前見たいのか?」
「いっ!?」
蘭世はボッと顔を顔を真っ赤にさせて「ち、違うわよ!」といって
部屋から飛び出していった。
ふっと息を吐く。
これ以上ここにいられたら手におえない感情が俺を支配してしまうところだった。
まだアイツの前では優位に立っていたいんだよ!俺は!
ガバっと着ていたパジャマを脱ぎ捨てる。
星形のアザが目に入る。
魔界の王子の証…か・・・。
王子でもなんでもいい。
ただ、もうアイツを苦しませることがなければいい。
ずっと守られてきた。これからは・・・
俊は見えない志がふっと身に走るのを感じた。
グルングルンと腕を回し、パーカーの袖に腕を通し、
身支度を整え俊は部屋を出た。
新しい生活はまだはじまったばかり・・・。
<END>
+あとがき+
実際には王子がいつ自覚したのかわかりませんが
難しい男だねー(笑)
大王との魔界での対決から3日後の設定です。
どこか遠くから聞こえてくる小鳥のさえずりで俊は目を覚ました。
まだ意識を朦朧とさせながら、仰向けになり何気なく天井を眺める。
ん?どこだっけ?
見慣れない天井の模様、そして部屋の景色。
意識の満ち引きを繰り返しながら、ゆっくり思考が戻ってくるのを待つ。
そして何度目かの覚醒で、俊はパチリと目を開け飛び起きた。
そうだ!江藤んち!
ベッドから起き上がってカーテンを開ける。
7時過ぎ。いい天気だ。
窓の外を眺めながら俊は大きく一つ伸びをした。
魔界での戦いが終わって江藤家で居候をさせてもらうことになり、早3日が経っている。
自分の身の上に起こったことをそれなりに考えていた。
常識ではありえない話。
本当に長い夢を見ていたような気になるが、
今までになかったこの星形のアザと妙な能力が身についていることを思い知った今は
それが現実であるということを認めざるを得ない。
無言のまま俊は能力を使ってハンガーからパーカーを引き寄せた。
まあ便利っていやあ便利なんだけど…。
俊は手にしたパーカーをポイとベッドに投げだし、自分ももう一度ドサリと倒れ込んだ。
今は自分の運命ってヤツを受け止めることでせいいぱいで、
今後どうしていくかも何一つ見えてこない。
流れでこの江藤家に身を寄せることになったが、それもいつまで甘えていいものか。
かといって、母親のいる(今は父と弟とやらもいるが)魔界で暮らすというのも
自分の中ではいまいちピンと来なくて…
俊は大きくため息をついた。
魔界人でも王子でも…俺は俺なんだ。
だが、母をいつか幸せにしてやるということを志してきたというのに
その意思は今や大きく揺らぎつつある。
魔界にいれば、オヤジだってあろんだっているんだし、何の不自由もねよなぁ
何かおれらしく生きる道を探さねば…。
俊は目を閉じた。
この数か月のことをゆっくりと思い出す。
そしてその一つ一つの風景の中には決まって蘭世の姿があった。
泣き顔もあれば、必死な表情もあったが、
すぐに浮かんでくるのはやはり笑顔だった。
俺なんかのためにあんな大王を敵に回しやがって…(オヤジだったわけだが)
今この姿に戻って改めて蘭世をバカだと思う。
でも何故か、ずっとそばにいた女性が彼女であったということに
どこかほっとしている自分がいた。
出会った頃から不思議なヤツだとは思っていたが、まさか同じ人種だったとは…。
そういえば、以前星形のアザとかも聞いてやがったな。
人間時代に体験した不思議な出来事が今やっと一つ一つ繋がっていく。
きっといつもアイツがいろんなとこでからんでいたのだろう。
そう思うと俊は可笑しくなった。
その瞬間、階下で何やらけたたましい音が微量の振動とともに響いた。
それと同時に蘭世の悲鳴と椎羅の叱声がここまで突き抜けてくる。
どうやら何かをひっくり返したようだ。
アイツめ・・・。
バカなヤツ・・・と俊は笑った。
そして一瞬静かになると階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
俊はよっと起き上がった時、トントンとドアをノックされた。
「真壁くん?起きてますかー?」
そっとドアが開いて蘭世が顔を出す。
「あぁ…なんだ?台所ではお役ゴメンか」
そういった俊に蘭世がさっと顔色を変える。
「き、聞こえてた?」
無言で俊は頷く。
「アハハハ…ちょっとスープの鍋をひっくり返しちゃって…」
「台所を追い出されて起こしに来たと…」
「グッ…ま、まあそんなトコデス」
「ったく、いつもながらおっちょこちょいだな。お前ってヤツは」
「だ、だってぇ…」
しおらしく俯く蘭世を見て俊はクスリと笑う。
記憶の中にある頼りになるおっかない姉ちゃんと、
目の前でしょんぼりしているこの女が同一人物だということに
未だ馴染めないが、それでもこの数か月で彼女の存在がこんなにも
大きくなっているということがなんとなくわかる。
彼女が抱いてきた不安だとか苦悩だとか、元の姿に戻った今、それがわかる。
何歳の時代だったか、「そのとき俺も好きだった?」と問いかけたことがあった。
好きとか嫌いとか…そういう意味もよくわかってはいなかったが、
「嫌いじゃなかったと思う」という答えはやはり正しかったんだと思う。
あの頃・・・まだ生まれ変わる前のあの時、
俺は・・・確かに・・・
そう・・・今ほどではなかったとしても・・・
コイツのことを・・・
「真壁くん?」
黙ったままの俊に蘭世はきょとんとした顔で覗き込んだ。
俊はハッと我に返り、思わず蘭世から視線を外した。
どうかしてるぜ。俺は・・・
こんなこと今まで考えたこともなかったのに
いろんなことがあったからだろうか。妙に感傷的になってしまう。
「どこか具合でも悪いの?」
「・・・」
誰のせいだ!誰の!
「いや。・・・ていうか、俺着替えたいんだけど、お前見たいのか?」
「いっ!?」
蘭世はボッと顔を顔を真っ赤にさせて「ち、違うわよ!」といって
部屋から飛び出していった。
ふっと息を吐く。
これ以上ここにいられたら手におえない感情が俺を支配してしまうところだった。
まだアイツの前では優位に立っていたいんだよ!俺は!
ガバっと着ていたパジャマを脱ぎ捨てる。
星形のアザが目に入る。
魔界の王子の証…か・・・。
王子でもなんでもいい。
ただ、もうアイツを苦しませることがなければいい。
ずっと守られてきた。これからは・・・
俊は見えない志がふっと身に走るのを感じた。
グルングルンと腕を回し、パーカーの袖に腕を通し、
身支度を整え俊は部屋を出た。
新しい生活はまだはじまったばかり・・・。
<END>
+あとがき+
実際には王子がいつ自覚したのかわかりませんが
難しい男だねー(笑)
070 かくれんぼ
俊幼少×蘭世+筒井 転生後 筒井くん視点
100のお題より お題提供:ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
「あっ、俊くん、みーーーっけ♪」
「あ~あ、見つかっちゃったー。」
「さっ!じゃあ今度は俊くんと鈴世、じゃんけんして負けた方が鬼よ」
僕が昼過ぎにこの別荘に来たとき、蘭世と鈴世と…そして真壁は
3人でワイワイとかくれんぼをしている真っ最中だった。
真壁…といっても今まで僕が知っていた真壁の面影はそこにはない。
純粋な瞳の子どもの姿をした真壁であった。
真壁が魔界というところの王子として生まれ変わった。
そしてその命を狙われていて、蘭世たちが彼を守ろうとしている…
その話を聞いたのはつい先日のことだった。
鈴世と、そして蘭世も、ふつうの人間ではないのでは・・ということは
うすうす気づいていた。
だが、今回の話は僕の想像をはるかに超えるもので
まるで夢を見ているのではないかと思った
まさか、あの真壁まで僕の想像に入ってくるとは思いもしていなかった。
だが、ここしばらく、江藤家や、生まれ変わったという真壁たちと接していると、
何も変わらないようでいて、やはり現実なんだなと確信しつつある。
赤ん坊の姿から少し成長した真壁は、あの頃の大人びた様子は全くないが、
きれいな二重の瞳は、まさしく彼のもので、
この愛くるしい姿のまま成長していれば、もっととっつきやすかったのになどと
考えてしまい、ふと笑みが零れる。
今や彼女の隣にいたあのあの真壁はもうどこいもいない。
いるのはあのちびっこい俊だけ。
数歳ずつ成長はしていくようだが、それも確証されているわけでもない。
蘭世・・・。
その細腕で、君はずっとそいつを守り続けていくつもりなのか・・・。
楽しそうに笑っている蘭世を見て、また僕の心がうずいた。
彼女の彼に対する想いを知れば知るほど
皮肉なことに、自分の気持ちも彼女に向かって行ってしまう。
紳士であろうとする自分の理性だけが、暴走をかろうじて食い止めていた。
あの真壁が・・・今はいない・・・。
今、彼女を守れるのは僕じゃないのか?
魔界なんて関係ない・・・。
そばにいてあげたい・・・。
欲望の心が目を覚ましそうになり、自分の中でどうしようもない葛藤が始まる。。。
「あ、筒井くん!いらっしゃい!ってここは筒井くんの別荘だったわ・・・えへへ」
蘭世が僕の存在に気づいて、声をかけてきた。
彼女の屈託のない笑顔が僕にもう一度理性を呼び起こさせた。
「・・・やあ、しばらく」
冷静さを装って僕も笑顔で答える。
「あ、筒井のお兄ちゃんだ!お兄ちゃんも一緒にかくれんぼしようよ!」
真壁も鈴世に手を引っ張られ駆け寄ってくる。
なんてまっすぐに人を見る瞳をもっているのだろう・・・。
とても同じ人物とは思えなくて僕は自分に潜んでいた邪な心も忘れて、笑いを堪えた。
「お~し、やるか~。お前はホントかわいいな~。
このかわいさを残して元に戻ればいいんだけどな」
僕は真壁の小さい頭をぐしゃぐしゃと撫で回して言った。
「やだ、筒井くんったら・・・クスクス。かわいい真壁くんなんて気持ち悪い…」
蘭世も吹き出しそうになるのを堪えながら笑った。
ホント君は楽しそうに笑うんだな…。
本当は何かに縋り付いて泣いてしまいたい気持ちでいっぱいのはずなのに。
子どもの真壁と手を取り合って笑う姿は傍目から見ると本当の姉弟のように見えるが、
僕にはそれ以上のもっと強い絆で結ばれているようにも見えた。
お互いに深く信じ合い、頼り合い…。
自分の出番なんてどこにもないってことを思い知らされる。
ここにいるのはあんなに幼い姿の真壁でしかないというのに・・・。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
背後でいつの間にか後ろに回っていた俊の声がして振り向いた。
「早く隠れないと、鈴世のお兄ちゃんに見つかっちゃうよ」
「・・・あ」
感情に耽っている間にかくれんぼは再開されていたようだ。
鈴世が鬼らしく、数をゆっくり数えている。
「ほら、早くー」
そういって俊が小さい手で僕の手を握ってクイクイと引っ張った。
物置の影に僕と真壁は隠れた。
よく考えればなんて不思議なことなんだ。
隣にいるのはあの真壁で、一緒にかくれんぼしているなんて・・・。
横目で見ると真壁は必死で鈴世の動きを目で追っていた。
あまりの真剣さに可笑しくなって僕は思わず噴き出した。
「あ!ダメだよ!シーーーッ!!」
真壁は人差し指を口元にあてて、小さい声で僕を窘めた。
「あ、わるいわるい」
かわいらしいしぐさに微笑ましくなったが、この隙だと思い僕はふと聞いてみた。
「なぁ・・・俊?・・・お前・・・お姉ちゃんのこと・・・好きだろ?」
「・・・?・・・うん」
俊は首をかしげながらうなずいた。
「じゃあ、早く大きくならないとな。でないとお兄ちゃんが取っちゃうぞ」
子ども相手にいうことではないのは重々承知していた。
だが、言い出してしまったことは最後まで言わずにはいられなかった。
普段の姿に向かっては到底言えない言葉・・・。
俊はわけがわからないといった様子できょとんとしていたが、
そのあと惜しげもなく言った。
「うん、大丈夫だよ。僕、早く大きくなって、ずっとお姉ちゃんと一緒にいるから☆」
俊はにっこり微笑んで言った。
(俺がずっと一緒にいるから・・・)
幼い俊の背後に一瞬であったが元の真壁の姿を見たような気がした。
(だから、お前は手を出すなよ・・・)
そういってはにかんだ気がした。
普段の姿なら恐らく到底聞けない言葉・・・。
「・・・そっか・・・そうだな・・・。よし、任せたぞ!」
僕はそれだけ言った後、もうそれ以上は何も言わなかった。というより言えなかった。
子ども相手に凄んだ自分が腹立たしかったし、子どもながらに素直に言い切る真壁を
何となく頼もしく思えた。
もう何をいう必要もない。
彼女がこいつをどこまでも信頼するのはこういう部分なのかもしれないな。
どんな姿であれ、お前の口から聞けてよかったよ…真壁。。。
「あ、筒井のお兄ちゃんと俊くんみっけ~」
思いがけずに鈴世が視界に飛び込んできた。
「あーー、見つかっちゃったーー。お兄ちゃんがしゃべってるからだよぉーー」
もう!とふくれながら真壁は子どもらしく怒っていた。
「わるいわるい。よしじゃあ今度は僕が鬼になるから、二人とも隠れろ~~~」
「ほんと?わ~~~」
そういって二人は離れたところにいた蘭世も誘って三人で隠れだした。
フッと笑って三人の後姿を見送りながら、僕はゆっくりと数を数え始めた。
<END>
+あとがき+
王子が生まれ変わった時期のお話でした。
蘭世に迫ろうとしているアロンに向かって
「お姉ちゃんから離れろ!(江藤から離れろ…)といったシーンが好きでしたので
ちょっとイメージを借りて書きました。
小さくても真壁くんなら守ってくれるんでしょうねw
100のお題より お題提供:ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
「あっ、俊くん、みーーーっけ♪」
「あ~あ、見つかっちゃったー。」
「さっ!じゃあ今度は俊くんと鈴世、じゃんけんして負けた方が鬼よ」
僕が昼過ぎにこの別荘に来たとき、蘭世と鈴世と…そして真壁は
3人でワイワイとかくれんぼをしている真っ最中だった。
真壁…といっても今まで僕が知っていた真壁の面影はそこにはない。
純粋な瞳の子どもの姿をした真壁であった。
真壁が魔界というところの王子として生まれ変わった。
そしてその命を狙われていて、蘭世たちが彼を守ろうとしている…
その話を聞いたのはつい先日のことだった。
鈴世と、そして蘭世も、ふつうの人間ではないのでは・・ということは
うすうす気づいていた。
だが、今回の話は僕の想像をはるかに超えるもので
まるで夢を見ているのではないかと思った
まさか、あの真壁まで僕の想像に入ってくるとは思いもしていなかった。
だが、ここしばらく、江藤家や、生まれ変わったという真壁たちと接していると、
何も変わらないようでいて、やはり現実なんだなと確信しつつある。
赤ん坊の姿から少し成長した真壁は、あの頃の大人びた様子は全くないが、
きれいな二重の瞳は、まさしく彼のもので、
この愛くるしい姿のまま成長していれば、もっととっつきやすかったのになどと
考えてしまい、ふと笑みが零れる。
今や彼女の隣にいたあのあの真壁はもうどこいもいない。
いるのはあのちびっこい俊だけ。
数歳ずつ成長はしていくようだが、それも確証されているわけでもない。
蘭世・・・。
その細腕で、君はずっとそいつを守り続けていくつもりなのか・・・。
楽しそうに笑っている蘭世を見て、また僕の心がうずいた。
彼女の彼に対する想いを知れば知るほど
皮肉なことに、自分の気持ちも彼女に向かって行ってしまう。
紳士であろうとする自分の理性だけが、暴走をかろうじて食い止めていた。
あの真壁が・・・今はいない・・・。
今、彼女を守れるのは僕じゃないのか?
魔界なんて関係ない・・・。
そばにいてあげたい・・・。
欲望の心が目を覚ましそうになり、自分の中でどうしようもない葛藤が始まる。。。
「あ、筒井くん!いらっしゃい!ってここは筒井くんの別荘だったわ・・・えへへ」
蘭世が僕の存在に気づいて、声をかけてきた。
彼女の屈託のない笑顔が僕にもう一度理性を呼び起こさせた。
「・・・やあ、しばらく」
冷静さを装って僕も笑顔で答える。
「あ、筒井のお兄ちゃんだ!お兄ちゃんも一緒にかくれんぼしようよ!」
真壁も鈴世に手を引っ張られ駆け寄ってくる。
なんてまっすぐに人を見る瞳をもっているのだろう・・・。
とても同じ人物とは思えなくて僕は自分に潜んでいた邪な心も忘れて、笑いを堪えた。
「お~し、やるか~。お前はホントかわいいな~。
このかわいさを残して元に戻ればいいんだけどな」
僕は真壁の小さい頭をぐしゃぐしゃと撫で回して言った。
「やだ、筒井くんったら・・・クスクス。かわいい真壁くんなんて気持ち悪い…」
蘭世も吹き出しそうになるのを堪えながら笑った。
ホント君は楽しそうに笑うんだな…。
本当は何かに縋り付いて泣いてしまいたい気持ちでいっぱいのはずなのに。
子どもの真壁と手を取り合って笑う姿は傍目から見ると本当の姉弟のように見えるが、
僕にはそれ以上のもっと強い絆で結ばれているようにも見えた。
お互いに深く信じ合い、頼り合い…。
自分の出番なんてどこにもないってことを思い知らされる。
ここにいるのはあんなに幼い姿の真壁でしかないというのに・・・。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
背後でいつの間にか後ろに回っていた俊の声がして振り向いた。
「早く隠れないと、鈴世のお兄ちゃんに見つかっちゃうよ」
「・・・あ」
感情に耽っている間にかくれんぼは再開されていたようだ。
鈴世が鬼らしく、数をゆっくり数えている。
「ほら、早くー」
そういって俊が小さい手で僕の手を握ってクイクイと引っ張った。
物置の影に僕と真壁は隠れた。
よく考えればなんて不思議なことなんだ。
隣にいるのはあの真壁で、一緒にかくれんぼしているなんて・・・。
横目で見ると真壁は必死で鈴世の動きを目で追っていた。
あまりの真剣さに可笑しくなって僕は思わず噴き出した。
「あ!ダメだよ!シーーーッ!!」
真壁は人差し指を口元にあてて、小さい声で僕を窘めた。
「あ、わるいわるい」
かわいらしいしぐさに微笑ましくなったが、この隙だと思い僕はふと聞いてみた。
「なぁ・・・俊?・・・お前・・・お姉ちゃんのこと・・・好きだろ?」
「・・・?・・・うん」
俊は首をかしげながらうなずいた。
「じゃあ、早く大きくならないとな。でないとお兄ちゃんが取っちゃうぞ」
子ども相手にいうことではないのは重々承知していた。
だが、言い出してしまったことは最後まで言わずにはいられなかった。
普段の姿に向かっては到底言えない言葉・・・。
俊はわけがわからないといった様子できょとんとしていたが、
そのあと惜しげもなく言った。
「うん、大丈夫だよ。僕、早く大きくなって、ずっとお姉ちゃんと一緒にいるから☆」
俊はにっこり微笑んで言った。
(俺がずっと一緒にいるから・・・)
幼い俊の背後に一瞬であったが元の真壁の姿を見たような気がした。
(だから、お前は手を出すなよ・・・)
そういってはにかんだ気がした。
普段の姿なら恐らく到底聞けない言葉・・・。
「・・・そっか・・・そうだな・・・。よし、任せたぞ!」
僕はそれだけ言った後、もうそれ以上は何も言わなかった。というより言えなかった。
子ども相手に凄んだ自分が腹立たしかったし、子どもながらに素直に言い切る真壁を
何となく頼もしく思えた。
もう何をいう必要もない。
彼女がこいつをどこまでも信頼するのはこういう部分なのかもしれないな。
どんな姿であれ、お前の口から聞けてよかったよ…真壁。。。
「あ、筒井のお兄ちゃんと俊くんみっけ~」
思いがけずに鈴世が視界に飛び込んできた。
「あーー、見つかっちゃったーー。お兄ちゃんがしゃべってるからだよぉーー」
もう!とふくれながら真壁は子どもらしく怒っていた。
「わるいわるい。よしじゃあ今度は僕が鬼になるから、二人とも隠れろ~~~」
「ほんと?わ~~~」
そういって二人は離れたところにいた蘭世も誘って三人で隠れだした。
フッと笑って三人の後姿を見送りながら、僕はゆっくりと数を数え始めた。
<END>
+あとがき+
王子が生まれ変わった時期のお話でした。
蘭世に迫ろうとしているアロンに向かって
「お姉ちゃんから離れろ!(江藤から離れろ…)といったシーンが好きでしたので
ちょっとイメージを借りて書きました。
小さくても真壁くんなら守ってくれるんでしょうねw