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Look for

俊×蘭世 高校時代

お誕生日記念SS





蘭世は汗がこめかみを流れ落ちるのも気にせず、炎天下の中、息を切らして走っていた。




+++++



巷では、夏休みに入ったので、走っている間にも、普段この時間ではあまり

お目にかからない子どもたちに次々と出くわす。

小学生だろう。

数人でキャイキャイと騒ぎながら、道いっぱいになって歩いている。



しかし、そんな彼らたちも、さすがの蘭世の勢いにはかなり驚いたようで

思わず一斉にパッと道を開け、その間を走り抜けた蘭世の後姿をぽかんと

口を開けて見送っていた。


「何だ?・・・今のねえちゃん」

「・・・さあ・・・」



そんな小学生たちには目もくれる余裕もないほど、蘭世の気は逸っていた。

白のTシャツにジャージ姿という軽装で何も持たないまま蘭世は走っていた。


ただ、一つだけ、銀色の鍵だけが上下に揺れるポケットの中で

存在を大きく知らしめていた。






(・・・・真壁くん・・・・はぁはぁ・・・一体どうしたの・・?・・・)




走る蘭世の心の中は、ただその想いだけが占めていた。


あの角を曲がれば、俊のアパートが見える。

蘭世は息をするのも忘れるほど、ただ、その面影だけを追っていた。



+++++


蘭世はようやくついたアパートを見据え、カンカンカン…っとリズムよく

鉄製の、少し錆びた階段を駆け上がった。



ドンドンドン・・・

「真壁くん!!いるの?・・・真壁くんっ!」

勢いのまま大きくドアをたたき、蘭世の中に向かって声をかけたが、

返事はもとより、物音すら聞こえない。


(まさか。。。倒れてるんじゃ・・・)



蘭世は嫌な予感がして、右手を自分のジャージのポケットにつっこんで、

もってきた鍵をつかんだ。


つい先日、俊がくれた合鍵・・・。

まだ作り立てで新しく、強い日差しにキラリと光った。

まさか、こんなに早く、こんな状況で使うことになろうとは・・・。



あせってなかなか鍵穴に入らないのを、ようやく成功させて、蘭世はドアを開け、

部屋の中に入り込んだ。

締め切ったままで、俊のにおいが充満したその部屋には、当事者の姿は

見つけられなかった。

「・・・真壁くん・・・?」

誰もいないのはわかっていたが、とりあえず名前を呼んでみた。

だが、当然、返事は・・・ない。


靴を脱いで部屋に上がり、周りを見回してみたが、結果は同じだった。

丸い小さな食卓の上に何かを飲み干した後のグラスだけが、何も語ることのないまま

置かれている。

ボクシングの用意はしてあったが、それはそのまま置かれていた。

(学校にもジムにも行ってないってこと?)

(真壁くん・・・どこ行っちゃったの・・・?)

蘭世ははぁはぁと息を整えながらも、誰もいない部屋を黙って見つめていた。





+++++


蘭世はトボトボと半分放心状態で、思わず飛び出てきた学校へと戻っていた。

先ほどはそうは思わなかったが、今は強い日差しが一層熱く感じられる。

額の汗を手の甲でぬぐいながら、蘭世ははぁとため息をついた。




+++++



今朝もいつもと同じようにボクシング部の練習が予定されていた。

夏休みに入ってから、午前中は部活の予定が組まれていたのだ。

朝9時から始まるその練習に、

今朝、

俊は姿を見せなかったのである。




部長である俊が無断で部活を休むなんてことは、まずありえない。

今までも、そんなことは一度たりともなかったし、

人一倍、熱心に取り組んでいたのは言うまでもない。


4月に入ってきた1年の新入部員たちにとっても部長のその姿は

とてもいいお手本であり、目標であった。



それほど厳しい部長が

10時になっても11時になってもこなかったのである。




最初は寝坊でもしたのだろうと思っていたものの、

さすがにこれだけ遅れると、やはり気になってくる。


蘭世は、先日一緒に買ったばかりの携帯で電話をしてみたが

電波すらつながらない。

仕方がないのでメールだけ送って携帯を閉じた。




「どうしたのかな…真壁くん」

蘭世は、タオルを抱えて戻ってきた曜子に声をかけた。


「めずらしいわよね・・・ちょっと私見てこようかしら」

曜子はスクっと立ち上がって言った。

「えっ!?ちょっ・・・神谷さん、ダメ!」

蘭世は思わず曜子の腕をつかんで引き留めた。

「えーい!離しなさいよ!」



またいつもの小競り合いが始まろうとしているところに日野が寄ってきた。

「まあまあ、落ち着けよ、二人とも。。。それにしても真壁のヤツ、

どーしちまったんだろうな~?もしかして倒れてたりして・・・」



「「ええっ!?」」

つかみ合っていた蘭世と曜子は、日野の言葉にぴたりと動きを止める。

(た、たおれてる・・・?真壁くんが・・・?)

「真壁くん・・・」

蘭世はその瞬間、顔を青ざめさせたかと思うと

ババババっとカバンの中から、鍵を取り出してポケットにつっこみ、

そして部室から飛び出していった。




「えっ!?ちょっと!待ちなさい!蘭世ぇ~~~~!」

追いかけようとする曜子を日野は腕をとって止めた。

「まあまあ。二人で行ってもしょうがないだろ?ここは江藤に任せようぜ」

「な、何言ってんのよ!そんなこと誰が許すってのよ!」

「でも、マネージャーが二人とも行っちゃったらあいつらどうすんの?」

そういって日野は呆然とみていたまだまだ頼りない1年生たちを親指で指した。



「う・・・もう!私だって俊が心配なのよ!」

「わかってるよ。わかってるけどさ・・・」

そういって日野はポンと曜子の肩に手を置いた。

「・・・わかったわよ。今日のところは大目に見るわよ・・・日野くん、一生恨むからね」

曜子は日野を指さしながら睨み、そして外に出て行った。




曜子は追いかけようとしたのを日野が止めたことに、本当は少しほっとしていた。

止めなかったら追いかけている。

だが、追いかけてしまったら、もっと辛い光景をみるかもしれなかったということに

わずかながら気づいていた。

(蘭世が持ってったの・・・鍵だった・・・)

曜子は蘭世の走っていった方向をしばらく眺めていたが

ブロック塀に背中を預けると、視線を地面に移し

こみあげてくる何かをぐっと堪えた。




+++++  +++++  +++++




(真壁くんのことだもん、事故ってことはないと思うんだけど・・・)

蘭世ははぁとまた深いため息をついて

ようやく戻ってきた部室のドアをガチャリと開けた。


部室には日野だけがTシャツと短パンに着替えた状態で残っていた。

「よぉ。どうだった?」

日野は頭からかぶった水をタオルで拭きながら、

入ってきた蘭世に声をかけた。

「・・・」

蘭世は無言で目を伏せながら、首を横に振った。


「・・・みんなは?」

室内を見渡して蘭世は聞いた。

「さっき、みんな帰ったよ。時間も時間だし」

日野の言葉に蘭世は左腕にはめた夏仕様の時計を見る。

1時を少し回っていた。

「・・・もうこんな時間・・・」

「とりあえず俺も帰るけど・・・お前も帰れよ」

「・・・ん・・・」

「真壁のことだからさ、急にバイトでも入ったんじゃねえ?

あんま心配しすぎんなよ」

「・・・うん。ありがと・・・」




+++++  +++++  +++++



日野と別れて蘭世はさらに高く上った太陽の下を

さらにトボトボと歩いていた。

俊の姿を思い出すと胸が痛んだ。


(また・・・どこか行っちゃったんじゃ・・・)

蘭世は過去の出来事がわずかにトラウマとなって心に残っていた。


(私、何かしなかった・・・?)

記憶を手繰り寄せても、最近の俊の姿は、いつも優しい笑顔だった。

一緒に携帯を買い、合鍵もくれ・・・いなくなる理由も見つからない。

(バイト・・・なのかな・・・)

それならそれで連絡ぐらい・・・と思うものの、

いちいち報告しなければいけない間柄ではないのかも・・・

と蘭世は一気に自信を落とす。



かばんから蘭世は携帯を取り出した。

色違いで買った真新しい携帯の一番最初に俊の番号が登録してあった。

試しに撮った写真の中に、少し照れた俊の笑顔がある。

それを眺めていた蘭世の手の中で

その瞬間、携帯は電子音を立てながらバイブレーションが倒れた。

画面に「真壁くん」と出る。



蘭世は思わず、携帯を落としそうになりながらも着信を受けた。

「ま、真壁くん!?」

『よぉ』

「よぉじゃないわよ!今どこにいるの!?」

『・・・お前んち』

「・・・は?」

『いいから、帰ってこい』

「・・・はぁ・・・?」

『んじゃな』

俊はそう言い残すと電話はプチっと途切れた。

「ちょ、真壁くん!?・・・切れてる・・・もぅ・・・」

(でも・・・よかった。事故とかじゃなくて・・・)

蘭世はほっと安堵のため息をもらし、携帯を閉じて胸に当てた。






+++++  +++++  +++++



「ただいま!!真壁くん!?」

蘭世は勢いよく家に飛び込んできて、「お帰り」の返事も待たずにリビングの扉を開けた。

「・・・真壁くんは!?」

蘭世はその部屋に俊がいないことを確認すると椎羅に尋ねた。

「もう、なんなの蘭世。落ち着きなさいよ。

 蘭世の部屋にいるわ。ちょうどよかった。ハイ、これもってって」

そういうと椎羅はサンドイッチとジュースを乗せたトレイを蘭世の両手に渡した。



逸る気持ちに反して、ジュースをこぼさないようにそぉ~っと階段を上がる。

そして部屋の前でふぅと息を吐いた。

まるで、何年も会っていなかった恋人に会うような瞬間。



「真壁くん・・・?入るよ?」

そういって蘭世は部屋の扉を開けた。

そこにはずっと追い求めていた俊の姿があった。

俊は窓のそばに立っていて、蘭世の気配を感じ取ると振り返った。


「よぉ」

「・・・だから、「よぉ」じゃないんだってば。・・・どこ・・・行ってたの?

 探したんだよ?心配だってしたんだから・・・」

蘭世は押さえていた思いを涙と一緒にあふれさせた。

俊は蘭世の両手からお盆をとるとテーブルに置いて、

もう一度蘭世の方に振り返ると右手でそっと蘭世の瞳から涙を拭いた。



「悪かったな。連絡もしねぇで・・・」

「っく・・・っく」

蘭世は嗚咽が止まらない。

「実はさ、魔界に行ってたんだよ」

「・・・えっ?・・・魔・・・界?」

蘭世は泣くのをやめて、きょとんとした顔で俊を見た。


「これを取りに行ってたんだ・・・」

そういって俊は小さな、それでいて綺麗な球形の水晶がついたペンダントを

ポケットから取り出した。

普通の水晶に見えたが、それはしばらくすると、蘭世と俊の間で、

そして俊の手の中でキラキラと輝き始めた。



「・・・なに?・・・これ・・・きれい・・・」

「恋人の森の池からとれる水の結晶なんだってよ」

「恋人の森の?」

蘭世は何度か訪れたことのあるあの景色を思い出した。

その時その時、それぞれの想いを抱えながら訪れた場所。

「ああ、ちょうどこの時期の月夜の明かりが、水に反射すると、

それが、こんな風に丸く固まって、宙に浮かぶらしい」

「宙に?でも・・・そんなこと、どうして真壁くんが知ってるの?」

「・・・前にお袋から聞いたんだ。そして、これは・・・その・・・

お守りになるっていうか・・・」

俊は次第に赤くなりながら声を小さくした。

「いや、すぐ帰ってくるつもりだったんだ。でもせっかくだからと思って

城に寄ったら、アロンのヤツに飲まされちまって・・・

そのまま、寝ちゃってさ・・・

気がついたらさっき・・・悪かったよ」

「そうだったの・・・でもなんでそれがいるの?」

蘭世はふんふんと俊の話を聞きながら尋ねた。

「はあ!?お前なぁ、何のために行ったと思ってんだ?」

「えっ!?な、何?」

「・・・マジで言ってんのかよ?おちょくってるなら殴るぞ」

「な、何よ。おちょくってなんか・・・何なの?」

「・・・信じらんねぇ・・・今日は何の日だ?」

「えっ?今日・・・?・・・・・あっ・・・私の・・・たんじょうび・・・?」

俊ははぁ~~と大きく息を吐いてがっくりと肩を落とした。

「自分の誕生日忘れるかよ。この前まで、えらくアピールしてやがったくせに・・・」

「ご、ごめん・・・だって真壁くんがいないからそれどころじゃなくって・・・」

「まぁ・・・それは悪かったけどよ・・・」

俊は半分詫び顔、半分呆れ顔で蘭世を見た。





そして、ふっと顔を笑顔に戻して、腕を回し、そのペンダントを蘭世の首につけた。

「誕生日・・・おめでとう・・・蘭世」

そういって俊は潤んで揺れる大きな瞳を見つめて笑った。

「真壁くん・・・うれしい・・・ありがとう・・・」

笑顔でもあふれてくる蘭世の涙を、俊は唇で受け止めると

その唇を蘭世のもとに寄せた。

そして両手を華奢な恋人の背中に回し、優しく深く抱きしめた。




<END>







+あとがき+

自分で書いておいて何なんですが
蘭世ちゃんの取り乱しよう、イタイっすよね^^;
や、ほんと書いた本人が言うなって話ですが…。

久々に作業したらやり方を忘れてしまっていました。




拍手[17回]

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告白

俊×蘭世 高校時代







(さっ、真壁くんの顔見にいこ♪)

昼休み。。。

少しでも俊と離れているのが寂しい。

(何で真壁くんと同じクラスじゃないのよぉ)

思い立ったら即行動。

蘭世は俊のクラスを目指して駆け出す。



蘭世が俊の教室に近づいたとき、入り口にいた女生徒がちょうどタイミングよく言葉を発した。

「真壁くーん」

蘭世はドキリとして立ち止まる。

(え?)

蘭世は思わず廊下の柱の陰に隠れた。

そっと覗くと俊とその女生徒が入口のところで話している。

蘭世のところまで声は届いてこなかったが、やたらと二人が楽しそうに見えた。

(あの子誰なんだろ・・・真壁くんが知らない女の子と話してるのって

 そういえば初めて見るかも・・・)

蘭世の胸がチクリと痛む。

そうこうしているうちに二人の話が終わったようでその女生徒がじゃあと手を振って入口から

離れた。

(あっ。。。こっちに来ちゃう)

蘭世はそそくさとその場から離れた。

そしてそのまま俊の教室には向かわずに自分の教室に戻った。

胸の奥がじんわりと重い。

ただ話してただけなのに、俊のことを信じているはずなのに

悲しい気持ちがどんどんと膨らんでいく。

好きだけど、私、好きっていってもらったことない・・・。

じんわりと重かっただけの胸はまたたくまに鉛のような重さになった。




放課後

今日は部活もない。

さっきからのもやもやした気持ちを押さえながら蘭世は考える。

(そうだ!気分転換に真壁くん誘って買い物でも行こう!

お昼間のこともさらっと聞いちゃったりして☆)

そして蘭世はふたたび俊のクラスに向かった。



「あっ、真壁くん、帰ろ♪今日さ・・・」

「・・・悪い、江藤、ちょっと用があるんだ。先に帰ってくれ・・・」

俊が蘭世の言葉をさえぎって言った。

(え・・・!?)

じゃあなと言って俊は教室を出ていく。

「あ・・・真壁くん・・・行っちゃった」

(あ~あ・・・また気分が沈んじゃった・・・しょうがない。かえろっかな・・・)

そう思いながら歩き出した蘭世はふと思い出す。

(あ・・・本返さなきゃいけなかったんだ・・・)

そして蘭世は振り返って図書館に向かって歩き出した。


重い心は晴れないままで蘭世は歩いていく。

(こら、らしくないぞ!蘭世!)

自分自身で励ましながらこつんと頭を小突いた。

そして、何気にふと横を向いた廊下の先に人影を目にした。

蘭世の目に飛び込んできたのは・・・


さっきの女の子が男性の胸に顔を埋めている。

ドクンと嫌な音が胸に走る。

蘭世はゆっくりとその男性に顔を向けた。


(・・・真壁くんっ!!)

ショックのあまり言葉が出ない。

(何・・・どういうこと・・・?)

はっと激しく揺らいだ空気に俊が蘭世の気配に気づいた。

一瞬目が合う。

何も言えない・・・。

蘭世は少し後ずさりしてそのままその場から走り去った。

「江藤っ!!」

俊が蘭世を追いかけようと女を押し戻す。

だが、女生徒は俊の腕をきつく掴んだ。

「行かないで!今だけでいい・・・ここにいて・・」

強いまなざしに俊はひるんで動けなくなった。




+++++



どうやって帰ってきたのかは覚えていない。

我に返った時、蘭世は自分のベッドにうつ伏せになって声を殺して泣いていた。

(あれは何?何だったの?)

わけのわからないまま泣き続けるしかなかった。


「蘭世?」

椎羅がドアの外から声をかける。

「真壁くんが来ているけど・・・」

(今は会いたくない・・・何をどうしたらいいのかわからない)

「・・・いないって言って・・・」

椎羅はため息をついて階下に降りて行った。




+++++



次の日、

ためらいながらも蘭世は学校に向かった。

俊の姿を無意識に探してしまう。

だが、後姿を見かけた途端逃げてしまった。

(逃げたって真壁くんにはきっと気づかれてしまうけど・・・)

蘭世は悲しく笑った。



+++++


授業も一通り終わってみんな帰る準備を始めた。

せめて真壁くんに会う前に帰ってしまおう。

そう思って急いで帰り支度を始めた蘭世にクラスメートが声をかけた。

「蘭世~、お客様~」

(まさか、真壁くんじゃ・・・)

「だ、誰?」

「さぁ?女の子だけど」

蘭世がろうかに出ると、蘭世はハッと息を呑む。

昨日俊と一緒にいた女生徒だった。

「江藤さん、少しお話できないかしら・・・」

蘭世は少しためらったが、黙ってうなずいた。



+++++



二人は屋上に出た。

しばしの沈黙を破ったのは彼女の方だった。

「昨日のこと・・・」

「・・・・!!」

「ごめんなさいね」

「え?」

俯いていた蘭世はその言葉に顔を上げた。

「真壁くん、あなたと追いかけようとしてた。

 ・・・でもあたしが引き留めたの。ここにいてって」

「・・・・・」

「真壁くんが好きなの。あなたのこと知ってるわ。いつも彼のそばにいて。

 でもあきらめきれなかった。好きになってしまったんだもの。昨日、告白したわ」

「告白・・・」

蘭世の顔から血の気が引く。

立っているのがやっと・・・。

「くすくす。そんな死にそうな顔しないでよ。大丈夫よ、はっきりと振られたわ」

「振られた?」

「あなたたちって、四六時中一緒にいる訳じゃないし、ほらカールの髪の女の子も

 よく一緒にいるじゃない?ホントにつきあってるのかどうかもよくわからなかったし、

 あなたになら勝てそうな気もしたし」

勝気な笑みでその女生徒は蘭世を見る。

「だから告白したの。でもふられちゃったわ。あなたのこと聞いてみた・・・」

「・・・」

(真壁くんは・・・何て言ったんだろう・・・)

「あなたはどうなの?」

「え?」

「彼と付き合ってるっていう自覚、あるの?」

「付き合ってるっていうか・・・」

「・・・・」

そういうものさしで考えたことはない。

ただ、俊が好きで俊のそばにいたくて、そしてその気持ちを俊は受け入れてくれた。

人間になったときも、ゾーンを倒したあとも・・・。

「・・・わ、私たちはもっと深いところでつながってるの、そんな簡単な関係じゃないわ!」

(・・・言ってしまった・・・///でも、でも・・・そう信じてるんだもん!)

思いがけない蘭世の強い口調にその女生徒も当の蘭世も驚いた。

「・・・・そう」

「・・・そ、そうよ。だから真壁くんは誰にも渡せないわ!」

今度は蘭世もひるむことなくゆっくりと女生徒の目を見て言った。

「・・・同じようなこと言うのね・・・」

「・・・え?」

「真壁くんにあなたと付き合ってるのかって聞いた。そしたら彼・・・」





+++++ 

俺にはおいつしかいねえし、あいつにも俺しかいねえんだ・・・。

その関係は崩れないの?時間をかければ私だって・・・

無理だ・・・。

すごい自信ね・・・

それだけいろんな壁を乗り越えてきたってことだ・・・

そう・・・

だから、すまねえがあんたの気持ちには答えられない・・・

彼女のこと愛してるのね・・・

・・・。

違うの?・・・

たぶん、そういうことなんだろうな。でも・・・好きとか嫌いとか

愛してる愛してないとか、付き合うとか付き合わないとか・・・

そんな簡単な関係じゃない。そんな簡単に片づけたくないんだ・・・



+++++



「あなたたちの間にどれほどの絆があるのか知らないけど、屈辱だわ。

 私、今まで振られたことなかったのよ」

「ご、ごめんなさい・・・」

「くす・・・なんであなたが謝るのよ・・・まあいわ。あなたのさっきの瞳を見たら

 何も言えなくなっちゃった。ホントは宣戦布告しようと思ったんだけど」

「え!!」

女生徒はふぅと息を吐くといった。

「お幸せに・・・なんて言えるほど私は心広くないからこのまま行くわ。じゃあ」

夕暮れの太陽の光を背にして女生徒はその場を立ち去った。




はあぁぁ。

蘭世は深く息をついた。

「緊張した・・・」

(でも。。。よかった)

タタタと足取り軽く階段を下りていく。

鞄を取りに教室に戻ると教室にはだれもいなかった。

ただ一人を除いては・・・。



「真壁くん!」

窓の外を見ていた俊が振り向いた。

「よぉ」

蘭世の目からハラハラと涙が零れ落ちた。

「や、やだな・・・目にゴミが・・・」

俊は蘭世に近づくと、涙の零れたほほにそっと手を当てた。

蘭世は俊を見つめる。

俊はその瞳にこたえるようにそっと蘭世の体を抱きしめた。

「真壁くん、ありがとう」

「・・・何が?」

「ううん、なんでもない」

「・・・聞かないのか?昨日のこと」

「うん、いいの」

(聞いたもん!)

(聞いたのか・・・)

俊は少し顔が赤くなったのを見られないように、すばやく蘭世の口元にキスを落とすと

くるっと背を向けた。

「帰るぞ。腹減ってんだ。ハンバーガーでも食おうぜ。おごるし」

「うん」

蘭世は涙をパッと拭いて笑顔で答えた。



「・・・それにしても、お前昨日居留守使っただろ。朝も逃げたし」

「え?いや、その・・・」

「おふくろさんもどぎまぎしてるし、俺がわからないとでも思うのか?」

「だってぇ・・・」

二人は寄り添って校門を出ていく。

夕焼けに照らされてできた二人の影が長く伸びていた。



<END>


+あとがき+

修正したかったんだけど
けっきょくあんまりできなかった・・・。
気持ちを読めるとあまり語らなくてもわかってもらえるからいいよね。
一方的ですが・・・^^;
















拍手[23回]

心配

俊×蘭世  高校時代





ピーポー・・・ピーポー・・・

「ん?救急車か?誰か倒れでもしたのか?」

「誰かしら・・・」

「どうしたんだ?」



ある日の昼休み、突然の救急車の到着に教室内がざわめいた。

「・・・う・・ん?」

机に伏せて転寝していた俊も周りのざわつきにさすがに目をさまし、

辺りを見回した。

「何だ?」

「救急車が来てるの。誰が運ばれるのかしらね?」

近くにいた女生徒が俊に声をかけた。

「へえ…学校に救急車なんて珍しいな」

俊も窓から下を覗いてみた。

人だかりでよくは見えなかったが、かすかに蘭世の気配をその中から感じた。

「!!江藤?」

俊の背中に嫌な予感が走る。

そのときだった。

「あっ!いた!オイ!真壁!」

俊が振り向いた先にいたのは日野克だった。

「江藤が救急車で運ばれたぞ」

「っ!」

予感の的中に俊は一瞬身震いして血の気が引いた。

「一緒にいた女をかばって、階段から落ちたらしい。今救急車で…」

「・・・!」

日野の言葉を最後まで聞き終わらないうちに俊は走り出した。

「お、おい真壁!お前病院わかってんのかーー?でも意識ははっきりしてたみたい・・・って

 聞いちゃいねえし・・・・」

と、俊の態度に呆れながらも珍しく焦る俊の姿を目にしてフっとほほえんだ。

「・・・うん、何かいいもん見れたかも」

そう言い残すと日野はゆっくりと自分の教室に戻った。



+++++  +++++  +++++



(・・・畜生・・・。

 俺が目を開けてれば、落ちるのだって止めれたかもしれねえのに・・・)

廊下を走りながら俊は後悔していた。

(まああいつは死ぬことはないにしろ・・・何かあったら・・・)

校舎の裏まで走り、誰もいないことを確かめると、俊は蘭世の方向を確かめた。

(あそこか・・・)

俊は蘭世のいる病院を感じ取るとテレポートした。



+++++


俊が病院に急いで入っていくと診察室の前で養護の宇田先生が腕を組んで立っていた。

「あっ、先生」

「あっ、君はよく江藤さんと一緒にいる男の子ね。真壁くんだっけ?」

「・・・っ!?」

「何で知ってんだ?って顔ね。あなたたち有名だもの。

生徒会に反抗してまでボクシング部を作ったりして話題になってたし。

二人で歩く姿よく見かけるもの。目立つわよ」

くすっと笑って宇田先生が言った。

「はぁ・・・」

俊は照れた顔を隠すようにふっと横を向いた。

「で、江藤は?」

「頭を打ったみたいだから一応今、検査をしてるけど、命に別状はないと思うわ。

 意識もはっきりしてたし。ただ、足を骨折してるわ。しばらくは少し不自由になるわね」

「そうですか・・・」

ふぅと俊は息を漏らした。

(よかった・・・それぐらいならすぐ治るな・・・)

「ふふ。安心した?さっきの血相はすごかったわよ。よっぽど大事なのね」

「・・・」

俊はまた居心地が悪くなって赤らめたままの顔を逸らした。



そのとき、診察室からベッドに乗せられた蘭世が出てきた。

「江藤!」

「あっ、真壁くん、来てくれたの?えへへ、またドジしてしまいまして・・・」

蘭世は苦笑いをしながら答えた。

蘭世のいつもと変わりない笑顔にホッと息をついて俊は口元を緩めた。

「・・・まったくだ。気をつけろよ」

そういって蘭世の肩に手を置くと蘭世はうんと微笑んだ。

「気をつけろよじゃなくて、心配しただろ!でしょ。彼女の前では素直じゃないのね」

先生は俊をひじでつついた。

「・・・なっ///!」

「えっ?」

蘭世はぽっと赤くなった。

もちろん俊はまっかっかだ。

やりとりを見ていた看護師さんがにこにこ笑いながら言った。

「念のためとりあえずは2,3日は入院していただきますけど、まあ今のところ特に

問題もないようですし、すぐ退院できると思いますよ」

「お世話かけます。」

宇田先生が頭を下げると俊も一緒にお辞儀をする。

そのまま蘭世は病室に運ばれていった。


+++++


病室について一息つくと宇田先生は言った。

「大丈夫そうね。じゃあ、悪いけどあとは君にお願いできるかしら。

 もう今日は授業もないでしょ?彼女の自宅にはこっちから電話いれておくわ」

「あ、はい。ご迷惑かけました」

俊はぺこりと頭を下げるとアハハと宇田先生は笑った。

「すっかり旦那様ね」

「は?ち、ちが・・・///」

蘭世も赤い顔をして目をそらしている。

「はいはい。二人の絆はわかりました。じゃああとよろしくね」

そういってウィンクすると宇田先生は病室を出て行った。


「ったく、何なんだ、あの先公は」

俊はゴホンと咳払いをしてぼやいた。

そういって蘭世のベッドの端に腰掛ける。

「ふふ、宇田先生、みんなの人気者なのよ。楽しいし、きれいだし」

「人をおちょくってるだけじゃねえか」

くすくすと蘭世が笑うのを見て俊は言った。

「それよりお前大丈夫なのかよ」

「うん、冴島さんがめまいおこしちゃってね、支えようとしたら代わりに私が

 落ちちゃったの」

テヘヘと頭をかきながら蘭世は笑った。

「まあ、ほら、私死なないし」

Vサインをして蘭世はにっこりしたが、俊はそれを見てふてくされた。

「ばーか、お前なあ‥・俺がどれだけ心配・・・///」

素の顔に戻りつつあった俊の顔がまた赤らんだ。

蘭世は一瞬きょとんとしたが、すぐさま頬に赤みがさした。

「真壁くん、心配してくれたんだ・・・」

「いや、その・・・まあお前は死なないとはわかってたし、それほどでもねえけど・・・」

照れてしどろもどろになる俊を見て蘭世は幸せそうに微笑んだ。

「・・・真壁くん、ありがとう。・・・心配かけてごめんね」

俊も蘭世の素直なお礼の言葉を受けると

「ああ・・・」

と優しく微笑んだ。

「でも・・・足が痛い・・・」

蘭世はそういうと眉をしかめる。

「真壁くんに治してもらえばすぐなんだけどね~。人間じゃそうもいかないし。

 しばらくは松葉杖かな~トホホ・・・」

「まあ、治せない代わりにちゃんと足になってやるよ」

「ほんと~!?」

「仕方ねえし」

「わ~い☆嬉しいな~」

「その代わり、もう無茶するなよ」

そういうと俊はそっと蘭世の髪を撫でると顔をちかづけ

軽くキスをした。





そのとき。

「お姉ちゃん!」

「あ”っ!!」

鈴世がドアを開けて駆け込んできて、蘭世と俊は慌てて離れた。

「あれ・・・エヘヘ早く来すぎちゃったかな?」

鈴世が苦笑しながら頭をかいた。

「蘭世~~~!!」

望里と椎羅も入ってくると明後日の方を向いた3人。

「何だ?どうした?3人とも」

きょとんとして望里が聞いた。

「いや?べっつに~」

鈴世がにっこり微笑んで蘭世と俊に目配せしながら答えた。

真っ赤なふたりと首を傾げるふたり、その間ににこにこしている鈴世の姿があった。



<END>


+あとがき+

魔界人が入院したら
いろいろ問題が起こりそうですけどね^^;













拍手[24回]

きゅーぴっど

俊×蘭世 高校時代




放課後、体育委員の俊は体育祭に使ったリレーのバトンを体育館に運ぼうと向かっていた。

その体育館の入り口に見慣れた後姿が一人。。。

(何やってんだ?あいつ…)

蘭世は俊に見られているとも知らず、体育館の中を覗いたりまた首をひっこめたり

腕を組んで何やら思案したと思えばまた中を覗いてみたり。

「おい」

「わっ!!ま、真壁くん。。。お、脅かさないでよ」

急に声をかけられた蘭世はその場に飛び上って毛を逆立てた。

「お前が不審すぎる…さっきから何やってんだこんなとこで。誰かいるのか?」

俊はひょいと体育館の中を覗くと、中にはバスケ部の男子が3人、

ボールをうまくあやつりながら立ち話をしていた。

「あいつらに何か用か?」

「あ、ううん、なんでもないの。真壁くんこそ体育館に何の用?」

「俺は体育委員。だから体育館に用があるのが普通。

 用がないのはお前の方だろうが」

「いや、別になにも…」

「何だよ、怪しいな」

「怪しいだなんて、誤解だってば。私じゃないのよ。楓ちゃんが…あ。っやば」

っと蘭世は思わず両手で口を塞いだ。

「小塚?」

「いや~・・・その…どうせ真壁くんには読まれちゃうか…」

「?」

「内緒にしてね。楓ちゃんが、あのバスケ部のキャプテンの人のこと好きらしいの。

 でね、彼女がいるかどうかもわかんないし、聞いてきてとか言われちゃって…」

「なるほど。またおせっかいを焼いて、張り切ってきたわけだ」

「う。。おせっかいじゃないもん!どうしてもって言われちゃったら断れないし。

 で、ここまで来たのはいいんだけど、私、よく考えたらあの人の名前も知らないし、

 なかなか一人にもならないし、ちょっとここで待ってたんだけどね…あはは」

「あほらし。そんなこったろうと思ったよ」

「だって…」


+++++ 


そこにふっとユニフォーム番号4番をつけた男性が体育館の入口まで近づいてきた。

「あれ?よぉ。真壁。何してんの?ここで」

「あ…いや、ちょっとな」

(ん…?真壁とな?)

蘭世はきょとんとして俊とその男子を見比べていた。

「ん?なんだ彼女と一緒か。逢引するならもっと人のいないとこでしろよ。

 こんな入口でいちゃいちゃしねえで」

「ば、バカヤロ。!!!そんなんじゃねえよ」

「ははっ、じゃあな」

とその男子はくるくるとボールを人差し指の先で回しながら体育館を出て行った。

「ったく…お前のせいで、俺まで怪しまれたじゃねえか:

「なんで私のせいなのよ。っていうか真壁くん!!」

蘭世は思わず俊の胸倉にしがみついた。

「な、なんだよ!」

「真壁くん、あの人と知り合いなの!?あの人、真壁って…」

「ああ。高杉。部活の部長会議でよく席が隣同士になるんだ」

「何よー!何で早く言ってくれないわけ?」

にたっと蘭世は笑った。

「聞かれてねえし」

「んもう!真壁くんがお友達なら話は早いじゃないの!ね、真壁くん、

 彼女がいるのかどうか聞いてきて!お願い!」

「知るか」

「お願いよ~真壁くん!私を助けると思って」

「お前は甘やかすと調子に乗るからな。自分で何とかしろよ。

 あ、部活サボるなよ。じゃな」



「あ、真壁くん!もう!イジワル…」

さっさと歩いていく俊をふくれっ面でにらみながら蘭世は考えていた。

「高杉くんかぁ。でも名前はわかったし、真壁くんの友達ならスムーズに行くかも☆。

 よーし。楓ちゃん待っててね!」

蘭世はギュッと両こぶしを握り締めて奮起した。



+++++  +++++  +++++


その日の夕方、

「蘭世のヤツ、結局部室に顔出さなかったわね。あんのやろ~。

 俊、あんな子ほっといて帰りましょ」

曜子がいつものように悪態をつく。

「・・・」

(あいつまだ体育館でねばってんじゃねえだろうな)

するとそのとき、隣で曜子の叱声が飛んでビクっとなる。

「あーーっ!!蘭世!あんなとこに!コラーー!!蘭世!

 マネージャーが部活に顔出さないってどういうことよ!」

「あっ」

蘭世が楓と一緒に中庭のベンチで話し込んでいた。

「ごめんなさいい」

「あ、真壁くん、ごめんね。私が蘭世を引き留めてたの。怒らないで。

 じゃあ蘭世ありがとう。そういうことで。また明日ね」

「あ、楓ちゃん、がんばろ~ね~」

楓ににこやかに手を振る蘭世の髪を曜子が後ろから引っ張った。

「な~にががんばろ~ね~だ!ったく!ね、俊☆こんな子ほっときましょ」

「ごめんなさいってばぁ。明日はちゃんと行くから」

ギャーギャーまくしたてる曜子に蘭世は耳を押さえながらも謝っている。

「あ、お嬢さん、お疲れ様でした。お迎えに上がりやした!」

曜子の使用人の惣だ。

どうやら曜子を迎えに来たらしい。

「何よ。いいわよ。私は俊と帰るんだから!」

「いや、そういうわけには。。。来客がお見えでして、

 親分からお嬢さんを早く連れて帰ってこいとのお達しで…」

惣はそう言うと曜子を肩に抱き上げそのまま車に移動する。

「えー!?やだ!ちょっと俊~!」

そうやって曜子はあわただしく連れられて行った。

「はぁ…あわただしい人…真壁くん、今日ごめんね。怒ってる?」

「別に。どうせ高杉のことでくだらん作戦でもたててたんだろ?」

「あーくだらんって言ったー!この作戦はばっちり☆ふふふ☆見ててよ~真壁くん」

俊は蘭世を呆れ顔で見る。しかし一生懸命意気込む蘭世の姿は

いつだって輝いてみえるから不思議だ。

「しょうがねえな。明日はちゃんと部活も顔出せよ」

そういうと蘭世は一段と顔を輝かせて「うん!」とほほ笑んだ。



+++++  +++++  +++++


数日後、

今日は部長会議のため俊は会議後、一人で校門に向かって歩いていた。

そのとき、背後から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

「真壁~」

振り返ると例の高杉だった。

「なんだ。高杉か。」

「よ、お疲れ。それにしてもお前、ホントかわいげねえな。マジで1年か?」

「悪かったな」

「くくく、おもしれえヤツ。相変わらずぶっきらぼうだし。彼女に愛想つかされるぜ」

「ほっとけ」

「でもいいよな。お前はちゃんとした彼女がいて。今日は一緒じゃねえのか」

「まあ。…そんなちゃんとした彼女に見えるか?」

自分では彼女だからとか彼女じゃないからと意識したことがない。

いつのまにか隣にいるのが当然になっていただけで。

「そりゃそうだろ。いつも一緒にいるしさ。なんつーの?入り込めない雰囲気?

 まああの眉毛の子もいるけどな。

 まさかそっちなわけじゃねえだろ?」

「ん…まぁ…///」

なんとなく彼女を認めてしまうことが照れくさい。

否定するつもりもないが、自分からそんなこと人に言ったこともないし。

「それはそうとさ」

高杉は俊の照れなど全く気付いていなかったようでちょっと俯きながら話し出した。

「折り入って相談があるんだけど…」

「俺に?」

「ああ、実はさ。。。お前の彼女、よく小塚さんと一緒にいるじゃん?

 あれって知り合い?」

「小塚?ああ…中学の同級」

「は?同級?何お前ら年ごまかしてんの?」

「うるさい、ごまかしてんじゃねえよ。ちょっと事情あり」

「どうりで初々しくないわけだ」

「うるせぇ」

「じゃあ、タメならなおさら好都合だ」

そういうと高杉はニカッと笑った。

「ん?」

「小塚さんって、彼氏とかいんのかな?」

「・・・いや、いないと思うが…何で?」

「お前、そこまで言わせるか?・・・

 ・・・あの子いいじゃん。いっつも花壇に水やってんだよ。なんか気になっててさ。

 そしたらよく一緒にいる女子はなんとお前の女!俺ってついてるよね」

「へぇ・・・。

 ・・・ついてるかどうかは知らねえけど、まあいいんじゃねえの?

 話しかけてみれば?(っつーか両想いってヤツだろ、これ)」

俊はなんとなくにやけてしまいそうな口元を我慢し、ポーカーフェイスを保つ。

パっと顔を輝かせる蘭世の様子が目に浮かんで、フッと笑みが零れた。

しかし、当の本人は真っ赤になって動揺する。

「お、お前、自分が彼女持ちだからって簡単に言うなよ~!」

「そうか?案外うまくいくかもしんねえぜ。(だって両思いってヤツだし)」

「何で?何で?」

高杉は縋り付くように俊の胸ぐらをつかんでくる。

「な、なんだよ」

「何でそこまで言い切れるんだよ!」

(なんか・・・江藤みてえ…)

高杉の言動がどこか蘭世を彷彿させて俊は親しみを覚えた。

そしてそっと心の中で応援の言葉を投げかけた。

「俺に聞くより、本人に聞くのが一番かと思ってさ。んじゃがんばれよ」

じゃあなと俊は手を掲げてその場を後にした。

「あ、おい真壁ー・・・」

高杉はしばらく立ち尽くして考え込んでいたが、よしっと気合を入れなおして

校舎の方に舞い戻った。



帰路を歩きながら俊は蘭世に今すぐ伝えたいと思った。

飛び上って喜ぶ姿が簡単に想像できる。

その姿を思い浮かべると俊の気持ちも浮足立った。

今まで人の恋路なんて全く興味がなかったけれど、

人が幸せになっていくのを見守るのも悪いことじゃないなと

そう思うのだった。

ふいに口笛を吹きだす自分にハッとしながらも

俊はそれをやめなかった。



+++++   +++++   +++++



次の日の朝。

「真壁くん、おはよう」

廊下で俊を見かけた蘭世は走り寄って声をかけた。

「オス」

にやりと笑って、俊は蘭世を見た。

「ん?なあに?今日はなんだか楽しそうね。何かいいことでもあったの?」

「いや?お前の顔が面白い」

「な、なにそれ!ひどい!」

バシバシと蘭世が俊をぶつのを俊は手で止めながら言った。

「痛えな。冗談だよ。近いうち、きっとうれしいことあるぜ。たぶんお前にも」

「うれしいこと?何?何?何があるの?」

「・・・言わねえ」

俊は含み笑いをしながら答える。

「何でよ。そこまで言うんだったら教えてよ~。気になるでしょ」

「・・・あっ!!」

「え?何?」

「・・・じゃあ小塚に聞くんだな」

そういうと俊はあれといって顎で中庭を指示した。

「え?楓ちゃん?」

隣には高杉の姿があり、二人で花壇のそばに座って楽しそうに話し込んでいた。

「あ~~!高杉くん!?どうなってんの?あれ。いつのまに・・・?

でも昨日はそんなこと言ってなかったのに・・・」

腕を組んで蘭世は首を傾げている。

「くっくっく」

隣で笑う俊に蘭世は詰め寄る。

「何?真壁くん何か知ってるの?何よもう!教えてよ」

そういって俊の腕をグイグイ引っ張る。

「別に何もねえよ。ただ、お前と小塚が友達で、俺と高杉が友達だった。

あ~よかったなってことだよ」

「はぁ?わけわかんない。もう!真壁くん自分だけわかった顔してずるい!」

廊下できゃあきゃあやり取りしている二人を花壇の二人が見上げていた。

「あの二人に感謝ね」

「ああ。全く」

高杉と楓はにこっと微笑みあいながらこれからの時間に気持ちを膨らませていた。




<END>


+あとがき+

俊のキャラが途中なんかおかしかったので
移行に再録するにあたって結構端折りました^^;
二人の存在そのものが周りを幸せにする…
理想的な2人デス。













拍手[14回]

花火

高校時代

俊×蘭世







「え?花火大会?」

蘭世はきょとんとして答えた。



「そう。知らない?あけぼの川の河川敷で毎年あるの」

そう答えたのは聖ポーリア学園の生徒会長でもあり、蘭世の友人でもある

河合ゆりえだった。



「知らなかった…あはは、私、そういう情報に疎くって…(笑)」

「うふふ。私も今年は克と行くことになったの。去年までは行けなかったけど」

河合ゆりえと日野克が学園内で公認のカップルになった話題は

まだ記憶に新しい。

少し頬を赤らめながらそれでもどこか嬉しそうに見えて

蘭世もニコリとほほ笑んだ。

「そうなんだ~。ほんとよかったね。ゆりえさんと日野君、

ラブラブだもんね~w」

「もう蘭世さんったら・・・///」

ボクシング部創設の一連の出来事以来友人関係になった蘭世とゆりえは

時々こうして昼食をともにしながらコイバナに勤しんでいる。

「蘭世さんも真壁くんと行ってらっしゃいよ。規模もすごく大きいし綺麗よ」

「う~ん…真壁くん行ってくれるかなぁ…いつあるの?」

「来週の土曜日」

「あぁ…土曜日はたぶん真壁くんバイトだな~…」

ガクンと頭を項垂れさせると蘭世はそうつぶやいた。

「言うだけ言ってみたら?せっかくだし」

「…そうだよね…頼んでみたらしょうがねえな~といかいいながら

休んでくれるかもしれないし!」

「そうそう。がんばって☆」

「うん!がんばってみる!ゆりえさん、ありがとー」

そういって二人は手を取り合って淡い期待に胸を焦がした。


+++++  +++++ +++++



(がんばってみるといったものの…)

部活も終わり、帰る準備をしながら蘭世は俊が部室から出てくるのを待っていた。

(花火大会なんかでバイトを休んでくれるとは思えないんだけど…)

生活費を自分でかせぐ俊にとって、バイトとはいえ、それは貴重な労働時間だ。

そう思うと下手に頼みづらい。

部室の壁にもたれながら宙をぼんやる眺めていると

俊が部室から出てきた。

「…何難しい顔してんだ?」

「あ、ま、真壁くん。ははは、お疲れ様~」

「おぅ。帰るか。…腹減った…うちでなんか作ってくれよ」

今日は俊のバイトも休み。

バイトのない日は、こうやって俊のアパートによってご飯を共にすることもしばしば。

「あ、そうね…何がいい?」

二人は家に向かって帰り始めた。

今日はうるさい曜子の姿はない。

学校の交換留学生に選ばれ、オーストラリアに2週間の短期留学に出かけていた。

(言ってみようかなぁ…)

蘭世がそぉっと俊の方を見た。

すると俊もチラリとこちらを見る。

(ドキーーーっ!!)

「なんだよ。さっきから…言いたいことがあるなら言え。でないと読むぞ」

「あっ!また読んでるの!?ひどーい!!」

ふんっ!と蘭世はそっぽを向いた。

「お前があんまり大きい声で考えるから聞こえちまうって言ってんだろ!何だよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・来週の土曜日ってバイトだよね」

「来週の土曜?あ~そうだな…コンビニだ」

「そうよね~休むなんてわけには…」

「う~ん…店長だけになっちまうし、難しいけど。。。何かあるのか?

なんなら聞いてみるけど」

「あっ!いい!いい!何でもないの。うちで食事でもしないかあ~?とかって

思っただけ。また次の時にでも」

「ふ~ん。いいのか?」

「ぜんっぜん…こっちはいつでもいいんだし」

(やっぱりいいや。真壁くんにそんなことで負担かけたくないもんね)

蘭世はふぅと小さく息をつくと心にそっと蓋をした。



+++++  +++++ +++++



そして花火大会当日…。


「じゃあ、行ってきま~す」

「遅くならないうちに帰るのよ」

「はあい」

階下で鈴世と椎羅の声がする。

蘭世が下に降りていくと鈴世はちょうど出かけるところだった。

「何?鈴世出かけるの?…ってまさか…花火?」

「そうだよ。なるみちゃんと行くんだwお姉ちゃんは?お兄ちゃんと行かないの?」

「うっ…!真壁くんはねえ、バイトなの!お仕事なの!

ちゃらちゃら遊んでられないのよ!」

「無理しちゃってぇ…頼んで休んでもらえばよかったのに」

「いいのよ!花火なんていつでも見れるんだから!真壁くんに休ませるわけにはいかないの!

 さっさと行きなさいよ!なるみちゃんが待ってんでしょー!」

「はいはい。行ってきまーす。お姉ちゃんりんご飴買ってきてあげるよ。

 好きでしょ?じゃあね」

「・・・もう!鈴世のヤツ~。生意気なんだから!」

「蘭世ったら…ほんと真壁くんにお願いすればよかったじゃないの。

 行きたかったんでしょ?」

横で聞いていた椎羅が呆れ顔で言った。

「だって…真壁くんがんばって仕事してるのに、迷惑かけたくなかったんだもん…」

「蘭世…あんたって子は…」

椎羅は苦笑しながら蘭世の肩に手を置いた。

「そうね…じゃあまた真壁くんにお弁当差入れしなきゃね。

 お腹すかせて帰ってくるんでしょ?今日はお母さんも手伝ってあげるわ」

「ほんと?よぉ~っし!じゃあ今日は真壁くんの好きなハンバーグ入れよ~っと!」

そう言うと蘭世は早速キッチンに駆け込んでいった。

椎羅もにっこり微笑んで蘭世の後に続いた。



+++++  +++++  +++++



一方、俊の働くコンビニでは花火大会帰りの人でごった返して客の波も

ようやく引いてきていた。。

バイト先についていつものシフトの人数より多かったことで

俊は今日が花火大会ということを知った。

ホッと息をついたのもつかの間、新しい客が入ってくる。

いらっしゃいませと声をかけようよ自動ドアの方に顔を向けると

見知った顔がそこにあった。

「あっれ?真壁~」

日野とゆりえだった。

「よぉ」

「お前のバイト先ここだったの?っていうかお前、今日花火行かなかったのか?」

日野が訪ねた。

「行くも行かないも、さっき花火があったの知ったとこだよ」

「えっ!?」

日野とゆりえは顔を見合わせた。

「でも私、蘭世さんに今日の花火のこと前に話したけど…

 真壁くんを誘うって言ってたからてっきり…彼女何か言ってなかった?」

ゆりえは首をかしげていった。

「江藤に?それいつの話だ?」

「一週間ほど前かしら」

「…あ…!」

(…あの時か…)

何気ない会話をふと思い出す。

「まあ江藤のことだ。お前のために我慢したんじゃねえの?早く帰ってやれよ。んじゃな」

「また明日学校でね」

二人は飲み物代をレジで支払うと店を出て行った。

(…あのバカ…一言言えばいいものを…)

「あっ!お兄ちゃん!」

「こんばんわ」

今度は鈴世となるみだった。

「鈴世…お前らも花火か?」

「何だ。お兄ちゃん知ってたんだ。今日の花火のこと」

「あぁ…さっき知った」

「あっやっぱり?だろうと思った。なんかお姉ちゃん、家でしょげてたからさ。

お兄ちゃんには休ませられないとか言っちゃって」

「アイツ…気使いやがって」

「僕、八つ当たりされちゃったよ。あ、そうだ、お姉ちゃんにりんご飴買ったんだ。

これ、お兄ちゃんからあげてよ。その方がお姉ちゃん喜ぶと思う」

ウィンクしながら鈴世は俊にりんご飴を渡した。

「じゃあ早く帰ってあげてね」

そういうと鈴世となるみも帰っていった。

「・・・・」



+++++  +++++  +++++


客の足もまばらになってきて、そろそろ俊も上がる時間になってきた。

(あいつ…落ち込んでそうだな…)

俊はふぅとため息を漏らしたとき、後ろで店長がぶっと声を殺して笑っていた。

「さっきの友達との会話聞いてしまってね。今日はもう人も少なってきたし

上がっていいよ。」

「あ、いえ大丈夫です。もう少しですし、時間までいます」

「でも早く行きたいと顔に書いてあるよ。そのりんご飴も」

店長は俊のそばに置かれているりんご飴に目をやった。

(/////)

ぼっと赤くなる俊。

「あっ、そうだ、こいつも持っていくといい」

といって店長は花火セットを手に取ると俊に渡した。

「え、いえ、いただけません!」

「私から彼女へのプレゼントだよ。君を大事な日に働かせてしまったお詫びだ」

そういうと店長は人の好さげな笑顔で軽くウィンクした。

「…すみません…ありがとうございます。じゃあこれで…失礼します」

ペコリと頭を下げて俊はその場を後にした。

夜風が妙に心地よく感じた。


+++++  +++++  +++++


「たっだいま~」

江藤家には鈴世が帰ってきた。

「すっごくきれいだったよ、花火!お姉ちゃんも来年は絶対行きなよ」

「大きなお世話ですー。あ、それよりも鈴世、りんご飴は買ってきてくれたの?」

「あっ…あ~りんご飴ね…知り合いに会ったからその人にあげちゃった。ごめんごめん」

「えー!鈴世ってばひどーい!ばかーー」

もういいもん!と蘭世は部屋に戻ってしまった。

「蘭世に買ってこないなんて…鈴世にしては珍しいわね。

 よっぽど大切な人にでも会ったの?」

椎羅は鈴世に尋ねた。

「ん~、まあね。その人にあげた方がお姉ちゃんのためだと思ってさ」

鈴世はニコっと微笑んで答えるのを見て椎羅と望里は首をかしげながら顔を見合わせた。


+++++  +++++ +++++

「何よ、鈴世ったら、鈴世ったら!どうせ実の姉より彼女や友達の方が

 大事なんだから。いいもん!真壁くんもそろそとバイト終わる時間だし、

 お弁当持っていこうっと」

と用意を始めたとき、蘭世の携帯が鳴った。

「俺」

「ま、真壁くん?どしたの?バイト終わった?」

「ああ、ちょっと早めに終わらせてもらった。お前、これからちょっと出れるか?」

「え?う、うん!今からお弁当持っていこうと思ってたし」

俊からの電話もこんなお誘いも珍しい。

蘭世はほっこり心が温かくなって微笑んだ。

「じゃあ、お前んちの前にいるから出てこいよ」

「え?うちの前?」

「ああ、じゃあ」

プッと携帯が切れた。

(何?何かあったのかな…?)

「ちょっと出かけてきまーす」

蘭世はタタタと階段を駆け下りてお弁当を引っ掴むと玄関を飛び出した。

「あ、ちょっと蘭世!?」

「大丈夫だよ。お母さん。お兄ちゃんだよ」

「え?でもまだいつもより早くない?」

「今日は特別」

鈴世はそういうとにこっと意味深に微笑んだ。


+++++  +++++  +++++

「真壁くん!」

「よぉ」

「どうしたの?何かあった?」

「・・・」

(どうしたのかな…)

蘭世の問いかけにも俊は無言のままで蘭世は不安になる。

「ちょっと歩こうぜ」

「・・・うん」

すると俊は蘭世の手を取って歩き出した。

「!?/////」

(ま、真壁くんが…手を…つないでくれた…)

蘭世に緊張と動揺が走る。

それでも俊のひんやりした手が心地よくてドキドキしながらも嬉しさがこみあげてくる。

俊はほんのり顔を赤らめている蘭世を横目で見ると口元をほころばせた。



(公園?)

俊が蘭世を連れていた先は公園だった。

「さっ、始めるか」

「え!?始める??な、何を…?」

妙に真っ赤になる蘭世につられて俊も慌てる。

「ば、何考えてんだ。花火だよ、花火!」

「へ?花火?」

「そ。お前、この前ホントは今日の花火誘おうとしたんだろ?」

「え!?な、なぜそれを…」

「はっきり言えばよかったのに。早く言えば調整だってできたし。

 妙な気使いやがって」

「だ、だって真壁くん忙しそうだったし、そんなことで休むの好きじゃないでしょ?」

「時と場合によるよ。まあいいや。せっかく持ってきたんだからやろうぜ」

そういうと、俊はしゃがみこんで花火の袋をガサガサと開けだした。

「真壁くん…ありがとう!」

蘭世は俊の横に座ると、一本の花火を取り出した。




「でも花火は楽しいな~。真壁くんが一緒だとさらに楽しい!」

「そうか?」

「そうだよ。鈴世なんか自分だけなるみちゃんと花火行っちゃって。

 お土産買ってくるって言ったくせにそれすら人にあげたっていうのよ!全くもう!」

「ほぉ…お土産…ね」

「わ、見てみて真壁くん!これすっごくきれ~い!」

「うわ、お前、花火の先こっち向けるなよ!危ねえな」

「あ、ごめん、つい。あはは」

「あははじゃねえ。…ったくガキなんだから」

「うっ…ど、どうせいつまでもガキですよ~だ」

「フッ…さ、あとは線香花火だけだな。ほらつけてやるから落とすなよ」

「うん、ありがとう」



線香花火のほのかな明かりだけが辺りを照らした。

パチパチと火花が弾ける音が静かに響く。

「きれい…ね、真壁くん」

「ああ…」

俊は蘭世を見た。蘭世はにこにこして線香花火の先を見つめていた。

「…江藤…悪かったな、今日のこと気づいてやれなくて…」

「え?ぜんっぜん。いいのいいの。花火だって毎年あるんだし、いつだっていけるもん。

 それに…」

「…」

「こうやって真壁くんが一緒に花火をしてくれることの方が嬉しい」

蘭世は俊の方を見てにっこりほほ笑んだ。

花火のあかりにほんのり照らされた蘭世は綺麗だった。

「江藤…」

(やっぱこいつには敵わねえ…かな)

俊はそっと蘭世の頬に手を伸ばした。

(ドキっ)

蘭世の鼓動が早まる。

(真壁くん・・・)




ポトッ

線香花火の先が地面に吸い寄せられるように落ちて、辺りは暗闇に戻る。

その瞬間、俊は蘭世の口元にそっとキスを落とした。

静かな風だけが二人をやさしく包んでいた。

唇が離れていくのを寂しく感じながら蘭世はゆっくりと瞳を開いていく。

するといつもはあまりお見かけしない優しい俊の瞳がそこにあった。

フッと俊は微笑むとさっと蘭世の髪を一撫でした。

「さ、帰るか。親父さんたちもあんまり遅いと心配するからな」

「真壁くんとだったら大丈夫だよ」

「…////…煽るなよ…」

「え?」

「何でもねー」

「真壁くん、今日はありがとう。あ、そうだ。これ今日のお夜食。ハンバーグ入りよ」

蘭世は青い布で包んだお弁当箱を差し出した。

「お、サンキュ。実は超腹ペコ」

「クスクス…よかった」

「じゃあ、お前にはこれ」

俊は透明の袋に入った赤色の飴を蘭世に渡した。

「あ、りんご飴!どうしたの?これ!私大好きなの!!」

「天使がお前に届けろってコンビニに置いてったんだよ」

「天使?」

「そ、かわいらしい天使だよ。礼言っとけよ」

「…あ…鈴世…」

ニッと俊は微笑んだ。

蘭世も肩をすくませて笑った。

帰途につく二人はどちらからともなく手が繋がる。

花火の音がまだ遠くから聞こえてきそうなそんな夜だった。




+ あとがき +

今回、移行にあたって少し修正しました。
サイト立ち上げ時期の作品なんですが
読んでて恥ずかしすぎた…
あんまり変わってないけど^^;





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