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花火

高校時代

俊×蘭世







「え?花火大会?」

蘭世はきょとんとして答えた。



「そう。知らない?あけぼの川の河川敷で毎年あるの」

そう答えたのは聖ポーリア学園の生徒会長でもあり、蘭世の友人でもある

河合ゆりえだった。



「知らなかった…あはは、私、そういう情報に疎くって…(笑)」

「うふふ。私も今年は克と行くことになったの。去年までは行けなかったけど」

河合ゆりえと日野克が学園内で公認のカップルになった話題は

まだ記憶に新しい。

少し頬を赤らめながらそれでもどこか嬉しそうに見えて

蘭世もニコリとほほ笑んだ。

「そうなんだ~。ほんとよかったね。ゆりえさんと日野君、

ラブラブだもんね~w」

「もう蘭世さんったら・・・///」

ボクシング部創設の一連の出来事以来友人関係になった蘭世とゆりえは

時々こうして昼食をともにしながらコイバナに勤しんでいる。

「蘭世さんも真壁くんと行ってらっしゃいよ。規模もすごく大きいし綺麗よ」

「う~ん…真壁くん行ってくれるかなぁ…いつあるの?」

「来週の土曜日」

「あぁ…土曜日はたぶん真壁くんバイトだな~…」

ガクンと頭を項垂れさせると蘭世はそうつぶやいた。

「言うだけ言ってみたら?せっかくだし」

「…そうだよね…頼んでみたらしょうがねえな~といかいいながら

休んでくれるかもしれないし!」

「そうそう。がんばって☆」

「うん!がんばってみる!ゆりえさん、ありがとー」

そういって二人は手を取り合って淡い期待に胸を焦がした。


+++++  +++++ +++++



(がんばってみるといったものの…)

部活も終わり、帰る準備をしながら蘭世は俊が部室から出てくるのを待っていた。

(花火大会なんかでバイトを休んでくれるとは思えないんだけど…)

生活費を自分でかせぐ俊にとって、バイトとはいえ、それは貴重な労働時間だ。

そう思うと下手に頼みづらい。

部室の壁にもたれながら宙をぼんやる眺めていると

俊が部室から出てきた。

「…何難しい顔してんだ?」

「あ、ま、真壁くん。ははは、お疲れ様~」

「おぅ。帰るか。…腹減った…うちでなんか作ってくれよ」

今日は俊のバイトも休み。

バイトのない日は、こうやって俊のアパートによってご飯を共にすることもしばしば。

「あ、そうね…何がいい?」

二人は家に向かって帰り始めた。

今日はうるさい曜子の姿はない。

学校の交換留学生に選ばれ、オーストラリアに2週間の短期留学に出かけていた。

(言ってみようかなぁ…)

蘭世がそぉっと俊の方を見た。

すると俊もチラリとこちらを見る。

(ドキーーーっ!!)

「なんだよ。さっきから…言いたいことがあるなら言え。でないと読むぞ」

「あっ!また読んでるの!?ひどーい!!」

ふんっ!と蘭世はそっぽを向いた。

「お前があんまり大きい声で考えるから聞こえちまうって言ってんだろ!何だよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・来週の土曜日ってバイトだよね」

「来週の土曜?あ~そうだな…コンビニだ」

「そうよね~休むなんてわけには…」

「う~ん…店長だけになっちまうし、難しいけど。。。何かあるのか?

なんなら聞いてみるけど」

「あっ!いい!いい!何でもないの。うちで食事でもしないかあ~?とかって

思っただけ。また次の時にでも」

「ふ~ん。いいのか?」

「ぜんっぜん…こっちはいつでもいいんだし」

(やっぱりいいや。真壁くんにそんなことで負担かけたくないもんね)

蘭世はふぅと小さく息をつくと心にそっと蓋をした。



+++++  +++++ +++++



そして花火大会当日…。


「じゃあ、行ってきま~す」

「遅くならないうちに帰るのよ」

「はあい」

階下で鈴世と椎羅の声がする。

蘭世が下に降りていくと鈴世はちょうど出かけるところだった。

「何?鈴世出かけるの?…ってまさか…花火?」

「そうだよ。なるみちゃんと行くんだwお姉ちゃんは?お兄ちゃんと行かないの?」

「うっ…!真壁くんはねえ、バイトなの!お仕事なの!

ちゃらちゃら遊んでられないのよ!」

「無理しちゃってぇ…頼んで休んでもらえばよかったのに」

「いいのよ!花火なんていつでも見れるんだから!真壁くんに休ませるわけにはいかないの!

 さっさと行きなさいよ!なるみちゃんが待ってんでしょー!」

「はいはい。行ってきまーす。お姉ちゃんりんご飴買ってきてあげるよ。

 好きでしょ?じゃあね」

「・・・もう!鈴世のヤツ~。生意気なんだから!」

「蘭世ったら…ほんと真壁くんにお願いすればよかったじゃないの。

 行きたかったんでしょ?」

横で聞いていた椎羅が呆れ顔で言った。

「だって…真壁くんがんばって仕事してるのに、迷惑かけたくなかったんだもん…」

「蘭世…あんたって子は…」

椎羅は苦笑しながら蘭世の肩に手を置いた。

「そうね…じゃあまた真壁くんにお弁当差入れしなきゃね。

 お腹すかせて帰ってくるんでしょ?今日はお母さんも手伝ってあげるわ」

「ほんと?よぉ~っし!じゃあ今日は真壁くんの好きなハンバーグ入れよ~っと!」

そう言うと蘭世は早速キッチンに駆け込んでいった。

椎羅もにっこり微笑んで蘭世の後に続いた。



+++++  +++++  +++++



一方、俊の働くコンビニでは花火大会帰りの人でごった返して客の波も

ようやく引いてきていた。。

バイト先についていつものシフトの人数より多かったことで

俊は今日が花火大会ということを知った。

ホッと息をついたのもつかの間、新しい客が入ってくる。

いらっしゃいませと声をかけようよ自動ドアの方に顔を向けると

見知った顔がそこにあった。

「あっれ?真壁~」

日野とゆりえだった。

「よぉ」

「お前のバイト先ここだったの?っていうかお前、今日花火行かなかったのか?」

日野が訪ねた。

「行くも行かないも、さっき花火があったの知ったとこだよ」

「えっ!?」

日野とゆりえは顔を見合わせた。

「でも私、蘭世さんに今日の花火のこと前に話したけど…

 真壁くんを誘うって言ってたからてっきり…彼女何か言ってなかった?」

ゆりえは首をかしげていった。

「江藤に?それいつの話だ?」

「一週間ほど前かしら」

「…あ…!」

(…あの時か…)

何気ない会話をふと思い出す。

「まあ江藤のことだ。お前のために我慢したんじゃねえの?早く帰ってやれよ。んじゃな」

「また明日学校でね」

二人は飲み物代をレジで支払うと店を出て行った。

(…あのバカ…一言言えばいいものを…)

「あっ!お兄ちゃん!」

「こんばんわ」

今度は鈴世となるみだった。

「鈴世…お前らも花火か?」

「何だ。お兄ちゃん知ってたんだ。今日の花火のこと」

「あぁ…さっき知った」

「あっやっぱり?だろうと思った。なんかお姉ちゃん、家でしょげてたからさ。

お兄ちゃんには休ませられないとか言っちゃって」

「アイツ…気使いやがって」

「僕、八つ当たりされちゃったよ。あ、そうだ、お姉ちゃんにりんご飴買ったんだ。

これ、お兄ちゃんからあげてよ。その方がお姉ちゃん喜ぶと思う」

ウィンクしながら鈴世は俊にりんご飴を渡した。

「じゃあ早く帰ってあげてね」

そういうと鈴世となるみも帰っていった。

「・・・・」



+++++  +++++  +++++


客の足もまばらになってきて、そろそろ俊も上がる時間になってきた。

(あいつ…落ち込んでそうだな…)

俊はふぅとため息を漏らしたとき、後ろで店長がぶっと声を殺して笑っていた。

「さっきの友達との会話聞いてしまってね。今日はもう人も少なってきたし

上がっていいよ。」

「あ、いえ大丈夫です。もう少しですし、時間までいます」

「でも早く行きたいと顔に書いてあるよ。そのりんご飴も」

店長は俊のそばに置かれているりんご飴に目をやった。

(/////)

ぼっと赤くなる俊。

「あっ、そうだ、こいつも持っていくといい」

といって店長は花火セットを手に取ると俊に渡した。

「え、いえ、いただけません!」

「私から彼女へのプレゼントだよ。君を大事な日に働かせてしまったお詫びだ」

そういうと店長は人の好さげな笑顔で軽くウィンクした。

「…すみません…ありがとうございます。じゃあこれで…失礼します」

ペコリと頭を下げて俊はその場を後にした。

夜風が妙に心地よく感じた。


+++++  +++++  +++++


「たっだいま~」

江藤家には鈴世が帰ってきた。

「すっごくきれいだったよ、花火!お姉ちゃんも来年は絶対行きなよ」

「大きなお世話ですー。あ、それよりも鈴世、りんご飴は買ってきてくれたの?」

「あっ…あ~りんご飴ね…知り合いに会ったからその人にあげちゃった。ごめんごめん」

「えー!鈴世ってばひどーい!ばかーー」

もういいもん!と蘭世は部屋に戻ってしまった。

「蘭世に買ってこないなんて…鈴世にしては珍しいわね。

 よっぽど大切な人にでも会ったの?」

椎羅は鈴世に尋ねた。

「ん~、まあね。その人にあげた方がお姉ちゃんのためだと思ってさ」

鈴世はニコっと微笑んで答えるのを見て椎羅と望里は首をかしげながら顔を見合わせた。


+++++  +++++ +++++

「何よ、鈴世ったら、鈴世ったら!どうせ実の姉より彼女や友達の方が

 大事なんだから。いいもん!真壁くんもそろそとバイト終わる時間だし、

 お弁当持っていこうっと」

と用意を始めたとき、蘭世の携帯が鳴った。

「俺」

「ま、真壁くん?どしたの?バイト終わった?」

「ああ、ちょっと早めに終わらせてもらった。お前、これからちょっと出れるか?」

「え?う、うん!今からお弁当持っていこうと思ってたし」

俊からの電話もこんなお誘いも珍しい。

蘭世はほっこり心が温かくなって微笑んだ。

「じゃあ、お前んちの前にいるから出てこいよ」

「え?うちの前?」

「ああ、じゃあ」

プッと携帯が切れた。

(何?何かあったのかな…?)

「ちょっと出かけてきまーす」

蘭世はタタタと階段を駆け下りてお弁当を引っ掴むと玄関を飛び出した。

「あ、ちょっと蘭世!?」

「大丈夫だよ。お母さん。お兄ちゃんだよ」

「え?でもまだいつもより早くない?」

「今日は特別」

鈴世はそういうとにこっと意味深に微笑んだ。


+++++  +++++  +++++

「真壁くん!」

「よぉ」

「どうしたの?何かあった?」

「・・・」

(どうしたのかな…)

蘭世の問いかけにも俊は無言のままで蘭世は不安になる。

「ちょっと歩こうぜ」

「・・・うん」

すると俊は蘭世の手を取って歩き出した。

「!?/////」

(ま、真壁くんが…手を…つないでくれた…)

蘭世に緊張と動揺が走る。

それでも俊のひんやりした手が心地よくてドキドキしながらも嬉しさがこみあげてくる。

俊はほんのり顔を赤らめている蘭世を横目で見ると口元をほころばせた。



(公園?)

俊が蘭世を連れていた先は公園だった。

「さっ、始めるか」

「え!?始める??な、何を…?」

妙に真っ赤になる蘭世につられて俊も慌てる。

「ば、何考えてんだ。花火だよ、花火!」

「へ?花火?」

「そ。お前、この前ホントは今日の花火誘おうとしたんだろ?」

「え!?な、なぜそれを…」

「はっきり言えばよかったのに。早く言えば調整だってできたし。

 妙な気使いやがって」

「だ、だって真壁くん忙しそうだったし、そんなことで休むの好きじゃないでしょ?」

「時と場合によるよ。まあいいや。せっかく持ってきたんだからやろうぜ」

そういうと、俊はしゃがみこんで花火の袋をガサガサと開けだした。

「真壁くん…ありがとう!」

蘭世は俊の横に座ると、一本の花火を取り出した。




「でも花火は楽しいな~。真壁くんが一緒だとさらに楽しい!」

「そうか?」

「そうだよ。鈴世なんか自分だけなるみちゃんと花火行っちゃって。

 お土産買ってくるって言ったくせにそれすら人にあげたっていうのよ!全くもう!」

「ほぉ…お土産…ね」

「わ、見てみて真壁くん!これすっごくきれ~い!」

「うわ、お前、花火の先こっち向けるなよ!危ねえな」

「あ、ごめん、つい。あはは」

「あははじゃねえ。…ったくガキなんだから」

「うっ…ど、どうせいつまでもガキですよ~だ」

「フッ…さ、あとは線香花火だけだな。ほらつけてやるから落とすなよ」

「うん、ありがとう」



線香花火のほのかな明かりだけが辺りを照らした。

パチパチと火花が弾ける音が静かに響く。

「きれい…ね、真壁くん」

「ああ…」

俊は蘭世を見た。蘭世はにこにこして線香花火の先を見つめていた。

「…江藤…悪かったな、今日のこと気づいてやれなくて…」

「え?ぜんっぜん。いいのいいの。花火だって毎年あるんだし、いつだっていけるもん。

 それに…」

「…」

「こうやって真壁くんが一緒に花火をしてくれることの方が嬉しい」

蘭世は俊の方を見てにっこりほほ笑んだ。

花火のあかりにほんのり照らされた蘭世は綺麗だった。

「江藤…」

(やっぱこいつには敵わねえ…かな)

俊はそっと蘭世の頬に手を伸ばした。

(ドキっ)

蘭世の鼓動が早まる。

(真壁くん・・・)




ポトッ

線香花火の先が地面に吸い寄せられるように落ちて、辺りは暗闇に戻る。

その瞬間、俊は蘭世の口元にそっとキスを落とした。

静かな風だけが二人をやさしく包んでいた。

唇が離れていくのを寂しく感じながら蘭世はゆっくりと瞳を開いていく。

するといつもはあまりお見かけしない優しい俊の瞳がそこにあった。

フッと俊は微笑むとさっと蘭世の髪を一撫でした。

「さ、帰るか。親父さんたちもあんまり遅いと心配するからな」

「真壁くんとだったら大丈夫だよ」

「…////…煽るなよ…」

「え?」

「何でもねー」

「真壁くん、今日はありがとう。あ、そうだ。これ今日のお夜食。ハンバーグ入りよ」

蘭世は青い布で包んだお弁当箱を差し出した。

「お、サンキュ。実は超腹ペコ」

「クスクス…よかった」

「じゃあ、お前にはこれ」

俊は透明の袋に入った赤色の飴を蘭世に渡した。

「あ、りんご飴!どうしたの?これ!私大好きなの!!」

「天使がお前に届けろってコンビニに置いてったんだよ」

「天使?」

「そ、かわいらしい天使だよ。礼言っとけよ」

「…あ…鈴世…」

ニッと俊は微笑んだ。

蘭世も肩をすくませて笑った。

帰途につく二人はどちらからともなく手が繋がる。

花火の音がまだ遠くから聞こえてきそうなそんな夜だった。




+ あとがき +

今回、移行にあたって少し修正しました。
サイト立ち上げ時期の作品なんですが
読んでて恥ずかしすぎた…
あんまり変わってないけど^^;





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