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Aroused magic おまけ

俊×蘭世 中学時代 若干脚色あり

Aroused masic のおまけ作品です。
本編を先に読まれてからの方が楽しめます☆







その夜ーーーー。



必要以上の疲労を感じて俊は自分のベッドになだれ込むようにして横になった。

夕方味わった初めての感情に今もまだ翻弄されたままで

頭の中がモヤモヤと混沌としたままだ。

蘭世の姿が脳裏をよぎる…




(江藤…)



その時、ビュンっと強い風が吹いて俊はハッと飛び起きた。

そして何か白っぽい影のようなものが俊の目の前に浮かぶ。


な、なんだ…??


得体のしれないその正体を見極めるために俊はじっと目を凝らす。

開いたままのカーテンの間からは月光が惜しみなく部屋の中に注ぎ込んで

そのモノを鮮やかに映し出す。

それは・・・・




「誰だ…!?」



人らしきものが真っ黒いマントを背に着けたまま俊を背にしてそこに佇んでいた。

そしてそのものはゆっくりと俊に振り返る。

その拍子に漆黒の長い黒髪がマントの中から姿を現し、

俊はその存在にビクリとした。

心拍数が大きく跳ね上がる。




「え、江藤っ!?な、なんで…」



そこにいたものは、つい先ほどまで俊の脳裏から全く離れようとしなかった蘭世だった。

(なんで…ここに…)

そう俊は思ったもののあまりの驚きにそれは言葉になることはなく、ぐっと息を飲みこんだ。

心臓が口から飛び出してきそうなくらいドクンドクンと鳴り響いて呼吸すら乱れる。

そして次の瞬間に俊はそれ以上の衝撃を受け止めなければならなかった。




「なっ・・・!!!」




ゆっくりと振りかえった蘭世のそのマントの下は一糸まとわぬ姿であり

月の光に照らされたその白い肢体はまるで透き通るように鮮やかで

この世のものとも思えないほどだった。

普段では見られない無表情。

しかし、その瞳には鋭い力が込められていてその視線は

俊にまっすぐ向かっていた。

妖しくて、艶めかしいその蘭世の姿に俊は凝視せざるを得ない。

自慢の黒髪がマントと一体化されて蘭世の裸体の所々を覆っていて、

それが却ってコケティッシュだ。




驚きを通り越して俊は唖然とする。

なぜここに蘭世がいるのかもわからないし、

しかもなぜこんな姿でいるのかもわからない。

かといって、それを何故だと問いただすこともできないまま、

俊はその蘭世の姿をただ見つめることしかできなかった。

いや、

視線を離せないといったほうがしっくりくる。

月の光に照らされて青白く光るその肌に、その艶やかな黒髪に…。







ゆるやかな動きでマントをはためかせながら蘭世が俊の方に一歩ずつ近づいてくる。

その一歩ごとに俊の心臓はドクンと跳ね上がる。

しかし、それを制することも逃げることもできない。

動けないーーーーー。




蘭世は俊のいるベッドのそばまでたどり着くと、ゆっくりと俊の頬に向かって手を伸ばす。

そして俊を見つめるとニコリとほほ笑んだ。

(えっ?)

ふっと気持ちが軽くなる。

いつもの表情だ。

それまでは蘭世の姿をしていてもそれはまるで別人のように感じていた。

しかし、今、目の前でほほ笑んだそのやわらかい表情はまぎれもなく蘭世のもので

それが、また俊の施行を惑わせる。




「…え、江藤なのか…?」

本当に蘭世であるのなら、逆に今のこの状況は想像をはるかに超えている。

どちらかというとすぐ照れて真っ赤になってしまうような女だ。

それが…こんな時間に…こんな恰好で…

いったい、どうしたというんだ…??



しかし、蘭世がその微笑を見せたことで俊の中でも少しゆとりができた。

硬直していた体がふっとほどける。少し声も出せそうだ。

「な・・・んで・・・ここ・・・に・・・?」

聞きたいことは山ほどあったがそれが精いっぱいだった。

しかし、蘭世はその質問に答えることなく俊の頬に手を添えたまま俊の隣に座る。

その瞬間、俊の鼓動は再び大きく揺れる。



(誘っているとしか思えない・・・・・・)



どうすればいい・・・?コイツの目的はいったいなんだ・・・

逸る鼓動と心で大きく目覚めた本能を精いっぱいの思考能力と理性で抑え込む。

ありえないこの状況にこのまま溺れていきそうなのを俊は必死で止めていたが、

いつまでもそれが続くわけもなく、

月明かりに照らされたその蘭世の白い体が俊の理性を刻々と奪っていく。



「え、江藤・・・・・・」


俊が蘭世を呼ぶと蘭世がそっともう片方の手も俊の頬に添えて両手で俊の顔をはさんだ。

黒い大きな瞳が俊の両瞳を視線で絡み取るように覗き込む。

そしてーーーーーゆっくりと蘭世の顔が俊に近づいてくる。

夕刻に薫ったシャンプーの香りが俊の鼻を掠めた。




・・・・・・あっ・・・・・・



同じ匂い。

そして先ほど、蘭世に自分がしようとしていた行動がフラッシュバックのように

脳裏をよぎる。






その時ついに俊の箍が外れた。

蘭世の体をそのままベッドに押し倒し、自分の下に組み敷いて見下ろす。

蘭世は抵抗することもなく俊の瞳を見つめていた。



「・・・・・・どうなっても・・・・・・もう知らないからな・・・・・・」



そういって俊は蘭世の上に覆いかぶさった。














+++++








・・・・・・はずだった。

ドスンという音とともに体全身に衝撃が走る。

俊は「ん?」と目を開いた。

そこには蘭世の姿はなく、俊は布団を抱きしめたままベッドから転がり落ちていた。



「…あれ?」


俊はあたりをキョロキョロと見まわす。

カーテンの隙間から月の光だけが一本の筋になって部屋に入り込んでいた。

(夢?)

はぁーーーーー・・・・・・。

俊は大きな息とともにガタンとベッドに体をもたれかけた。

「な、なんだ・・・び、びっくりした・・・」

どこからどこまでが夢なのかよくわからないまま俊はボーっとしたままだった。

ふと机に置いたままの蘭世が忘れていった制服のスカーフと

そして一度蘭世が袖を通したスウェットを見つける。




「っくそ・・・夕方のせいだ・・・」

蘭世のあんな湯上り姿をマジマジと見てしまったから

そして思わずその姿に惹かれて口づけしそうになってしまったから・・・

どっと冷や汗が流れ出す。

(俺・・・まさか・・・あいつのこと・・・)

いや、違う!ちょっと男の本能がくすぐられただけだ。

俺に至っては硬派なはずで、女には興味がなくて・・・



「チッ・・・ああ!もう!」

そう言って俊はガバっと立ち上がり布団をひっつかんでベッドにもぐりこんだ。

今夜は・・・眠れそうにない・・・。







+++++







「あ、ま、真壁くん・・・お、おはよう!」

翌朝・・・

通学途中の昨日雨宿りをした本屋の角で俊は蘭世と出くわした。

(げっ・・・)

よりによって朝一で会ってしまうなんて。。。

昨日の動揺を引きずったまま、俊は「よ、よぉ」とどもりながら答えた。

夢のことは別としても、蘭世とキスしそうになったのは確かなことであって・・・

蘭世もそれを意識しているのか顔を赤くさせて俯いている。



「あ、あの、昨日・・・どうもありがとう。お世話かけました・・・」

「い、いや・・・」

「借りた服・・・洗って返すから」

「あ?あぁ・・・いつでもいいってお袋言ってたから」




蘭世と目が合う。

見つめ合う。

男の本能がくすぐられただけ?

・・・・・・いや・・・たぶん・・・そうじゃない・・・それだけじゃない。。。

コイツだったから・・・




昨日見てしまった夢は、それらがきっと交錯してしまったんだろう。

夢の中でふと見せた蘭世の揺らいだ頬笑みがきっと俊の中での全て。

あの妖艶なままの蘭世であったならきっと俊はいくら夢であったとしても

その手を振り払っていた。

それがなんとなくわかる。



「真壁くん?」

恐る恐る蘭世は俊の顔を覗き込む。

黙ってしまった俊に少し不安を感じたのかもしれない。



(夢のことも・・・この気持ちのことも今はまだ封印だ)



「これ・・・忘れものだ」

そういって俊はパンツのポケットから蘭世のスカーフを取り出し蘭世に渡した。

「あ!やっぱり忘れてた?ないな~って思ってたの」

そういって蘭世はよかったと笑顔になる。

俊はまた自分の鼓動が速くなるのを感じて目を背ける。



(やべぇ・・・どうすりゃいいんだ俺・・・)



「ったく・・・世話がやける女だ」

「な、なによぉ」

「行くぞ!遅刻する」

「あー!!」

俊は急に自覚してしまった感情の制御の仕方を暗中模索するしかなく、

やり場のない焦燥感をもてあましたまま

とりあえず、慌ててついてくる蘭世のカバンを取り上げてその腕をとった。

走る。。。

気持ちを悟らせる時間を与えないように、

でもなんとなく掴んだ腕は離せないまま

二人の間を吹き抜ける風を感じながら俊は黙って走った。




<END>



+おまけのあとがき+

移行のついでに第4話にしてもよかったんだけど
ちょっとカラーが違うのでこのままでいっか。

やっぱり未遂。
そして夢オチかい。

でも少年の葛藤を味わってもらえると嬉しいデスw







拍手[13回]

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Aroused magic 3

俊×蘭世 中学時代 若干脚色あり

Atoused magic 2の続きです







「冷めちまったかな…?」

「あ…入れてくれたの?うれしい☆冷めててもいいよ。今、私ホカホカだから☆」

そういってニコリとほほ笑んだ蘭世は俊の手からコップを受け取った。

蘭世がクルッと体を反転させると髪がフワリとなびく。





まただ…





シャンプーの香りが俊の周りを包み込む。

いつも自分が使うシャンプーの香りのはずなのに、なぜ、こうも違うんだろう…。

甘くて、さわやかで…そしてどこか少し艶やかで…

女に興味がないだなんてのたまっていた自分が

ただのフツウの男だったということを嫌というほど思い知らされる。

本人は特にそうしようとしているわけではない。

いや、むしろ、

蘭世の中にいるもう一人の蘭世が、まるで知らず知らずのうちに

俊に魔法をかけてしまっているような、自分が彼女の魔法に落ちてしまっているような

そんな気さえしてくる。



女が持つ、男を惑わせる魔法ーーーーーー。。。



以前ジムの先輩である小関がそんなことをニヤニヤしながら俊たちに説き伏せていた。





ーーー計算のない女が持つ魅力ほど危険なものはねえぞーーーーー





その時の俊には今一つよく理解できていなかったが、たぶん…

こういうことを言うんだろう。

目の前にして初めて気づく。

その危険を、自らが導いてきてしまったことを…。

俊に背を向けたその背中を、思わず抱きしめたくて仕方がない。







「うん、おいしい。そんなに冷めてないよ」

蘭世がそういってこちらを振り向き俊は思わずのけぞった。



(び、びっくりした…)



俊の若干ひきつる顔がわかったのか、蘭世は「どうしたの?」と尋ねた。

「…どうもしねえ」

俊はどうにかいつものポーカーフェイスに戻すと、ソファーに戻って

自分の冷めたコーヒーを飲む。

「お前、その制服もドライアー当てた方がいいんじゃねえか?」

「うーん…そうだね…あ、でもいい。家に帰ってからするし大丈夫」

制服を持ったままの蘭世はそういうとほほ笑んだ。

「…そっか…」

「…あの~」

「ん?」

「隣に…座っても…いい?」

「え”っ!」

ギクっとしたが、蘭世は先ほどから立ち尽くしたままで、よくよく考えたら

学校からずっと走りっぱなしの立ちっぱなしだったわけで…




「あ、あぁ…どうぞ」

そういって俊は少し横にずれて蘭世のスペースを確保する。

すると蘭世はエヘヘと笑ってコーヒーカップと制服をテーブルに置くと

俊の隣にちょこんと座った。

シンと沈黙する中で音楽だけが流れている。

何かどうでもいいことを話そうとするが、何も思い浮かばなくて心臓だけがうち響く。




「何か…」

「え?」

蘭世が話し出す声に反応して俊は蘭世を見る。

「何か信じられない…かな?」

そういって蘭世は恥ずかしそうにうつむく。

その姿に目をそらせない…。



「雨に打たれちゃって最悪~って思ったけど…なんか…真壁くん…

優しいな~って…///…エヘヘ、ありがとう」

蘭世はちょっと顔を赤らめながらほほ笑む。

その笑顔に心臓が鷲掴みにされたようにギュッと縮む。


「洗濯しているっていってたけど、この服、真壁くんの匂いがする気がするよ」

そういって蘭世は自分の体を愛おしそうに抱きしめる。

俊はまるで自分がそうされているような錯覚を覚えて…





…それは…お前…反則だろ!!!




ダ・・・メ・・・だ・・・・・・

俺はもうすっかりコイツの放つ魔法にはまってしまった・・・

せめてBGMをテレビにでもしておけば・・・もっと現実のままいられたかもしれないのに

運悪く?バラード・・・






気がつけば蘭世の頬に俊は手を差しのばしていた。

魔法にかかっているのならいっそもうそれでいい。

俺はもう・・・




ドクン・・・ドクン・・・

ヤバイくらいに鼓動が鳴り響く。



蘭世のその大きな瞳を見つめるとユラユラ揺れていて、

吸い込まれるように俊はゆっくりと蘭世の顔に近づけていった。


二人の瞳がゆっくり閉じていく。

そしてその瞬間ーーーーーーーーーーー・・・・・










ピンポーンとインターホンの透き通った音が二人の間を突き抜ける。

二人はお互いの鼻頭がついた状態で同時に目を見開く。



「ただいまーー!俊、ごめーん。遅くなっちゃって・・・あら?」

トタパタと廊下を歩く音が近づいてドアから華枝の顔がチラリとのぞいた。

蘭世はその瞬間にスタっと立ちあがり

「ここここ、こんにちわ、お邪魔してます」と頭を下げた。

「あら~江藤さんじゃない。こんにちわ」

「あ、あの!帰り道、すごい雨に当たっちゃって、

ま、真壁くんがそれじゃ帰れないだろうからって、ふ、服を貸してくださって・・・」

あたふたと答える蘭世の横で俊はソファーの腕置きに体を倒れこませて、

額を抑えながら大きな息で呼吸を整えている。



「あら、そうなの。へ~え、俊もいいとこあるじゃない?」

そういって華枝は何か含ませたような笑みで俊を見た。

「でも、それ俊の服でしょ?大きすぎるわよねぇ。私の服を貸してあげるわ」

「い、いえ、そんな」

「お、お袋がもう帰ってると思って連れてきたんだよ!そしたらいねえし、

俺の貸すしかねえだろ!」

まだ顔の赤みがとれない俊が怒鳴る。

「はいはい。ごめんなさいね。さあ江藤さん、こちらどうぞ☆」

そういって華枝は蘭世を奥の方に引っ張っていった。





+++++





蘭世は華枝のブラウスとスカートを借りて、華枝が送ってあげなさいなと俊に言うのも

丁重に止めて、お礼と共に帰って行った。

蘭世が出ていくと俊は思わず「はぁーーー」と大きく息を吐きだした。

安堵した気持ちと、どこか残念に思う気持ちと・・・

複雑に入り乱れた感情が心の中を交錯する。

あれは夢をみていたか、もしくは本当に魔法にかかっていただけなのか

現実に引き戻されて、妙なギャップに俊は困惑する。

そしてもし母親があのとき帰ってきていなかったら…と思ったら

俊はぶるっと身震いした。




……キス……



だけで終わらせることができたかどうかさえも…自信がない。

そして、蘭世がドアを出ていく瞬間にチラリと合わさったあの瞳が頭から離れない。

二人だけの秘密を共有し合ったことを確認するようなあの瞳に

俊は今もなお心を持って行かれたままだった。



「しゅーん?」

自分を呼ぶ華枝の声に俊はハッと我に返った。

「ごめんね?母さん、お邪魔しちゃったかしら?

華枝がニコニコしながらからかう。



「バ…んなんじゃねえよ!」

「フフ…だってまさか江藤さんがいるなんて思わないしー」

「だから!違うって!」

「でも、いいこと?ちゃんと責任取れるような行動しなさいよ?」

「あ?ああ…わかってる…っておい!違うって言ってんだろ!!!」

息子をからかう母と

そして母には知られたくない心の感情を必死で隠そうとする息子の小競り合いは

当人抜きでしばらくの間、続けられるのであった。



<END> 


<おまけあります>




+あとがき+

kauranの得意とする未遂ver.です(笑)
アニメのEDの裸マントに関するイベントに出品した作品でしたので
ちょっと妖艶な蘭世ちゃんを出したかったわけなんですが
一応中学生の設定なので子どもらしさも残しつつ。。。
おまけのほうにはガッツリ裸マント出してますよ☆





































拍手[14回]

Aroused magic 2

俊×蘭世 中学時代 若干脚色あり

Aroused magic 1の続きです。





「あー、ひどい目にあったぜ…」

バタバタとマンションに駆けこんだ俊は濡れた頭をブルブルと振った後、

ポケットから鍵を取り出すとドアを開けた。

「おーい、お袋ーーー…あれ?」

俊がのぞいた部屋はまだ真っ暗で、人のいる気配が感じられない。


「まだか?…とりあえず入れよ」

そういって蘭世を玄関に入れる。

「お、お邪魔します」

俊は思いっきり水分の含んだ靴と靴下を脱ぎ捨てると、リビングの方に入って行った。

母の華枝はまだ戻っていないらしくシンと冷えた空気だけがそこにあるだけだった。


「まいったな…」

かといって、玄関先ですぶぬれの蘭世を放り出すわけにもいかなくて

とりあえず、脱衣所においてあるタオルを二枚取り出すと

一枚で自分の頭を拭きながら玄関に戻った。


「お袋、まだ帰ってないらしい。とりあえずタオル」

「あ、ありがとう!」

大きめのタオルで多少の水分はとれたが、少し乾きだした肌は体温をどんどん奪われ

蘭世はもう1回クシュンとくしゃみをした。

このままだと風邪を引くのも時間の問題だ。


「とりあえず上がれよ。で、シャワーだけでも浴びた方がいいんじゃねえの?」

「え…///で、でも…」

「風邪ひくぞ」

暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ肌寒い。しかもこんな状態のままでは…



「別に取って食いやしねえよ」

俊の発した言葉に蘭世はボンッと顔を赤らめる。

「ああ当たり前ですーーーー///」

当たり前だ!…んなことするかっての!!

半ば自分に言い聞かせるように自分の中で俊はつぶやく。


「いいから上がれって。そこも寒いだろ」

「は、ハイ…お邪魔します…」

蘭世もずぶ濡れになった靴下を脱いだ。

裸足になった素足が妙に艶めかしい。

ゴホンと俊は咳払いをして一足先に奥に向かう。

そして新しいバスタオルと、あと自分の部屋からスウェットの上下を出してきた。

そしてリビングのテーブルのところで立ち往生している蘭世を見ると

ん、といってそれを差し出した。


「お袋がいねえから、とりあえず俺の。洗濯してあるから大丈夫だぞ」

ちょっと照れながらいう俊に蘭世は思わずプッと笑う。

「な、なんだよ」

「ありがとう…じゃあお言葉に甘えて…お借りします…」

「お、おぅ」





+++++





「その辺に置いてあるもの、適当に使っていいから」

そういうと俊は蘭世を浴室に残したままリビングに戻った。



「はぁーーーーーー」

急にドッと疲れが俊の肩に落ちてきた。

張り詰めていたものが一気に解けた感じ。


…ったく…なんでこんなことに…


とりあえず俊も濡れた制服をシャツとジーンズに着替えコーヒーを入れる。

冷えた体にゆっくりとコーヒーが注ぎ込まれ、いくらかほっと息をつけた。

ドライアーで濡れた髪を乾かしてソファーに腰を沈めると

そのまま眠ってしまいそうになる。

しかし、ガチャリとドアが開いた音で、またビクっと俊は身を起こした。

蘭世がドアからこちらを覗いている。



「あの、シャワーどうもありがとう」

「い、いや…あったまれたか?」

「うん!ついでと言ってはなんですが…ドライアーお借りできますか…??」

「あ?あ、あぁ…これ」

そういってソファーに置きっぱなしにしてあったドライアーを蘭世に渡した。

その一瞬シャンプーと石鹸の香りが俊の鼻を掠める。




ドキンとまた俊の胸が鼓動を打つ。




洗面所に戻った蘭世を見送ると、ようやく俊は身動きが取れた。

鼓動を抑えようとして慌てて蘭世用のコップを食器棚から取り出してコーヒーを注ぐ。

そして、そのままグラスも手にとって勢いよく蛇口から水を注ぐと一気に飲み干した。



「落ち着け!俺!」


調子が狂う。

どうしても今日のアイツは俺の調子を狂わせる。



なんなんだ…いったい…



気を紛らわせるために音楽をかけてラックに置いてあった雑誌を手に取り

俊はもう一度ソファーに座った。

パラパラとめくるも内容は頭に入ってこない。

そのまま背もたれに頭を預けて天井を何気に眺める。

そして大きく深呼吸。

そうこうしているとドライアーの音が止んだ。

その止んだ後のシンとした静けささえも、今の俊にとっては刺激的で

そこに蘭世がいるということを嫌でも確信せざるを得なく、

そうこうしているとガチャリとまたドアが開いた。



「真壁くん、どうもありがとう」

濡れた髪も乾いてすっかりいつものように戻ったように見えた蘭世だったが

どうしても俊にとっては細かい部分が気になる。

少し上気して赤く染まった頬や、何も履いていない素足や、

いつもは自分が着ている服に身を包まれているその姿までもが

俊の心を煽ってしまう。



平常心…平常心…


そう言い聞かせて俊は蘭世に用意したコーヒーカップを手に取った。




<つづく>







拍手[6回]

Aroused magic 1

俊×蘭世 中学時代  若干脚色あり







「あ…っ」

「降り出しやがったか…走るぞ!」

つい数十分前まではそんな気配なんて全くなかったのに

傘を準備する間も与えることなく、突然激しい雨が俊と蘭世を襲った。

連日に及ぶ小テストにことごとく打ちのめされた二人を待っていたものは、

精神的消耗の激しい補習だった。

指名を受けたのは俊と蘭世の二人だけ。

最初はにやけ顔だった蘭世も適当にすりゃいいと侮っていた俊も

教師一人に生徒二人という補習スタイルの前では、気を抜く隙もなかったし、

そんな中で苦手なお勉強に真剣に取り組まざるを得ない状況にほとほと疲れ果て、

夕刻、陽も沈みそうな時間になってようやく解放された二人は

ダラダラと帰途についていたそんな矢先のことだった。



「補習の上にこんな雨なんて、全くついてねえぜ!」

「ホントーー!!せっかく真壁くんとの補習だったのにぃ」

「…バカっ…まだんなこと言ってやがる」


スコールのような雨は瞬く間に地面をも水浸しにし、走る二人の足元も

容赦なくビシャビシャとはね上げさせる。

少し戻ればコンビニもあったのだが、雨足がここまでひどくなるとも思わずに

走り出してしまった二人は、傘の調達もままならないまま

ひとまず本屋の軒下に身を預けた。

二人してカバンを頭上に掲げて走ったものの、それで防げるほどの雨量ではなく

髪を結んでいなかった蘭世の長い髪も、今は十分に水分を含みきって

雫が滴り落ちていた。



「あ~あ…びっしょびしょ…」

俊は払いながらそうつぶやく蘭世の姿を確かめた。


(…こいつ…ヤバくないか…?)



全身びしょぬれで、勿論髪もそうだが、薄地の制服もすっかり濡れて

下着もすけてしまっている。

自分だってシャツはベッタリと肌に張り付いているのだから

同じように濡れた蘭世もそれは当然の姿なのだが、

俊は眼のやり場に困りながらもどうすべきか考えを巡らせた。




「やみそうにねえなぁ…」



黒く低く立ち込めた鉛色の空を俊は睨む。

すると隣でクシュンと小さく蘭世がくしゃみをした。

「寒いか?」

といっても羽織らせるものもないのだが。

「あ…ううん。大丈夫」

そういってニコリとほほ笑む蘭世の額から頬にかけて雫がまた一粒零れ落ちた。





なぜか…

ドキリとした。




その流れ落ちた水滴がすごく綺麗に見えて、目を奪われる。

自分の肌にも流れ落ちている雫が一瞬、冷や汗に変わった気がした。



(何考えてんだ…俺は…///)



俊は自分の持っていたハンカチで少し乱暴に蘭世のその雫を拭いてやる。

「…あっ///…ありがとう…」

蘭世は少し恥じらいながらそう言った。



ありがとう…だなんて

それは蘭世のためにした行為というより、もしろ自分のための行動だった。

蘭世のそんな姿を見せられる自分に、自信が持てなかっただけ。

俊の中の血がドクンドクンと騒ぎ出すのを防ぎたかっただけ。




このヤロウ…

そんな無邪気に俺を見るなよ…。



俊はいたたまれなくなって目を背ける。

この場から、この雨の中に逃げ出したいくらい。。。

だが、こんな状態の蘭世をこのまま置いていくわけにもいかなくて

俊ははぁと息をついた。




この本屋の角で、二人は違う方向に向かって帰る。

俊の住むマンションはここからなら3分もかからないくらいだ。

しかし、蘭世の家は全速力で走っても5分以上はかかるだろうし、

この雨の中、そこまで体力が持つかどうかも怪しい。

ましてや、この姿を街中にさらさせることにも俊の中では抵抗があった。

蘭世のこんな姿を他の誰の目にも触れさせたくない。。。



なんなんだ…この感じ…。

女に興味…なんてなかったはずなのに…。




「チッ」

自分の中でもてあます感情に俊は少しイラついて舌打ちした。

「お前…とにかく…俺んちまで走れるか?あと3分くらい」

「えっ?」

蘭世はきょとんとした顔で俊を眺める。

「お前んち…まだこの先距離あるだろ。傘も貸してやれるし、

どのみちその格好ヤバイだろ…」

「あ…」

蘭世はようやく自分の姿がどういう状態かということに気付いたかのように

全身を見渡す。

そして顔を赤らめるとカバンを胸の前で抱え込んだ。



「はぁ…これだからほっとけねえんだよ」

俊は一人ごちる。

「えっ?」

蘭世はパッと顔をあげて俊を見たが、俊はそれに気づかないフリをしたまま言った。

「もうお袋も帰ってると思うし、お袋の服でよければ貸してやれるよ。ほら行くぞ」

「う、うん」

そういって走り出した俊に蘭世も慌ててついていった。



<つづく>






拍手[11回]

お手伝いのご褒美は

俊×蘭世 中学時代

久しぶりに新作デス。





「真壁くん、待って~」

下校中、少し離れた後ろから聞こえてくる声に俊は振り返った。

思い当った声の主は視覚で確認したその姿と相違なかった。

江藤蘭世だ。


どうやら学校からずっと走ってきたようでぜいぜい肩で息をしている。

勢いよく駆けてくる蘭世に俊はあきれ顔で答えた。

「そんな息切らして何の用だよ」

「だって一緒に帰りたかったんだもん」

「は?」

こいつは臆面もなくそういうことを言ってのける。こちらが面食らうくらいに…。

だが、転校早々からこの調子だったコイツには最近ではもう慣れっこだ。

というか、こいつだけは最初からどうも違った。

それまでは女なんて面倒なだけだと思っていたのに、

この女は驚くほどすんなりと俊の心に入ってきた。

こんな風に追いかけられても自然と受け入れてしまう。

まるでほんわり暖かい風がすっと胸を通って行くようだ。


それでも元々の自分の性格がそう簡単に崩れるわけでもなく、

というより崩さないようにすると、つい口から出るのは皮肉ばかり。

しかし、彼女の方もそれにはずいぶん慣れてしまったようで軽くかわしていってしまう。

そのやりとりになんとなく心地よさすら感じていることに

俊は気づかないフリをしていた。

気づいてしまうことが怖くて。。。



今日もそんな心の葛藤をポーカーフェイスで隠していつもの調子で返事をした。

「なんでお前と一緒に帰らなきゃならねえんだ」

「いいじゃなーい。一人で帰るより二人で帰る方が楽しいでしょ?」

「だったら他のヤツでもいいじゃねえか」

「もう!真壁くんったらツレナイんだから!」

「・・・・・」

そう言いながら足は進んでいるわけだから、結局こんな風に一緒に

帰っていることになってしまう。

蘭世が隣で並んで歩くことに今では何の違和感も感じない。

むしろだんだん当たり前になっていることに安堵感と焦燥感が交錯していた。




+++++




二人でたわいもない会話をしながら公園の前を通りかかった時、

一人の婦人が青ざめた顔で公園から出てきた。

俊が何か言おうとする前に蘭世が一足早く彼女に問いかけていた。

「あの…どうかされました?」

「あ…すみません…茶色のトイプードルが走ってきませんでしたか?」

「トイプードル?…いいえ…」

「あ…そう…ごめんなさい。ありがとう」

「迷子ですか?」

「ええ…ちょっとリードが外れてしまったら、駆けだしていってしまって…」

「まぁ…」

「まだ子犬なものでしつけもできてないし、外にも慣れてなくて…」

「それは心配ですね…」

蘭世は親身になってその話を聞いている。

俊は(またおせっかいが…)と思いながらもその場を離れることができずにいた。

でもこの調子だとたぶん…


「私、探すの手伝います!」

やっぱり…

そうくると思ったぜ…。

こいつのこういうところはもう把握済みだ。

そして次に言う言葉も…。

「あ…真壁くん、誘っといてごめんね。先に帰って。私ワンちゃん探してくる。」

俊は半分あきれながら、はぁと息を吐いた。

「あのなぁ…そんな話聞いてそれですんなりハイじゃあなんて鬼みたいなこと言えるか」

「え…一緒に探してくれるの?」

「しょうがねえだろ」

「ありがとー!!」

「あ、ありがとうございます」

ったく…

お前の犬なのか!って突っ込みたくなるほど喜んじゃって…。

しかし、蘭世のこういうところに俊は弱さを感じずにはいられなかった。

そんなこんなで蘭世と俊は行方不明の犬っころを探す羽目になったのである。




+++++




「いたか?」

「ううん…」

手分けして探し始めて小一時間ほどたっていた。

この近辺はしらみつぶしに探してみたが見つけることもできずに、

収穫なしのまま最初の公園に戻るとちょうど蘭世も戻ってきたところだった。

「いないね…どこいっちゃったんだろ…」

八方ふさがりの状態で立ちつくしているとそこに当の婦人も戻ってきた。

「すみません…お手を煩わせてしまって…」

「いえ。。。そんなことはいいんですが…見つかりませんね…」

蘭世はシュンとして俯く。

「このままでは申し訳ないからもうお二人ともお帰りになって。

後は私が探しますから」

「でも…まだ私大丈夫です。それに心配だし。。。」

隣で蘭世がそういうのを聞いて俊もおなじように思う。

このままだとなんとなく気分も晴れない。

俊はどうしたもんだろうかとぐるりと辺りを見渡した。

すると公園の固定遊具の中にちょこっと動く茶色の物体を見つけた。



「あ…あれ…」

「え?」

俊の言葉でいっせいに二人が俊の視線の先をたどる。

「あ…ラル!!」

婦人が悲鳴に近い声でそう叫ぶとラルと呼ばれたその茶色い物体は姿を現し、

一目散に駆けてきた。

そのまま婦人にとびつくのと同時に彼女は子犬を両手で抱きあげた。


「この子ですか?」

「はい!…本当にどうもありがとうございました」

「よかったぁ」

「こんなとこにいやがったのか…」

「灯台下暗しだね」

「ああ…まったくだ…ったく人騒がせなヤツだな」

「ホント、もう勝手にどっか行っちゃだめだよ?」

でもかわい~☆と蘭世はその子犬と戯れていた。

心から嬉しそうに笑う蘭世はキラキラしていた。

子犬が見つかったことはこの女性にとってはもちろんよかったことだが、

蘭世もこんなに楽しそうに子犬と遊ぶ姿を見て俊は安堵し、ふっと笑顔をこぼした。

そしてその姿になんとなく見惚れている自分に気づいてゴホンと一つ咳払いした。




+++++




「ホントにどうもありがとうございました」

子犬との再会を果たした後、婦人は深々とこちらに頭を下げた。

「いいえ~。私たち結局何もしてないですし…」

「そんなことないです。お二人がいなければ私もあきらめて帰っていたかもしれません。

ホントに助けられました。ありがとう」

俊と蘭世は顔を見合わせるとニコリとほほ笑みあった。

人にお礼を言われるなんて久しぶりだな。。。

俊はふとそう思った。

少し照れくささもあるけど、これはこれでなかなかいいものだ。

そして横で笑う蘭世に対しても…。




「あ、そうだ、今日のお礼にこれ…はいどうぞ」

「えっ…」

そういって婦人は鞄から紙切れを二枚取り出して俊の胸に押し付けた。

思いかけずのことで俊はチケットが胸からはらりと落ちそうになるのを

慌てて手のひらで押さえる。

「ちょ、ちょっと…これ…」

「今度の日曜までの映画のチケットなんですよ。

もらい物なんだけど私も用があって行けなくて…ちょうどよかったわ」

そういって彼女はにっこりほほ笑んだ。

「え…でも…」

「助けて下さったお礼よ。そちらの彼女さんとお二人でどうぞ」

「か、彼女!?」

蘭世は髪をピンと逆立たせた猫のように顔を真っ赤にさせる。

「いや…俺たちは別に…」

俊も突然の言葉に動揺しながらしどろもどろに否定するが、彼女はホホホと笑うだけだった。

「じゃあね。ありがとう」

そういって婦人は二人にひらひらと手を振ると頭を下げながら去って行った。




+++++



公園に俊と蘭世が取り残される。

俊は手のひらで押さえていた胸のチケットをつかみしばし思案してから

チラリと蘭世の様子を伺った。

そこにはキラキラと瞬かせた瞳がこちらを見ている。

彼女…か…。

いや!そんなんじゃねえし!

そう心で否定するも俊の胸の動悸はなかなか治まらなかった。


そんな眼で見られたら…

行かないなんて言えねえじゃねえか…


でもこういう風に言い聞かせている自分は

…なんてズルイ…。




俊はふぅと一息つくと一枚を左手にとって蘭世に差し出す。

「えっ…」

「まぁ…お前も一緒に探したわけだし…これをもらう権利は…ある」

チケットをじっと見つめていた蘭世は何かを訴えかけるような眼で俊を見上げた。

「そ、そちらのチケットは…」

「は?…んだよ。ことちは俺んだろうが!それとも何か?

2枚とも持ってって別のヤツとでもいくつもりかよ」

「そ、そんなこと…///」

「だったら…ほら…」

そう言って俊は蘭世の手を取りチケットを握らせた。

「一緒に…行ってくれるの?」

「二人にってくれたもんだし…まあそれに日曜はたまたま空いてたりするけど…」

自分でも思う…なんてあまのじゃくな言い方…。

ホントは…ちょっと…心が騒いでいる自分がいるくせに…

「お前が予定あるならそれは俺が頂く」

そういって蘭世の手からチケットを奪おうとすると

蘭世は普段からは想像がつかないほどの速さで

チケットを握った手を胸にしっかりと組んだまま身を翻した。

「予定なんてぜんっぜんない!すっごく暇」

ドキ…

どの瞬間、俊の胸の鼓動が大きく響いた。

蘭世の心底嬉しそうなその表情に思わず惹きつけられ、目が離せない。

そんな動揺を悟られないように俊は慌てて蘭世から目を逸らした。



「…じゃ、じゃあ日曜日、13時駅前だ。いいな」

「うん☆」

こちらの気持ちを察することもなく蘭世は満面の笑みでうなづいた。

察しられても困るけど…


でもその満面の笑みを見ているとほっと胸が温かくなってくる。

俊はなんとなく引き寄せたくなる衝動をため息で紛らわせた。

しかし、そのあと、どんな顔をすればいいかわからなかった。

どうしても顔の筋肉がゆるんでしまう。

表情のコントロールができずにさらに焦る。

ここはもう退散するしかない。

まだ明るいし、送っておくほどでもないだろう。



「んじゃ」

どういって背中越しにヒラヒラと手を振る。


言葉にするにはまだよくわからない感情を俊はもてあましながら

とにかく今はその場を離れてしまいたかった。

しかし日曜にもっとおおきな動揺にさらされることに

そのとき、俊はまだ気づいていないのだった。



<END>



+あとがき+

突然ですが移行途中に新作ぶっこみました(笑)
以前に書きとめていたものなので書いたのはだいぶ前なんですが…。
まだまだ中学時代なので糖度は低めですね。

それと、ラスト、次回に続きそうな終わり方をしてますが
特に何も考えてません…オイ。

そのうち機会があれば^^;










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