ときめきLOVERS
ときめきトゥナイトの二次小説を置いています。
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042 お願い
俊×蘭世 中学時代
100のお題より 配布元 ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
明日の日曜日は江藤のたっての願いで
二人で出かける約束をした。
デートってやつか?
女と出かけるなどそんなことまったく縁のなかった俺が
あの転校生、江藤蘭世が現れてからどうも調子を狂わされる。
何故なんだ?
だけど、あいつが俺をしつこくでかけようと誘ってくるのも
俺はそんない嫌じゃない。
嫌どころか妙にここちよく感じる自分がいる。
嫌がるそぶりを見せてそれを必死で振り向かそうとする姿を
楽しんでいたりする自分がいる。
あいつの願いを断りきれなくて約束したものの
俺自身、デートなんて経験もない。
どうしたらいいんだ?
落ち着かずに部屋をうろついてみる。
そんな自分が恥ずかしくてふくーとひとつため息をついて
ベッドに身を投げた。
デートと言っても映画を見るだけだし
別に何するってわけでもねえし
何でこんなに緊張しなければならねえんだ?
気を落ち着かせようと目をつぶったら
嬉しそうに笑う昨日の江藤の姿が浮かんだ。
デートか…。
今頃嬉しそうにしてんだろうな。
昨日もあんなに浮かれてたし。
ふっ・・わかりやすい奴。
そんなにうれしいのかねぇ。
そんなことを考えてるとリビングの電話がなった。
「はい。真壁です」
「あっ真壁くん?江藤です…」
さっきまで頭の中で聞いていた声が
今、受話器の向こうから聞こえてきて、一瞬不思議な気分になる。
「…あ、あぁ」
「…あの、明日なんだけど…」
「なんだ?」
「待ち合わせ、駅って言ってたけど駅のところにあるカフェにしないかな~って思って。
GARDENっていうんだけどステキなところなの」
「かふぇ?」
「だめ?」
「いいけど、何で?」
「え!?あの…何かカフェで待ち合わせなんてステキだな~とか
思ったりなんかして…あはは‥・ダメならいいんですけど…」
声がどんどん小さくなっていく江藤の姿が目に見えた。
アイツなりにいろいろ明日のことを考えてたんだろうな。
そんな江藤が妙にかわいらしく思った。
いや、決して別に深い意味じゃない!
「いいぜ。GARDENだな」
「ほんと?嬉しい。じゃあ駅の入口の右手側にあるから。
すごくオシャレだし、すぐわかると思うよ」
オシャレな店なんて俺にはこっぱずかしいが
今日はやけにあいつの願いを聞いてやりたくなる。
何故かはわからねえが…まあたまにはいいか。
こんなにうれしそうなんだし・・・。
「んじゃ、そのGARDENってとこで。10時、遅れるなよ」
「ぶっ遅れませんよーだ。じゃあ明日ね」
「あぁ」
受話器を置いた。
なんだか恋人同士みたいな会話だなとふと感じてしまって
俺は一人顔を赤らめた。
だが、もう一度江藤のことを思いだして
俺は妙にうれしくなる。
お袋が今夜当直でよかった。
こんな姿とても見せられねえよね。
俺は口笛を吹きながらコーヒーの便を手に取り
明日着ていく服はどれにすっかななんて
またいつもの俺らしくないことを頭の中で考えていた。
+あとがき+
一応初めてのデートという設定。
っつーか、完全に浮かれ王子。。。(笑)
100のお題より 配布元 ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
明日の日曜日は江藤のたっての願いで
二人で出かける約束をした。
デートってやつか?
女と出かけるなどそんなことまったく縁のなかった俺が
あの転校生、江藤蘭世が現れてからどうも調子を狂わされる。
何故なんだ?
だけど、あいつが俺をしつこくでかけようと誘ってくるのも
俺はそんない嫌じゃない。
嫌どころか妙にここちよく感じる自分がいる。
嫌がるそぶりを見せてそれを必死で振り向かそうとする姿を
楽しんでいたりする自分がいる。
あいつの願いを断りきれなくて約束したものの
俺自身、デートなんて経験もない。
どうしたらいいんだ?
落ち着かずに部屋をうろついてみる。
そんな自分が恥ずかしくてふくーとひとつため息をついて
ベッドに身を投げた。
デートと言っても映画を見るだけだし
別に何するってわけでもねえし
何でこんなに緊張しなければならねえんだ?
気を落ち着かせようと目をつぶったら
嬉しそうに笑う昨日の江藤の姿が浮かんだ。
デートか…。
今頃嬉しそうにしてんだろうな。
昨日もあんなに浮かれてたし。
ふっ・・わかりやすい奴。
そんなにうれしいのかねぇ。
そんなことを考えてるとリビングの電話がなった。
「はい。真壁です」
「あっ真壁くん?江藤です…」
さっきまで頭の中で聞いていた声が
今、受話器の向こうから聞こえてきて、一瞬不思議な気分になる。
「…あ、あぁ」
「…あの、明日なんだけど…」
「なんだ?」
「待ち合わせ、駅って言ってたけど駅のところにあるカフェにしないかな~って思って。
GARDENっていうんだけどステキなところなの」
「かふぇ?」
「だめ?」
「いいけど、何で?」
「え!?あの…何かカフェで待ち合わせなんてステキだな~とか
思ったりなんかして…あはは‥・ダメならいいんですけど…」
声がどんどん小さくなっていく江藤の姿が目に見えた。
アイツなりにいろいろ明日のことを考えてたんだろうな。
そんな江藤が妙にかわいらしく思った。
いや、決して別に深い意味じゃない!
「いいぜ。GARDENだな」
「ほんと?嬉しい。じゃあ駅の入口の右手側にあるから。
すごくオシャレだし、すぐわかると思うよ」
オシャレな店なんて俺にはこっぱずかしいが
今日はやけにあいつの願いを聞いてやりたくなる。
何故かはわからねえが…まあたまにはいいか。
こんなにうれしそうなんだし・・・。
「んじゃ、そのGARDENってとこで。10時、遅れるなよ」
「ぶっ遅れませんよーだ。じゃあ明日ね」
「あぁ」
受話器を置いた。
なんだか恋人同士みたいな会話だなとふと感じてしまって
俺は一人顔を赤らめた。
だが、もう一度江藤のことを思いだして
俺は妙にうれしくなる。
お袋が今夜当直でよかった。
こんな姿とても見せられねえよね。
俺は口笛を吹きながらコーヒーの便を手に取り
明日着ていく服はどれにすっかななんて
またいつもの俺らしくないことを頭の中で考えていた。
+あとがき+
一応初めてのデートという設定。
っつーか、完全に浮かれ王子。。。(笑)
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045 不慮の事故
俊×蘭世 中学時代 蘭世ちゃんの告白シーンです
100のお題より お題提供:ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜サマ
どっちかというと、いい奴っていうより悪い奴じゃないって…
そんな印象だった。
本来俺は、真正面から人を素直に信用しないタイプだ。
他人がいい奴だろうと悪い奴だろうと俺には一切関係なくて、
あえて知ろうとも思わないし深入りもしない。
だから「こいついい奴」だなんてそうそう簡単には思わない。
思わないんじゃなくて、そもそも思考回路が「いい奴」ってところに
すぐには進んでいかない。
ひねくれてる俺が気持ちをストレートに表せないのが原因だっていうのは
よくわかってる。
だから俺にとっての「悪い奴じゃない」っていう表現は
決してマイナスから引き出されるものじゃなくて
かなり好意的な表現の仕方だった。
なぜ、そんなことを口走ってしまったのかわからない。
静かに佇む沈黙に妙に耐えられなかったのも事実だ。
ただ、なぜその沈黙が、なぜそんなに怖かったのか・・・。
そんな沈黙なんて、冗談の一つでも言ってしまえば、
さらっと解消できるほどのものだったはずなのに。
しかし、意識とは別に意表をついて俺の口から出た言葉は、
―――― 悪い奴じゃねえぜ、考えてやんな ――――――
江藤にしてみればそれはきっと大きなお世話、
人と人のことに深入りしないはずの俺が、なぜそんなことを・・・。
筒井と話して、だからといって全てを理解しあったわけじゃなかったが、
舞台で歌う筒井を見て、なんだか筒井の気持ちがスッと心に入り込んできた。
一人の女性を真剣に思う気持ち・・・。
噂に興味なんてなかったし、それが単なる噂であることだって
江藤の様子を見てれば明らかにわかっていた。
それが筒井の一方通行な気持ちだってことも。
俺には関係のないことだったし、
筒井と江藤がどうなろうと知ったことじゃなかった。
だから筒井を応援するなんて気持ちもなかったし、
ここに来たのもただ単にほっておけなかっただけで・・・。
ただ、なぜほっとけなかったのかはわからない。
ほっとけなかったのは・・・
筒井だったのか・・・
それとも
江藤だったのか・・・
ただ、筒井の気持ちが何となく身にしみて
気づいた時にはそんな言葉を発していた。
しかし、そんなことを口にしたことで俺はそのすぐ後で後悔した。
江藤の泣き顔と切実な訴えを目にしたとたんに。。。、
泣いている目の前の女を、慰める術も、泣き止ませる術も、
俺は何一つ持ち合わせていなかった。
抱き寄せようと一瞬差し出した腕は、江藤に届くことはなかった。
胸が軋む。
鼓動が速まる。
脈が激しく打つ。
どうしていいのかわからなかったのだ。
筒井の気持ちを援護しようとした自分も、
その後、江藤の気持ちを目の当たりにして
すぐにその気持ちを翻しそうになった自分も、
その目の前の江藤を、眠っているとはいえ当の筒井のすぐそばで、
掻き抱きたい衝動に襲われている自分も。
結局俺は、精一杯の理性と自分のウリの冷静さを取り戻して
江藤に背を向けた。
後ろ髪を引かれる思いって・・・こういうことを言うのかななんて
心に感じながら。。。
なんとなく慰めになればと、ハンカチ代わりに差し出したカーテンは、
またもや俺の意表をついて、江藤を慰めるどころか、大いに笑わせてしまうぐらいの
威力があったようで
その場の(俺にとっては)深刻なその状況は打破されたわけだが、
俺の心に江藤から落とされた爆弾にも似た衝撃は
まだかろうじて爆発はされていなかったが、
ずっとその後もくすぶり続けていたのだった。
<END>
+あとがき+
俊語りでした。
何が「不慮の事故」かっていうと筒井くんの転倒デス
わかりづらいデスネ。
前にもお話したことがありますが
この一連の俊の心の中はkauにはよくわかりません。
どういう思いで筒井くんの歌を聴いていたのか
どういう思いで筒井くんをすすめたのか
どうして腕を引っ込めたのか
謎なヤツです(笑)
100のお題より お題提供:ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜サマ
どっちかというと、いい奴っていうより悪い奴じゃないって…
そんな印象だった。
本来俺は、真正面から人を素直に信用しないタイプだ。
他人がいい奴だろうと悪い奴だろうと俺には一切関係なくて、
あえて知ろうとも思わないし深入りもしない。
だから「こいついい奴」だなんてそうそう簡単には思わない。
思わないんじゃなくて、そもそも思考回路が「いい奴」ってところに
すぐには進んでいかない。
ひねくれてる俺が気持ちをストレートに表せないのが原因だっていうのは
よくわかってる。
だから俺にとっての「悪い奴じゃない」っていう表現は
決してマイナスから引き出されるものじゃなくて
かなり好意的な表現の仕方だった。
なぜ、そんなことを口走ってしまったのかわからない。
静かに佇む沈黙に妙に耐えられなかったのも事実だ。
ただ、なぜその沈黙が、なぜそんなに怖かったのか・・・。
そんな沈黙なんて、冗談の一つでも言ってしまえば、
さらっと解消できるほどのものだったはずなのに。
しかし、意識とは別に意表をついて俺の口から出た言葉は、
―――― 悪い奴じゃねえぜ、考えてやんな ――――――
江藤にしてみればそれはきっと大きなお世話、
人と人のことに深入りしないはずの俺が、なぜそんなことを・・・。
筒井と話して、だからといって全てを理解しあったわけじゃなかったが、
舞台で歌う筒井を見て、なんだか筒井の気持ちがスッと心に入り込んできた。
一人の女性を真剣に思う気持ち・・・。
噂に興味なんてなかったし、それが単なる噂であることだって
江藤の様子を見てれば明らかにわかっていた。
それが筒井の一方通行な気持ちだってことも。
俺には関係のないことだったし、
筒井と江藤がどうなろうと知ったことじゃなかった。
だから筒井を応援するなんて気持ちもなかったし、
ここに来たのもただ単にほっておけなかっただけで・・・。
ただ、なぜほっとけなかったのかはわからない。
ほっとけなかったのは・・・
筒井だったのか・・・
それとも
江藤だったのか・・・
ただ、筒井の気持ちが何となく身にしみて
気づいた時にはそんな言葉を発していた。
しかし、そんなことを口にしたことで俺はそのすぐ後で後悔した。
江藤の泣き顔と切実な訴えを目にしたとたんに。。。、
泣いている目の前の女を、慰める術も、泣き止ませる術も、
俺は何一つ持ち合わせていなかった。
抱き寄せようと一瞬差し出した腕は、江藤に届くことはなかった。
胸が軋む。
鼓動が速まる。
脈が激しく打つ。
どうしていいのかわからなかったのだ。
筒井の気持ちを援護しようとした自分も、
その後、江藤の気持ちを目の当たりにして
すぐにその気持ちを翻しそうになった自分も、
その目の前の江藤を、眠っているとはいえ当の筒井のすぐそばで、
掻き抱きたい衝動に襲われている自分も。
結局俺は、精一杯の理性と自分のウリの冷静さを取り戻して
江藤に背を向けた。
後ろ髪を引かれる思いって・・・こういうことを言うのかななんて
心に感じながら。。。
なんとなく慰めになればと、ハンカチ代わりに差し出したカーテンは、
またもや俺の意表をついて、江藤を慰めるどころか、大いに笑わせてしまうぐらいの
威力があったようで
その場の(俺にとっては)深刻なその状況は打破されたわけだが、
俺の心に江藤から落とされた爆弾にも似た衝撃は
まだかろうじて爆発はされていなかったが、
ずっとその後もくすぶり続けていたのだった。
<END>
+あとがき+
俊語りでした。
何が「不慮の事故」かっていうと筒井くんの転倒デス
わかりづらいデスネ。
前にもお話したことがありますが
この一連の俊の心の中はkauにはよくわかりません。
どういう思いで筒井くんの歌を聴いていたのか
どういう思いで筒井くんをすすめたのか
どうして腕を引っ込めたのか
謎なヤツです(笑)
085 押す
俊×蘭世 中学時代
出会って少し経った頃のお話
100のお題より 配布元 ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
こうしてこのドアの前に立って
もう何分時間が過ぎたのだろう…。
たった一つの簡単な行動ができずにいる。
はやる気持ちを抑えきれずに思わず駆け出した。
あいたい。
あいたい。
あいたい―――――――。
来たところで何を言えばいいのか、何を伝えればいいのか。
実際この扉の向こう側に彼がいるのかどうかさえわからないし、
いたとしても、「何の用だよ」って簡単に切りかえされるのがオチだけど・・・。
それでもアイタイって思う。
いつもは何てない道が、
彼の家に向かっていると思うだけで
何だかとても違って見える。
足がもつれそうになるくらいの期待と焦燥と。
一度も休みことなくここまでたどり着いた。
最初は呼吸を整えるため
次は心を落ち着けるため
三度目は伝える言葉を探すため…。
インターホンを押すのをためらう理由を探す。
でもそんな理由もすぐ底をつき、空白の時間が過ぎる。
右手の人差し指をそっと掲げてみても
その先に腕を伸ばせない。
何のためにここまで走ってきたのか自分に叱咤するが
それもむなしく頭の中で空回りするだけで…。
(今日に限っておばさまがいちゃったりするかもしれないし…)
少し後ずさり。
もう一歩後ずさり。
でも思い直して一歩前に。
そんな堂々巡りを繰り返しながら無情にももう30分ちかく経とうとしている。
(いつまでもこんなところにいちゃ怪しまれちゃうよね)
よし。
大きく息を呑む。
そして呼吸を止めて
人差し指の先をインターホンにのせる。
あとはほんの少し力を加えるだけ。
ふっと息を吐いて、
いざーーーーーーっ
そのとき、背後から声がした。
「江藤?」
震える指先が止まる。
(ん?)
蘭世が振り返るとそこには俊がきょとんとした顔で立っていた。
いつものようにボクシンググロープを右肩にかけてたたずむ姿は
精悍で、凛々しくて、たくましくて、何よりカッコヨクテ・・・。
蘭世の心は逸り出す。
「何か用か?」
予想通りの言葉だけど
想像してたよりはちょっと優しく感じたりして…。
「え?いや・・・あの・・・用というか、何というか・・・えへへ」
ついつい笑ってごまかす。
言うべき言葉も実はまだ見つかっていないままだったから
それもしょうがないのだけど・・・。
「・・・相変わらず変なヤツだな」
俊はフッと苦笑しながらも蘭世の頭に大きな手のひらを乗せ
髪をくしゃっとさせた。
「何もねえけどまあ寄ってけよ。茶ぐらいなら出すぜ」
(えー?えー?えー!?真壁くんが誘ってくれたぁーーーv)
蘭世は最高の笑みで答える。
まるで今にも子犬がとびかかってきそうな笑顔。
俊は一瞬たじろいながらも首をすくめた。
インターホンは押せなかったけど
ここまできてよかったーー。
俊への距離がほんの一歩近づいた
そんな瞬間。
+あとがき+
コミックス4・5巻あたりの二人のイメージですが…
再度読み返していて、蘭世、何しに来たんだ!?
っていう感想…(笑)
それほどしょうもない一コマでした…^^;
出会って少し経った頃のお話
100のお題より 配布元 ドリーマーに100のお題 桜野雪花菜さま
こうしてこのドアの前に立って
もう何分時間が過ぎたのだろう…。
たった一つの簡単な行動ができずにいる。
はやる気持ちを抑えきれずに思わず駆け出した。
あいたい。
あいたい。
あいたい―――――――。
来たところで何を言えばいいのか、何を伝えればいいのか。
実際この扉の向こう側に彼がいるのかどうかさえわからないし、
いたとしても、「何の用だよ」って簡単に切りかえされるのがオチだけど・・・。
それでもアイタイって思う。
いつもは何てない道が、
彼の家に向かっていると思うだけで
何だかとても違って見える。
足がもつれそうになるくらいの期待と焦燥と。
一度も休みことなくここまでたどり着いた。
最初は呼吸を整えるため
次は心を落ち着けるため
三度目は伝える言葉を探すため…。
インターホンを押すのをためらう理由を探す。
でもそんな理由もすぐ底をつき、空白の時間が過ぎる。
右手の人差し指をそっと掲げてみても
その先に腕を伸ばせない。
何のためにここまで走ってきたのか自分に叱咤するが
それもむなしく頭の中で空回りするだけで…。
(今日に限っておばさまがいちゃったりするかもしれないし…)
少し後ずさり。
もう一歩後ずさり。
でも思い直して一歩前に。
そんな堂々巡りを繰り返しながら無情にももう30分ちかく経とうとしている。
(いつまでもこんなところにいちゃ怪しまれちゃうよね)
よし。
大きく息を呑む。
そして呼吸を止めて
人差し指の先をインターホンにのせる。
あとはほんの少し力を加えるだけ。
ふっと息を吐いて、
いざーーーーーーっ
そのとき、背後から声がした。
「江藤?」
震える指先が止まる。
(ん?)
蘭世が振り返るとそこには俊がきょとんとした顔で立っていた。
いつものようにボクシンググロープを右肩にかけてたたずむ姿は
精悍で、凛々しくて、たくましくて、何よりカッコヨクテ・・・。
蘭世の心は逸り出す。
「何か用か?」
予想通りの言葉だけど
想像してたよりはちょっと優しく感じたりして…。
「え?いや・・・あの・・・用というか、何というか・・・えへへ」
ついつい笑ってごまかす。
言うべき言葉も実はまだ見つかっていないままだったから
それもしょうがないのだけど・・・。
「・・・相変わらず変なヤツだな」
俊はフッと苦笑しながらも蘭世の頭に大きな手のひらを乗せ
髪をくしゃっとさせた。
「何もねえけどまあ寄ってけよ。茶ぐらいなら出すぜ」
(えー?えー?えー!?真壁くんが誘ってくれたぁーーーv)
蘭世は最高の笑みで答える。
まるで今にも子犬がとびかかってきそうな笑顔。
俊は一瞬たじろいながらも首をすくめた。
インターホンは押せなかったけど
ここまできてよかったーー。
俊への距離がほんの一歩近づいた
そんな瞬間。
+あとがき+
コミックス4・5巻あたりの二人のイメージですが…
再度読み返していて、蘭世、何しに来たんだ!?
っていう感想…(笑)
それほどしょうもない一コマでした…^^;
かくしごと 3
俊×蘭世 中学時代 江藤家の秘密の地下室のイベ出品作品です
転生直前に蘭世が俊の夢に入った時のお話。
というかこの作品では転生しないことになってますので
原作とはかけ離れております。ご注意を☆
廊下の角を曲がる蘭世の姿が視界に入った俊はその後を全速力で追いかけた。
江藤蘭世には何かある。
それは俊の直感だ。
本当はずっとどこかにひっかかっていたことだった。
だが、決定的な何かがあったわけではなく、なんとなく・・・なんとなくで。
しかし、このまま追い詰めることがいいのかどうなのか俊自身もわからずにいた。
蘭世の先ほどの青ざめた表情。
それは明らかに「何か」を隠しているのがわかるのだが、
その「何か」はたぶん自分が考える以上に切実で
もっと深いもののような気がした。
隠し事をを無理に暴くことが、いい結果を生むとは到底考えられない・・・
・・・そんな表情。
それも直感としてわかっているのに
俊は追いかけるその足を止めることができなかった。
追い詰めたいのでない。
秘密を暴きたいのではない
・・・ではなんなのか・・・?
屋上に向かう階段を駆け上がる蘭世を俊は追いかけた。
逃げる蘭世。
それを追う俊。
つかまえて・・・どうする。
わからねえ・・・
でも・・・でも・・・・
ほっとけるわけねえだろ!
蘭世が屋上に出る扉を閉めかけようとするのを俊は寸でのところで遮った。
そして自分も屋上に出ると扉を後ろ手に閉める。
蘭世は小刻みに震えながら、目には涙が浮かんで今にもあふれ出しそうだ。
泣かせたかったわけじゃなくて・・・。
ただ、わからないことが多すぎるんだ。
昨日の夢。
コイツのこの行動。
そして、自分の気持ち・・・。
「ふぅ・・・」
俊は大きく息を一つ吐い乱れた呼吸を整えた。
「お前・・・早すぎ・・・」
蘭世は何も言わず俯いたままで。
その姿を見て俊もまた俯いた。
「全てを聞こうとは思わねえけど・・・」
俊はそういって切り出した。
「何か事情があるんだろうし」
蘭世は「うっく・・・うっく・・」とすでに泣き出してしまっている。
「なあ・・・江藤・・・?お前・・・」
「・・・ごめんなさい・・・何も・・・何も聞かないで・・・でないと私・・・」
「・・・」
「・・・ここに・・・いられなくなる・・・」
いられなくなる・・・?
「何だよ・・・それ」
「ごめんなさい。ホントにごめんなさい。私が悪いの。全て私が悪いんです。
でも、忘れて。夢のことも・・・全部・・・」
忘れろ・・・?そんなこと・・・
「忘れられるわけねえだろっ!」
「っ!」
蘭世が俊の大きな声にビクッと肩を震わせて俊を見る。
「勝手なこといいやがって。何がどうなってんのか知らねえけどな。
どうやってお前があの夢に関与してんのか、全くわかんねえけどな、
あれは・・・あれは・・・お前の本心なんだろ!
だったら・・・だったらそれでいいじゃねえか。バカ」
「ま、真壁くん・・・」
「今更、そんなこと言われたって、はいわかりましたって頷けるほど、
俺はそこまでできた人間じゃねえんだよ!」
「でも・・・私・・・私は・・・」
「・・・モンスターだっていうのか?」
「・・・!!」
「・・・」
視線が絡み合う。
昨日の夢で蘭世が言っていた言葉。
その姿を俊は思い出していた。
俊は蘭世の瞳を覗き込んだ。
大きな瞳。
その中に吸い込まれそうになる。
昨日と同じ顔で、同じ涙を流して・・・
俊はその細い腕をパッと引き寄せてそして自分の腕の中に収めた。
長い髪がふわりと風に揺れる。
なんでそうしてしまったのかはわからない。
これが正しい答えだとしても思っていない。
でも
そうするしかなかった。
いや、
たぶん、
そうしたかっただけなのかもしれない。
そしてそっと蘭世の顎に手をかけて顔を上に向かせると
その小さく赤い唇にそっと自分のを落とした。
昨日よりも・・・
長く・・・
今度は・・・
現実・・・
そしてゆっくりと唇を離すと俊はもう一度自分の胸に蘭世を抱き寄せた。
「お前・・・おかしいぞ・・・」
俊の中でも言った言葉。
そう。
それでいいさ。
夢でも現実でもいい。
お前はお前で。。。
それでいい。
蘭世ははっと俊の顔をみる。
しかし、俊の表情は見えない。
でも背中に回された力が少し強くなったのを蘭世は感じた。
蘭世はあふれる涙を止めることができずに俊の腕にしがみついていた。
+++++
「どうすっかな~・・・」
蘭世がようやく泣き止んできたのを見て俊はそう言った。
蘭世が腕から抜けようとするので、俊はそっと背中に回していた腕を外す。
「あ・・・あの・・・真壁くん・・・私・・・あの夢なんだけど・・・」
「あ~夢?なんだっけ?忘れた」
蘭世は俊の顔を見上げる。
「夢のことは・・・な」
俊はそういってニヤリと笑うとポンポンと蘭世の頭に手を乗せた。
「あ~授業めんどくせえ・・・1時間ここでフケるか?」
そういってほほ笑む俊に蘭世はまた一筋涙を流したが、
さっと涙を拭いて笑顔に戻すと「うん♪」と大きく頷いた。
<END>
+あとがき+
ようやくちょっと甘いのを上げることができて
なんか嬉しい(笑)
パラレルですが・・・。
原作では夢の中でしたが
夢の中とはいえ、真壁くんって大人だねって
思いました。
そんな中学生の男子っているかい??(笑)
転生直前に蘭世が俊の夢に入った時のお話。
というかこの作品では転生しないことになってますので
原作とはかけ離れております。ご注意を☆
廊下の角を曲がる蘭世の姿が視界に入った俊はその後を全速力で追いかけた。
江藤蘭世には何かある。
それは俊の直感だ。
本当はずっとどこかにひっかかっていたことだった。
だが、決定的な何かがあったわけではなく、なんとなく・・・なんとなくで。
しかし、このまま追い詰めることがいいのかどうなのか俊自身もわからずにいた。
蘭世の先ほどの青ざめた表情。
それは明らかに「何か」を隠しているのがわかるのだが、
その「何か」はたぶん自分が考える以上に切実で
もっと深いもののような気がした。
隠し事をを無理に暴くことが、いい結果を生むとは到底考えられない・・・
・・・そんな表情。
それも直感としてわかっているのに
俊は追いかけるその足を止めることができなかった。
追い詰めたいのでない。
秘密を暴きたいのではない
・・・ではなんなのか・・・?
屋上に向かう階段を駆け上がる蘭世を俊は追いかけた。
逃げる蘭世。
それを追う俊。
つかまえて・・・どうする。
わからねえ・・・
でも・・・でも・・・・
ほっとけるわけねえだろ!
蘭世が屋上に出る扉を閉めかけようとするのを俊は寸でのところで遮った。
そして自分も屋上に出ると扉を後ろ手に閉める。
蘭世は小刻みに震えながら、目には涙が浮かんで今にもあふれ出しそうだ。
泣かせたかったわけじゃなくて・・・。
ただ、わからないことが多すぎるんだ。
昨日の夢。
コイツのこの行動。
そして、自分の気持ち・・・。
「ふぅ・・・」
俊は大きく息を一つ吐い乱れた呼吸を整えた。
「お前・・・早すぎ・・・」
蘭世は何も言わず俯いたままで。
その姿を見て俊もまた俯いた。
「全てを聞こうとは思わねえけど・・・」
俊はそういって切り出した。
「何か事情があるんだろうし」
蘭世は「うっく・・・うっく・・」とすでに泣き出してしまっている。
「なあ・・・江藤・・・?お前・・・」
「・・・ごめんなさい・・・何も・・・何も聞かないで・・・でないと私・・・」
「・・・」
「・・・ここに・・・いられなくなる・・・」
いられなくなる・・・?
「何だよ・・・それ」
「ごめんなさい。ホントにごめんなさい。私が悪いの。全て私が悪いんです。
でも、忘れて。夢のことも・・・全部・・・」
忘れろ・・・?そんなこと・・・
「忘れられるわけねえだろっ!」
「っ!」
蘭世が俊の大きな声にビクッと肩を震わせて俊を見る。
「勝手なこといいやがって。何がどうなってんのか知らねえけどな。
どうやってお前があの夢に関与してんのか、全くわかんねえけどな、
あれは・・・あれは・・・お前の本心なんだろ!
だったら・・・だったらそれでいいじゃねえか。バカ」
「ま、真壁くん・・・」
「今更、そんなこと言われたって、はいわかりましたって頷けるほど、
俺はそこまでできた人間じゃねえんだよ!」
「でも・・・私・・・私は・・・」
「・・・モンスターだっていうのか?」
「・・・!!」
「・・・」
視線が絡み合う。
昨日の夢で蘭世が言っていた言葉。
その姿を俊は思い出していた。
俊は蘭世の瞳を覗き込んだ。
大きな瞳。
その中に吸い込まれそうになる。
昨日と同じ顔で、同じ涙を流して・・・
俊はその細い腕をパッと引き寄せてそして自分の腕の中に収めた。
長い髪がふわりと風に揺れる。
なんでそうしてしまったのかはわからない。
これが正しい答えだとしても思っていない。
でも
そうするしかなかった。
いや、
たぶん、
そうしたかっただけなのかもしれない。
そしてそっと蘭世の顎に手をかけて顔を上に向かせると
その小さく赤い唇にそっと自分のを落とした。
昨日よりも・・・
長く・・・
今度は・・・
現実・・・
そしてゆっくりと唇を離すと俊はもう一度自分の胸に蘭世を抱き寄せた。
「お前・・・おかしいぞ・・・」
俊の中でも言った言葉。
そう。
それでいいさ。
夢でも現実でもいい。
お前はお前で。。。
それでいい。
蘭世ははっと俊の顔をみる。
しかし、俊の表情は見えない。
でも背中に回された力が少し強くなったのを蘭世は感じた。
蘭世はあふれる涙を止めることができずに俊の腕にしがみついていた。
+++++
「どうすっかな~・・・」
蘭世がようやく泣き止んできたのを見て俊はそう言った。
蘭世が腕から抜けようとするので、俊はそっと背中に回していた腕を外す。
「あ・・・あの・・・真壁くん・・・私・・・あの夢なんだけど・・・」
「あ~夢?なんだっけ?忘れた」
蘭世は俊の顔を見上げる。
「夢のことは・・・な」
俊はそういってニヤリと笑うとポンポンと蘭世の頭に手を乗せた。
「あ~授業めんどくせえ・・・1時間ここでフケるか?」
そういってほほ笑む俊に蘭世はまた一筋涙を流したが、
さっと涙を拭いて笑顔に戻すと「うん♪」と大きく頷いた。
<END>
+あとがき+
ようやくちょっと甘いのを上げることができて
なんか嬉しい(笑)
パラレルですが・・・。
原作では夢の中でしたが
夢の中とはいえ、真壁くんって大人だねって
思いました。
そんな中学生の男子っているかい??(笑)
かくしごと 2
俊×蘭世 中学時代 江藤家の秘密の地下室のイベ出品作品です
転生直前に蘭世が俊の夢に入った時のお話。
というかこの作品では転生しないことになってますので
原作とはかけ離れております。ご注意を☆
結局、朝から夢のことが頭から離れないまま俊は学校についてしまった。
ふぅと大きく息を吐いて、両手で料頬をはたいてから教室のドアを開ける。
すると、もうすでに来ていた蘭世がそのドアの音に反応してパッと顔を向けた。
が、俊の姿を見てとると、ポっと顔を赤くして視線を逸らした。
なんだ・・・??
いつもなら、飛びついてくるぐらいの勢いで「おはよう!」って声をかけてくるくせに、
今日に限ってそのありえない態度。
俊は夢のことよりもその態度の方が気になって、そのまま机に向かい
不自然に目を合わせようとしない蘭世に声をかけた。
「オス」
すると、ビクっと一瞬肩を震わせた蘭世が、まるで今俊に気づきましたとでもいうような
顔を俊に向けた。
「あ、ま、真壁くん。おはよう♪」
ニコリと笑っているが、その顔がどうにもこうにも引きつっていて、
どう考えてもおかしい。
普段ならそのまま過ぎ去ってしまうところだが、
昨日のこともあって、俊はどうしても蘭世が気になっていた。
どうしても立ち去れない。
「昨日は・・・邪魔したな」
「え?じゃ、じゃま??」
「だから、お前んち」
「あ?ああ・・・うちね・・・。ううん。こちらこそ来てくれてありがとう。
あ・・・それとペンダントも・・・」
「え?あっ・・・///ああ・・・いや」
やぶへび。
夢のことですっかり忘れていたが、そういえば・・・渡したんだった・・・。
そうか、そのこともたぶんひっかかかっていたんだろう。
女にプレゼントをやるなんてガラにもないことをしたから・・・。
そうだ、だからあんな夢になったんだ。
なんとなく、あの夢を見た原因がわかった気がして俊は幾分スッキリした。
と、気を許したとたん、
「ぶぇっくしょい!!!」
また大きなくしゃみを一つぶっぱなした。
「真壁くん、風邪?」
「あぁ・・・昨日窓を開けたまま寝たみたいでな・・・」
「え?窓?・・・あっ!!!ゴメン、私、あけっぱなしで・・・」
「え?」
・・・なんだって?
「・・・なんでお前が?」
「え・・・あっ・・・」
蘭世はハッと顔色を一瞬にして変えると慌てて口を両手で塞いだ。
「どういうことだ?なんでお前が謝るんだよ」
「な、なんでもない、私も今日、開けっ放しにしてきたな~って・・・あはは」
乾いた声で、顔を強張らせながら笑う蘭世を俊はじっと見つめる。
何だっていうんだ。
絶対おかしいじゃねえか。
この慌てようといい、そしてこのあからさまな嘘。
でもだからと言って、先ほどの言葉をそのままの意味で受け取ると、
こいつが、
夜中、
うちに来て、
窓を開けたまま帰った・・・。
ってことにならないか??
それっていったいどういうことだ?
「お前・・・何か隠してるだろ」
「な、何も隠してなんか・・・」
「いや、絶対おかしい、話せ」
「何もないってば」
「嘘付け。じゃあゴメンってなんだよ」
「つ、つい言葉が出ちゃっただけで・・・」
「どう考えても、お前が開けたままにしたって意味にしか聞こえねえじゃねえか」
「・・・だから・・・」
「・・・来たのか?うちに」
「行ってません!」
「・・・」
平行線。
だけど、俊にはどこか確信があった。
蘭世が明らかに嘘をついていて、
ということはうちに来たことになるわけだけど・・・
だとしたら何のために?
そしてあの夢・・・。
夢うつつの中で、そばに気配を感じてあんな夢を見たなんてことも
考えられなくはないが・・・。
「吐かねえつもりか?」
「は、吐くも何も・・・やだな~真壁くんってば。あ、私、日直だったかな~」
そういうと蘭世はその場を立ち去ろうとする。
そうはいくか!
俊は振り返ろうとする蘭世の腕をつかむ。
「な、何?」
「・・・俺・・・昨日夢見たんだ・・・お前の」
その言葉を聞いた蘭世がパッと俊に振り返る。
しかし、そのまましばらくすると蘭世の顔がみるみる赤くなる。
「おぼえ・・・てるの?」
俊は大きく目を見開く。
「それ・・・どういう意味だ?俺、夢の内容言ってねえよな」
蘭世は驚愕した顔になった。
「真壁くんの夢なんて知らないわ!」
そして俊の手を振り払ってそのまま教室を飛び出していった。
「おい!江藤」
なんだなんだ?と周囲が俊の方に目を向けた。
どういうことだよ!!!あの夢にも関係してるっていうのか?
俊は「チッ」と舌打ちすると出て行った蘭世を追いかけた。
<つづく>
転生直前に蘭世が俊の夢に入った時のお話。
というかこの作品では転生しないことになってますので
原作とはかけ離れております。ご注意を☆
結局、朝から夢のことが頭から離れないまま俊は学校についてしまった。
ふぅと大きく息を吐いて、両手で料頬をはたいてから教室のドアを開ける。
すると、もうすでに来ていた蘭世がそのドアの音に反応してパッと顔を向けた。
が、俊の姿を見てとると、ポっと顔を赤くして視線を逸らした。
なんだ・・・??
いつもなら、飛びついてくるぐらいの勢いで「おはよう!」って声をかけてくるくせに、
今日に限ってそのありえない態度。
俊は夢のことよりもその態度の方が気になって、そのまま机に向かい
不自然に目を合わせようとしない蘭世に声をかけた。
「オス」
すると、ビクっと一瞬肩を震わせた蘭世が、まるで今俊に気づきましたとでもいうような
顔を俊に向けた。
「あ、ま、真壁くん。おはよう♪」
ニコリと笑っているが、その顔がどうにもこうにも引きつっていて、
どう考えてもおかしい。
普段ならそのまま過ぎ去ってしまうところだが、
昨日のこともあって、俊はどうしても蘭世が気になっていた。
どうしても立ち去れない。
「昨日は・・・邪魔したな」
「え?じゃ、じゃま??」
「だから、お前んち」
「あ?ああ・・・うちね・・・。ううん。こちらこそ来てくれてありがとう。
あ・・・それとペンダントも・・・」
「え?あっ・・・///ああ・・・いや」
やぶへび。
夢のことですっかり忘れていたが、そういえば・・・渡したんだった・・・。
そうか、そのこともたぶんひっかかかっていたんだろう。
女にプレゼントをやるなんてガラにもないことをしたから・・・。
そうだ、だからあんな夢になったんだ。
なんとなく、あの夢を見た原因がわかった気がして俊は幾分スッキリした。
と、気を許したとたん、
「ぶぇっくしょい!!!」
また大きなくしゃみを一つぶっぱなした。
「真壁くん、風邪?」
「あぁ・・・昨日窓を開けたまま寝たみたいでな・・・」
「え?窓?・・・あっ!!!ゴメン、私、あけっぱなしで・・・」
「え?」
・・・なんだって?
「・・・なんでお前が?」
「え・・・あっ・・・」
蘭世はハッと顔色を一瞬にして変えると慌てて口を両手で塞いだ。
「どういうことだ?なんでお前が謝るんだよ」
「な、なんでもない、私も今日、開けっ放しにしてきたな~って・・・あはは」
乾いた声で、顔を強張らせながら笑う蘭世を俊はじっと見つめる。
何だっていうんだ。
絶対おかしいじゃねえか。
この慌てようといい、そしてこのあからさまな嘘。
でもだからと言って、先ほどの言葉をそのままの意味で受け取ると、
こいつが、
夜中、
うちに来て、
窓を開けたまま帰った・・・。
ってことにならないか??
それっていったいどういうことだ?
「お前・・・何か隠してるだろ」
「な、何も隠してなんか・・・」
「いや、絶対おかしい、話せ」
「何もないってば」
「嘘付け。じゃあゴメンってなんだよ」
「つ、つい言葉が出ちゃっただけで・・・」
「どう考えても、お前が開けたままにしたって意味にしか聞こえねえじゃねえか」
「・・・だから・・・」
「・・・来たのか?うちに」
「行ってません!」
「・・・」
平行線。
だけど、俊にはどこか確信があった。
蘭世が明らかに嘘をついていて、
ということはうちに来たことになるわけだけど・・・
だとしたら何のために?
そしてあの夢・・・。
夢うつつの中で、そばに気配を感じてあんな夢を見たなんてことも
考えられなくはないが・・・。
「吐かねえつもりか?」
「は、吐くも何も・・・やだな~真壁くんってば。あ、私、日直だったかな~」
そういうと蘭世はその場を立ち去ろうとする。
そうはいくか!
俊は振り返ろうとする蘭世の腕をつかむ。
「な、何?」
「・・・俺・・・昨日夢見たんだ・・・お前の」
その言葉を聞いた蘭世がパッと俊に振り返る。
しかし、そのまましばらくすると蘭世の顔がみるみる赤くなる。
「おぼえ・・・てるの?」
俊は大きく目を見開く。
「それ・・・どういう意味だ?俺、夢の内容言ってねえよな」
蘭世は驚愕した顔になった。
「真壁くんの夢なんて知らないわ!」
そして俊の手を振り払ってそのまま教室を飛び出していった。
「おい!江藤」
なんだなんだ?と周囲が俊の方に目を向けた。
どういうことだよ!!!あの夢にも関係してるっていうのか?
俊は「チッ」と舌打ちすると出て行った蘭世を追いかけた。
<つづく>